同じクラスであってもターゲットが異なる「タント」と「N-BOX」
ホンダ「N-BOX」
軽ハイトワゴンは今やクラスを超えた存在になりつつあり、コンパクトカーを選ぶ人は同時に軽ハイトワゴンも比較検討しています。
価格もほぼ同じで動力性能も近くなっており、ターボモデルはコンパクトカーの1.0L車や1.2L車を超えるほどです。そして室内の広さはコンパクトカーを圧倒し、安全性能はクラス上の機能をそのまま装備するようになっています。
■「N-BOX」のターゲットは軽以上を求める!?普通車ユーザー
その状況を見事にとらえたのが「N-BOX」といえるのです。
これまでのように軽自動車の乗り換え需要だけでなく、クラス上からの乗り換えを確実にする車造りがされているのです。
当然、軽にありがちな機能優先、広さ優先の造りによる安っぽさから、クラス上のユーザーが違和感を感じない上質な造り込みが、内外装ともにされています。
■「タント」のメインターゲットは、やっぱり軽ユーザー
対する「タント」の車造りは、従来からやはり子育てママを中心とした軽ユーザーです。もちろん、これまで以上に使い勝手や利便性、運転のしやすさなどを徹底して追及していますし、シニア層や子育てが終わった世代にも売れているとのことです。
機能重視の考え方により、代名詞であるミラクルオープンドアを筆頭に、個別の便利機能などは「N-BOX」以上ですが、クラス上のユーザーにしてみると軽自動車らしい車造りであり、「N-BOX」のような質感は感じられません。
子育て世代が減少する中、この差は広くことはあっても縮まることは無いと思われるので、早期にターゲットを変更した「N-BOX」に部があるのは当然なのです。しかし、それにしても差が大きすぎるので、他に原因があるのかもしれません。
タントの人気が振るわない理由…?それはダイハツの〇〇に理由がある?
ダイハツ「タント」
8月の販売台数ではタントがこれまでになく「N-BOX」に近づいてきました。
その差は1600台ほどで、「N-BOX」をついにとらえるのではという状況。ところが9月になるとまた以前のように7000台近い差を付けられています。
いったい、この8月と9月に何があったのでしょうか。
2019年8月度軽四輪車 通称名別新車販売台数
1位 ホンダN-BOX 18282台
2位 ダイハツ タント 16838台
3位 日産デイズ 13432台
4位 スズキスペーシア 10674台
5位 ホンダN-WGN 6958台
2019年9月度軽四輪車 通称名別新車販売台数
1位 ホンダN-BOX 28484台
2位 ダイハツ タント 21858台
3位 日産 デイズ 17841台
4位 スズキ スペーシア 15754台
14位 ホンダ N-WGN 2121台
■出来が良すぎる「タント」の身内「ムーヴ」
ダイハツムーヴ
ダイハツのもう一つの主軸車種が「ムーヴ」です。
「ムーヴ」は「タント」より背が低く、スライドドアではなくヒンジ式のドアを採用するトールワゴンで、「タント」以前の軽ブームをけん引したモデルです。
今では「タント」に主役の座を奪われていますが評価は高く、このクラストップの販売台数を維持しています。例えば2019年上期の販売台数を見ると、62,768台となっており、「タント」の88,233台と合計すると151,001台となります。
ホンダ旧「N-WGN」
そして、ホンダの「N-BOX」と「ムーヴ」のライバル「N-WGN」を合計すると152,378台となり、2車種ずつの合計ではまったく互角となり、「ムーヴ」が「N-BOX」と「タント」の差を見事に埋めているのです。
逆に、ダイハツでは「ムーヴ」が良く売れることで「タント」の販売台数が伸びず、ホンダでは「N-WGN」が売れないためにユーザーが「N-BOX」に集中しているといえます。これが7月までの構図でした。
2019年度上半期軽四輪車 通称名別新車販売台数
1位 ホンダ N-BOX 136047 台
2位 ダイハツ タント88233 台
3位 日産 デイズ 81932台
4位 スズキ スペーシア79843台
5位 ダイハツ ムーヴ62768台
12位 ホンダ N-WGN 16331台
■期待されたものの問題児!?ホンダの「N-WGN」
ホンダ新型「N-WGN」
そして8月。販売が低迷していた「N-WGN」が新型となって販売が開始されると、月中の発売にかかわらず前年同月比180%の大ヒット。
かわりに「N-BOX」が伸び悩んだ結果、「タント」との差が急接近してしまったのです。順調にいけば「N-WGN」がさらに販売台数を伸ばし、「N-BOX」は「タント」に抜かれるかもしれませんが、2車合計ではダイハツの2社を大きく引き離すことになる予定でした。
しかし、突然パーキングブレーキの不具合が発覚し、「N-WGN」が生産停止に追い込まれます。しかも12月に生産再開予定という深刻な事態となります。
これで状況は一転。再びユーザーは
「N-BOX」に集中するという以前の状態に戻り、「タント」の首位奪還は泡と消えたと考えられます。
【結論】タントは N-BOXを超えたのか?
デザインやの好みやライフスタイルの違いで評価は異なると思いますが、販売台数を考慮した現状ではN-BOXの方がまだ優勢という意見が多いと思います。
しかし、「N-WGN」が復活すればその優位性は崩れるはず。さすがに「N-BOX」は売れすぎているので、飽和状態、8月の状況が再現されることも考えられますね。
つまり、「タント」と「ムーヴ」という選択肢があるダイハツに対して、ホンダは「N-BOX」がとりわけ強い。
そういった背景もあって「N-BOX」に人気が集中しているのかもしれません。
まとめ
年内には日産/三菱の本命、デイズルークス/ekスペースが登場します。
今春に登場したデイズが好調であり、スーパーハイトワゴンバンの登場により「デイズ」の販売台数は間違いなく増えてきます。販売台数の集計においては「デイズ」として合算されるため、「N-BOX」に代わって首位に立つのは「デイズ」になるのは間違いないでしょう。
そう、「タント」が首位を奪えずにいるうちに、「デイズ」が忍び寄っていたのです。次の話題は「デイズ」は「N-BOX」を超えたかどうかということになりそうですね。
では、その時まで様子を見ていきましょう。