ピラーの役割とは?
Aピラー
ピラー(pillar)とは柱を意味する英語単語であり、日本では転じて自動車の窓柱を指す言葉です。イギリス英語圏ではPostと称されていますが、日本とアメリカ合衆国においてはこのPillarという言葉が使われています。
具体的には屋根の部位であるルーフとボディを繋ぐ、柱や支柱を指します。黎明期の自動車はフレームの上に木骨構造のキャビンが搭載されており、重量のある屋根を支える真っすぐな柱がその名の通りのピラーでした。
車体の全てが金属製となり設計の自由度が増したことにより変化が表れ、1920年代に流線形ブームが始まったのを皮切りに、30〜40年代と研鑽を重ね屋根は丸みを帯びて小さく軽量化していきます。
戦後には目覚ましい進化を遂げており、ピラーは単に屋根を支える柱ではなく、車体における重要な構造材へと変化しました。
1990年代以降はモノコック構造を採用する車両が増え続け、衝突安全性やスタイリングに関して、また、車体剛性への貢献度が増して果たすべき役割は非常に多くなってきています。
ピラーの位置
Cピラー
ピラーという単語が出てくると同時に、AやBなどアルファベットも必ずと言っていいほど登場しますが、これは位置を示したものです。
車を側面から見立て一番前方にあるフロントガラスの所の柱がAであり、そこから後方へと向かってBやC、Dといったように続きます。
セダンタイプはCまで、大きいミニバンやステーションワゴンなどの車両はDまである車種がほとんどです。バスやリムジンなど大型タイプの中には、HやJまで存在する車種もあります。
単に屋根を支えるだけでなく、そのほとんどがモノコック構造を採用している現代においてボディ強度を保つための重要な部品です。
その位置によってピラーの役割が異なり、各メーカーが工夫を凝らしている部位でもあります。ここからは、車のそれぞれの部位における役割や特徴を細かく見ていきましょう。
■Aピラー?Bピラー?各部の名称
Aピラー
Aピラーは運転席および助手席、つまりフロントガラス付近にあるためフロントピラーとも呼ばれる部位です。
前方からの衝突事故の際、その衝撃から乗員を守りつつ生存のための空間を保つ、という大事な役割を持ちます。
強度を上げるには支柱を太くすれば良いのですが、反面運転席からの死角が増えるというデメリットもあります。
そのため必要な視界を確保しつつも、強度を追求するという各メーカーの技術の粋が試される箇所です。
各社で対策が少しずつ異なり、付け根あたりに三角形の窓をつけたり2本に分割して視界を確保するなど、工夫が凝らされています。
なお、その角度によって車体の空気抵抗および室内空間の効率も変わってくるため、空気抵抗を減らしたいエコカーは寝かせる傾向にあります。
ミニバンなど居住空間を大きく取りたい場合は、反対にピラーを立たせる設計が多いです。
Bピラーは前後にドアがある車種ならその間や、後部ドアの付け根に設置されます。
車体側面から見て、中央あたりに位置していることからセンターピラーと呼ばれることもあり、側面衝突の際の防御面の要になっています。加えてシートベルトを固定する部位でもあるため、十分な強度が必要となる支柱です。
車体の後部に設置されているのが、Cピラーです。ボディの強度を保つために必要な部品であり、セダンタイプの高級車の中にはここを極端に太くすることで後席乗員のプライバシーを守る、といった役割も持ちます。
後部座席の窓の後ろにもう1枚窓があるミニバンなどでは、さらに後方を守るためのDピラーが設けられています。
こちらも傾斜を強くすればスポーティーなイメージに、立たせることで荷室空間を確保できるといった自由度の高い部位です。
■ボディタイプとピラーの関係
Cピラー
安全面の理由で形状の大きな変化が難しいAやBピラーと比べて、CやDは設計における自由度が高めです。
これにより外観をスマートに演出したり、荷室空間を広くとって利便性を向上させたりなど、デザインコンセプトを自在に操作できます。
そのため各メーカーは伝統的なデザインを保つのか、はたまた機能的もしくは視覚的に斬新にアプローチするのか、といった調整を取りながら車に個性を与えていきます。
ピラーレスの構造の主なクルマ
利便性を追求し、Bピラーを撤廃したピラーレス構造の車も登場しています。特に目立つのはボディ側面に大きな開口部を設け、スムーズな乗降を実現したミニバンをはじめとした車種でしょう。
ドアを閉じた状態であれば、ピラーが付いたものと変わらない強度・安全基準を確保しているモデルもあります。ここでは今買える、ピラーレス構造の主な車を2車種ご紹介します。
■1. ホンダ N-VAN
ホンダN-VAN
ホンダのN-VANは助手席側にピラーレスを採用しており、商用車としての利便性を深く追求しています。
ラゲッジスペースの広さや使い勝手の良さは、特筆すべき点があります。
ワンボックスカーに匹敵する荷物の許容量であり、その広さは大きめのバイクを積載できるほどです。釣りやオートキャンプのベッド代わりなど、アウトドア好きなら見逃せない車種です。
■2. ダイハツ タント
ダイハツタント
タントは昨今の軽自動車で人気のスーパーハイトワゴンの先駆けとして、2003年に登場した車種です。
軽自動車というボディサイズの面で不利なカテゴリーにありながら、広い室内空スペースを実現しています。
その理由は、2代目で撤廃された助手席側のBピラーに集約されています。乗降性の向上を目指したミラクルオープンドアを採用することで、他の追随を許さない人気車種となりました。
Bピラーを排除することで助手席が大きく開くミラクルオープンドア構造により、軽自動車の販売ランキングで常にトップ5圏内をキープするほどです。
さらに新型タントは運転席が最大540mmもスライドすることが可能となり、この数値は世界初となっています。
運転席から後部座席への室内での直接移動も可能となったため、ドライバーが子どもの座る後部まで移動して、一緒にミラクルオープンドアからそのまま降車ということも出来るようになりました。
まとめ
Aピラー
黎明期こそ単に屋根を支える柱材であったピラーが、現在ではボディの一部となったばかりか、車の強度や安全確保の上で非常に重要な部材となりました。
設計自由度の高いCピラーは、傾斜角を強くすればスポーツカーのイメージに、弱くすることで荷室空間の確保が可能など各メーカーの腕の見せ所の部位とも言えます。利便性の向上を目指し、Bピラーを撤廃したモデルも増えつつあります。
なお最近ではAピラーの死角をなくすための新技術の開発も進んでおり、さらに安全面とデザイン性の優れたピラーが誕生することを期待しましょう。