もうきっと出てこない渾身ピュアスポーツ「トヨタ MR-S」
トヨタ MR-S
「スポーツカー」という言葉には、人それぞれに様々な定義があります。ハイパワーエンジンを搭載した2シータースーパーカーしかスポーツカーとして認めない!という方もいれば、すっぴんのハッチバックでも運転を楽しめるならスポーツカーだ!という方もいることでしょう。
今回ご紹介していくトヨタのミッドシップ2シーターオープン「MR-S」も、人によってはスポーツカーと定義するべきかどうか意見が分かれる車かもしれません。
しかしMR-Sは、ハイテクな特別装備やパワフルな専用エンジンを備えないものの、運転の楽しさ、ドライバーの意思に忠実に動いてくれる気持ちよさという、スポーツカーらしい乗り味をこれでもかと実現してくれる実力の持ち主です。
運動性能だけでなく、高級感や居住性など、あらゆるベクトルで優れていることが求められる現代のスポーツカーよりも、「ピュアスポーツカー」と呼びたくなるような割り切りが潔いMR-S。
現代にも通用するその魅力をご紹介していきます。
■MR-Sはどんな車だったのか?
トヨタ MR-S
トヨタ MR-S(エムアールエス)はトヨタ自動車(正確にはセントラル自動車)が1999年10月から2007年7月にかけて生産・販売していた2ドアクーペの自動車です。
車に詳しい方ならご存知かもしれませんが、日本車として初のミッドシップ車である「MR2」の後継車にあたるMR-S。直接社名を継承してはいないものの、繋がりが感じられますよね。
MR-Sは、2シーター、後輪駆動のオープンカーで、エンジンを運転席後方に配置するミッドシップレイアウトを採用しており、1トンを下回る軽量ボディと組み合わせることで痛快な運動性能を実現していた点が魅力的でした。
高級スポーツカーの特徴的な部分をぎゅっと集めて形にしたスポーツカーとも言えそうです。
専用設計の部品が多く、価格が高くなりがちなスポーツカー、その上に幌やミッドシップレイアウトと特殊要素が満載のMR-Sですが、トヨタの幅広いラインナップから適宜コンポーネントを拝借した設計によって、効果的なコストカットに成功。
誰しもが手の届くスポーツカーだったという面も、MR-Sの大きな特徴といえるでしょう。
■「末っ子」MR-Sと「兄貴分」MR2を比較してみた
トヨタ MR2 2代目
上述したように、MR-SはMR2の後継モデルにあたる車両です。つまり、絶対的にMR-Sが良いスポーツカーであったとしても、必ずMR-2と比較されることとなります。時代背景ももちろん関係しますが、MR-Sに対してはMR2ほどスポーツカーとしての魅力を感じなかったという評価もしばしば見られます。そこで事実上の先代にあたるMR2と比較してみましょう。
MR2のスペックとMR-Sのスペックを比較してみると、MR2のエンジンスペックはMR-Sよりも優れたものになっていることがわかります。MR2にはNAエンジンモデルとターボエンジンモデルの2つが用意されているほか、MR2では全車2.0リッターエンジンなのに対し、MR-Sは1.8リッターエンジンとダウンサイズされています。
また、スポーツカーとして重要な見た目の部分でも大きな違いがあります。MR2は基本的にはクーペフォルムのモデルでしたが、MR-Sは幌仕様のルーフを備えたオープンカー。さらに格納式のリトラクタブルヘッドライトを備えるMR2は、スポーティさと迫力を感じさせるのに対し、MR-Sでは固定式の大型ヘッドライトがチャーミングな印象で、マイルドな印象を感じさせますよね。
このように、性能や内外装のデザインに至るまで、大きな転換を経て誕生したことがわかるMR-S。ミッドシップスポーツカーとして既に定着していた「MR2」という車名をそのまま引き継がなかったことも納得できます。
駆動方式 | MR | |
---|---|---|
ボディサイズ(全長×全幅×全高) | 4,170mm×1,695mm×1,235mm | |
ホイールベース | 2,400mm | |
室内寸法(長さ×幅×高さ) | 940mm×1,420mm×1,030mm | |
車両重量 | 1,210〜1,380㎏ | |
最大乗車定員 | 2名 | |
燃費 | 10.6〜11.2km/L(10・15モード) | |
最小回転半径 | 4.9m | |
総排気量 | 1,998cc | |
エンジン種類 | 直列4気筒DOHCエンジン(NAとターボの2種類) | |
最高出力 | ガソリン:200PS/ 7,000rpm、ターボ:245PS/6,000 | |
最大トルク | NA:21kg・m/ 6,000rpm、ターボ:31.0kg・m/4,000 | |
使用燃料 | 無鉛プレミアムガソリン | |
燃料タンク容量 | 54L | |
サスペンション(前/後) | マクファーソン・ストラット式コイルスプリング | |
ブレーキ(前/後) | ベンチレーテッドディスク |
※1997年12月発売モデルのカタログをもとに作成
MR2について詳しく知りたい方はこちら
■新車価格帯で検証!MR-Sは究極お手頃スポーツカーだった?!
トヨタ MR-S
MR-Sの販売当時価格をまとめると、以下の通りです。2シータークーペでミッドシップのオープンカーが200万円を切る車両価格となっている点は、とても驚かされるものではないでしょうか。
【発売当時の新車価格(消費税抜き)】
B EDITION : 1,680,000円
通常グレード : 1,880,000円
S EDITION : 1,980,000円
※1999年10月発売モデルのビスタ店用カタログをもとに作成
最終型の新車価格は、次の通りです。
【発売当時の新車価格(消費税抜き)】
通常グレード:1,980,000〜2,055,000円
S EDITION:2,030,000〜2,1,05,000円
V EDITION:2,180,000〜2,255,000円
※2005年12月一部改良モデルのカタログをもとに作成
あらゆる要素を揃えたMR-S、でも不人気に… その理由は?
トヨタ MR-S TURBO TUNED by TTE(東京オートサロン2005 出展車両)
スポーツカーとして十分な運動性能を持ち、200万円以下からと非常にお求めやすい価格帯、そして国産車でMRをお手軽に味わうことができる稀少性にオープンカーという贅沢感など、優秀なスポーツカーと言うにふさわしいMR-Sですが、大きな人気を博した1台とはなりませんでした。
これは世間一般的に定評として定着してしまっている印象もあり、MR-Sについてまわる悪評となっています。
今よりもスポーツカー人気がまだ高かった当時、なぜMR-Sは大人気車種となれなかったのでしょうか?
■MR-Sの人気が出なかったのは、エクステリアデザインのせい?
《画像提供:Response 》トヨタ MR-S TURBO TUNED by TTE(東京オートサロン2005 出展車両)
MR-Sが人気車種とならなかった理由として、デザイン性の問題、そしてMR2と比べた時の運動性能の物足りなさ、これら2つの理由を挙げることができます。
軽量ボディとはいえ、ターボエンジンが設定されなかったこともあり、MR2のパワフルで豪快な加速力を求めていた層からは、MR-Sは単にアンダーパワーな車として見られてしまったのかもしれません。
スポーツカーとしてのより高度なバランスを考えたロングホイールベースとショートオーバーハングが組み合わされたスタンスも好みが分かれた部分。
実際に高い運動性能には貢献していたとはいえ、トランクスペースを排除してまで得たリヤオーバーハングの短さは、どこか軽自動車スポーツカーにも通ずるような寸詰まり感もあり、スポーツカーらしい伸びやかさには欠けた印象です。
これらのエクステリアの印象によって、その実高度なバランスとレスポンスに優れたスポーツカーそのものの乗り味が実現されていたことがあまり世間には知られず、柔和ななんちゃってスポーティカーだというイメージが焼き付けられてしまったことに、人気が出なかった理由があるのかもしれませんね。
トヨタ最後のMRスポーツ、MR-Sを今から手に入れるなら
トヨタ MR-S
■MR-S、こんな人におすすめ!
MR-Sは、次のような方にはとってもオススメしたい車です。
ミッドシップ・レイアウトの自動車に乗ってみたいと思っている方なら、国内自動車メーカーでミッドシップ・レイアウトを採用する車種は一部のモデルだけで、MR-Sは貴重な存在です。後方からエンジン音が聞こえてくるのは少しばかりうるさいかも知れませんが、それも含めて魅力として味わうのもありでしょう。
オープンカーに乗りたい方にとってもMR-Sは選択肢の1つとなります。
また、基本的にサーキット走行はお金がかかりますが、リーズナブルにサーキット走行を楽しみたいのであれば、MR-Sが選択肢の1つとなります。
純正タイヤサイズが15インチ(モデルによってはリアタイヤが16インチ)でそれほど大きいタイヤではありません。それゆえタイヤコストを抑えることができます。17〜19インチサイズのタイヤを履く自動車よりは、確実にコスト削減が可能です。
■MR-Sの中古相場、今後は高騰の兆し?!買うなら今か
現代ではスポーツカーの選択肢があまり多くないことや、スポーツモデルは生産が終了した後から段々と値上がりしていくのが一般的という面は考慮が必要ですが、MR-Sは近年、中古車価格帯の上昇傾向が見られ始めている注目の車種です。
新車時のパッとしなかった評判が落ち着き、MR-Sならではのピュアな運動性能がなおさら貴重な存在となっている現代では、再評価が進んでいます。
数年前までは中古車平均価格として70万円台で推移していたMR-Sですが、ここ1〜2年で一気に90万円台までジャンプアップしているというデータもあります。また生産終了から年数がかなり経っているモデルということもあって、中古車在庫台数自体がどんどん減少してしまっているようです。
既に新車で購入できないモデルなので、これからも大幅な価格下落は見込めず、じわじわと上昇していくことが見込まれているMR-Sの中古相場。平均価格が100万円台を突破してしまう前に、気になっているなら手に入れておくべきかもしれませんね。
■結局、これからMR-Sを購入するのはアリ?ナシ?
ここまで読んでいただいた読者の中にはMR-Sに乗ってみたいと考えている方もいらっしゃることでしょう。そういった方々が必ず疑問を持つのが、これからMR-Sを購入するのはアリなのかそれともナシなのか、ということです。
答えとしては、アリといえばアリであるし、ナシといえばナシ、というところでしょうか。
アリとする理由としては、140馬力の程よいエンジンパワーでワインディングからサーキットまで幅広く運転を楽しむことができること、タイヤサイズが小さく維持費も控えめ、などが挙げられます。
乗りたいと思った自動車を購入して乗ることがベストであることに疑いの余地はありませんが、如何せん生産終了から13年ほど経過しています。
そのため中古車市場に乗っているものであってもガタが出ていたり、事故車であったなど、心配になる要素もあるのでしっかりとご自分の目で確かめましょう。
MR-Sをじっくりチェック!デザイン、スペック、中古車価格
■【MR-Sのエクステリア】小粋で軽快なオープンスタイル
トヨタ MR-S
初代モデルが1999年に登場していますが、2020年となった現代の視点から見ても、色あせない、時代を感じさせないスタイリッシュなデザインです。
ボディサイズは5ナンバーに収まるほどのサイズですが、ロー&ワイドな雰囲気を感じられます。と言いながらも、ボディ幅の割に全長が長く感じられることも。
オープンカーということもあり開放的なイメージはスポーツカーの中でもトップレベルと言えるでしょう。
フロントのオーバーハングは長いですし、反対にリアのオーバーハングはそれと比べても明らかに短いです。この点は結構、好みが分かれるところではないでしょうか。
■【MR-Sのインテリア】収納は少なめ、シート背後は洞窟?!
《画像提供:Response 》トヨタ MR-S インテリア(東京オートサロン2008 出展車両)
内装はスポーツカーらしいものとなっています。
立体感のある各種メーター類や本革巻き3本スポーツホイールステアリングやアルミペダルなどを採用、幌を外してオープンで走っても恥ずかしくないデザインです。
SMTのシフトレバーは、フェラーリF355を思い浮かばせそうなメッキ仕様となっています。
また、車体後部にトランクを持たない割り切った設計のMR-Sは、もとより室内が狭くなりがちな2シーターミッドシップ車としても荷物の収納スペースが少なめ。
しかし実は、シート背後の幌を収納するスペースの下部が、ロックが可能な収納スペースとなっており、洞窟のようなその空間はなんとゴルフバッグも1セット収まるほどの広々さ。ふだんのお買い物から小旅行まで、きっちり対応してくれることでしょう。
■【MR-Sの試乗記・口コミ】
当メディアの姉妹サイトであるe燃費にMR-Sの実燃費データがありましたのでそちらをチェックすると、5MTモデルで12.16km/L、シーケンシャル・マニュアル・トランスミッション(SMT)モデルで13.58km/Lとなっています。
カタログ値から1−2km/Lほど低い数値で、燃費達成率は結構高い部類ではないでしょうか。
e燃費サイトにMR-Sのレビューがありますので、紹介したいと思います。故障することが多いけれども街乗りでも便利なSMTや、売りである軽い車両重量で加速も気持ち良いなど、ワインディングで使い切ることのできるパワーが強みであることがわかります。
一言で言うと、誰でも扱えるおもちゃです。
ライトウェイトスポーツの魅力を感じさせるのが、加減速を繰り返す走行の時。
走り慣れたコーナーの多い道に行き、全開にしてみます。
すると実用エンジンの割りに思ったより加速感いいです。
自動クラッチのセミマニュアルのタイプですが軽いショックと共に
100㎞くらいまではストレスなく加速します。ホント軽いってすばらしい。
MR-Sのハンドリングはノーズがロールしないし、ヨーの立ち上がりも早い。ブレーキの安定感も高い。
低速域では比較的安定しているけど、高速域ではスッとリアが流れることもあります。
ですからヘアピンカーブが連続するようなワインディングロードなんかが大得意なんです。
速度が上がるにつれて回頭性も上がります。でも100km/h以上は軽すぎて安定がなくなります。
つまり、低速でも軽量ミッドシップというクルマの特徴を十分味わえる、非常に貴重なクルマなんです。
レギュラーガソリンですし、街乗りですと14km/l前後です。
実は結構飛ばすので12以下もあります。。
経済的にもセカンドカーとしての資格は十分だと思います。
■【MR-Sのスペック】
駆動方式 | MR | |
---|---|---|
ボディサイズ(全長×全幅×全高) | 3,885mm×1,695mm×1,235mm | |
ホイールベース | 2,450mm | 室内寸法(長さ×幅×高さ) | 895mm×1,350mm×1,055mm |
車両重量 | 960~970㎏ | |
最大乗車定員 | 2名 | |
燃費 | 14.2km/L(10・15モード) | |
最小回転半径 | 5.0m | |
総排気量 | 1,794cc | |
エンジン種類 | 直列4気筒DOHCエンジン | |
最高出力 | 103kW (140PS)/ 6,400rpm | |
最大トルク | 171N・m (17.4kg・m)/ 4,400rpm | |
使用燃料 | 無鉛レギュラーガソリン | |
燃料タンク容量 | 48L | |
サスペンション(前/後) | マクファーソン・ストラット式コイルスプリング | |
ブレーキ(前/後) | ベンチレーテッドディスク |
■2021年最新、MR-Sの中古車価格まとめ
トヨタモデリスタ VM180ザガート(CLUB ZAGATO GIAPPONE 2012 in NUMAZU 出展車両)
2021年6月現在の中古車市場を確認してみると、MR-Sの税込中古車本体価格平均は98.3万円。価格帯としては24.0〜398.0万円となっており、中古車在庫は169台が確認できます。
90万円台という平均価格は、普通車のミッドシップスポーツカーとしては破格の安さに感じられます。しかし、新車当時の価格から見れば半額程度にしか落ち着いておらず、既に生産終了から14年が経っていることを考えれば、高めの価格帯で推移しているとも考えることができます。
もちろん、過走行気味の車や年式が古めの車なら、20〜30万円台から幅広く探すこともできるのはMR-Sの中古車の美点です。MT車が在庫台数としては多めではあるものの、とはいえSMT(シーケンシャルマニュアルトランスミッション)車も半数弱を占めるなど、ニーズに応じた選択が可能です。
程度が優れた低走行車や、豊富に設定された限定仕様などでは価格も高騰気味。中でも、外装に至るまで手が加えられたトヨタモデリスタ「VM180 ザガート」などは、限定販売という稀少価値の高さも相まって、200万円超の価格がつくことが多いようです。イタリアの名門カロッツェリア「ザガート」が手掛けた独特なスタイルも相まって、一際特別なMR-Sとなっています。
まとめ
トヨタ MR-S(JGTC GT300クラス 参戦車両)
MR-Sは販売終了から2020年現在、すでに13年経過した自動車となりました。
日本国内では新車登録から13年以上経過した自動車に対しては風当たりが厳しいので購入・維持を悩まれる方も数多いことでしょう。
それでもMR-Sに乗りたい、走らせたいという強い意志を持っている方は、程度の良い中古車を探して見てはいかがでしょうか。
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よくある質問
■MR-Sってどんな車?
トヨタとして現在に至るまで最後のミッドシップレイアウトを採用した2シータースポーツカーで、2007年まで生産されていました。幌タイプのオープンカーでもあり、 その軽量ボディがもたらすレスポンスに優れた回頭性能は、現在まで高い評価を受けているほか、レーシングカーのベース車としても活躍しました。
■MR-Sって名前、どういう意味?
前半の「MR」は「ミッドシップ・ランアバウト」、ハイフンを挟んで「S」は「スポーツオープンカー」の略となっています。
■MR-Sは遅いって本当?
MR~Sは、その軽量でコンパクトなボディを活かした高度なコーナリング性能やブレーキ性能には定評がありますし、最高出力こそ140PSと控えめなものの、駆動輪にトラクションのかかりやすいミッドシップレイアウトということもあり、加速性能も侮れません。スポーツカーらしい運動性能が確保されているといえるでしょう。