世界のセレブが陶酔した500台限定スーパーカー、レクサス LFA
レクサス LFA
「限定」という響きは魅力的ですよね。この機を逃すとどんなに欲しくてももう手に入らない、そんな逸品の価値を知っていることは、誇らしさをももたらします。
国産車でも、特別仕様車を数百台限定で売ります、といったことは常々行われてきたことなのですが、レクサス LFAの場合は世界限定500台生産、日本向けはそのうち200台という、これぞスーパーカー、ブランドのフラッグシップカーという稀少価値を携えて、3,750万円という国産車過去最高の新車価格で登場しました。
その500台の中でも有名なオーナーが、パリス・ヒルトン。LFAを交際相手からプレゼントされた彼女は、その交際相手と破局したのちに、別のLFAを自ら買い直すという気に入りよう。
また、オーナーではないのですが、「トップ・ギア」や「ザ・グランド・ツアー」の司会者として世界的に有名でレクサス車に手厳しい自動車評論家、ジェレミー・クラークソンは、彼が今まで運転したことのある中で最高の車はレクサス LFAであると発言したことで話題に。
世界中のあらゆるハイエンドな車を自由に選べる立場にある人々が認めるレクサス LFAは、価格相応以上の魅力を持った車なのです。
■「日本らしい」スーパーカーを実現、採算は度外視?!
レクサス LFA、豊田章男トヨタ自動車代表取締役社長と共に(東京モーターショー2009)
スーパーカーの定義は人それぞれですが、「コストを気にせずに理想を実現した車のこと」と言い換えることができるかもしれません。その場合、レクサス LFAはその定義にピッタリとハマります。
市販仕様の発表は2009年の東京モーターショー、生産は2010年末に開始ということで、世界規模で発生した2008年からの金融危機の余波にも負けず発売されたLFAですが、実際の開発の始まりは、もっとずっと昔の2000年とのこと。
10年という長期間にわたった開発の上、LFAはパワートレインからシャシーなどだけでなく、オーディオのような細かな部分に至るまで専用設計の塊。その上、LFA生産のために工法から開発したカーボン製パーツの製造設備まで社内に構築するなど、徹底した「最良」の追求のために、莫大な開発費用がかけられたことが伺えます。
これによってLFAは、その4,000万円近い新車価格ながら、1台販売するごとにトヨタが大赤字を切っていたと噂されています。
レクサスおよびトヨタ自動車の、世界で認められる日本製スーパーカーを作るという意地や、企業の底力まで見え隠れする、採算度外視のプロジェクトであったことがわかります。
レクサス LFAの魅力の数々、選ばれしオーナーのみが知る世界とは
レクサス LFA ニュルブルクリンクパッケージ
いくらレクサス/トヨタの、果ては日本の自動車業界の威信をかけた渾身の車であっても、実際にオーナーとなれる人がこの広い全世界で500人しかいないLFAは実車を見かけることは非常に稀。もちろん、近くのレクサス販売店にちょっと見に行ってみよう、という訳にもいきません。
実際に触れることはかなり難しいのですが、世界トップクラスのスーパーカーとなるべくあらゆる部分で最良の運転性能とレクサスらしい「おもてなし」を追求したLFAは魅力がたくさん。その魅力について、ご紹介していきます。
■【LFAの魅力】「天使の咆哮」の排気音を持つV10エンジン
レクサス LFA エンジンルーム
現在のF1選手権におけるエンジン、1.6リッターのV6ターボエンジンと規定されていますが、2000年から2005年までの間は、V10自然吸気エンジンを使用する規定になっていました。
トヨタは2002年から2009年の間でF1に参戦しており、2000年頃、LFAの開発初期段階での構想時において、数年後からエントリーするF1との相乗効果を持つアピール力を企図して、エンジン形式としてV型10気筒エンジンが採用されたとのことです。
F1規定はその後V8エンジンに縮小され、続いて現在のV6エンジンに縮小された上、LFAの生産が始まった2010年には既にトヨタはF1から撤退してしまっていたのですが、レクサスにとって幸運なことに、このV10エンジンはLFAの特徴のひとつとして世界中の自動車ファンから羨望の眼差しを浴びることになります。
現在のF1がV6ターボとハイブリッドシステムを装備していることからも分かるとおり、たとえスーパーカーの世界であっても電動化やダウンサイジングターボのコンセプトが徐々に浸透してきています。
LFAの、ハイブリッドなし・過給機なしの4.8リッター V10自然吸気ユニットが生み出す、エンジンの存在感を強く感じさせるハイピッチの排気音は「天使の咆哮」とも称され、かつてのF1をも思わせる唯一無二の特徴となり、LFAの最もアイコニックな部分のひとつとなりました。
電動化が進む自動車業界において、LFAエンジンは、自然吸気エンジンの壮大なフィナーレを飾る名エンジンの一つだったのかもしれません。
■【LFAの魅力】快適装備を削ってまで得たピュアスポーツの運動性能
レクサス LFA (東京モーターショー2011)
LFAには、レクサス車ながらクルーズコントロールやオートライト、開いたボンネットを支えるダンパーすら装備されていません。それはひとえに、運転に関連する部分に装備を集中させることで、究極の運転感覚を実現するために他なりません。
開発初期にアルミボディで開発が進んだLFAは、さらなる軽量化のためにそのアルミボディを捨て、レクサス/トヨタとしても市販車への実用化が進んでいなかったCFRP(カーボン繊維強化プラスチック)によるボディで再度開発されたという、驚きの開発ストーリーを持ちます。
市販仕様ではシャシー構造の65%、キャビン部を含めた車両後方部分がCFRPによる構造となっており、キャビンより前はアルミで構成することで、車重を1.5トン台にまで軽量化。
その上、V10エンジンを従来のV8エンジン並のコンパクト設計として前輪軸よりも後方に配置する「フロントミッドシップ」としたことや、トランスミッションを車両後方に配置する「トランスアクスル」などの設計によって、48:52という、FR形式の車ながらミッドシップのような後方寄りの前後重量配分を実現。
大排気量エンジンの力強さだけではない、高いハンドリング性能や機敏なコーナリングをも手にしました。
■【LFAの魅力】何にも似ていないレクサス・ワールドの内外装
レクサス LFA
FR車らしいロングノーズとショートデッキでありながら、フェラーリやランボルギーニと並んでも引け目を感じることなく、かつレクサスらしさを感じさせるユニークな内外装も、LFAの魅力のひとつです。ボディ全体が機能に裏付けされた美しさは迫力を感じさせます。
ボンネットやロワーグリルが作り出すラインはスピンドル形状になっており、現在のレクサスのデザインアイコン「スピンドルグリル」の先駆けとなる表情を作り出していました。
エクステリアの特徴は、往年の和製GTカー、トヨタ 2000GTを思わせるようなフロントフェンダーの峰の造形や、キャビン後方に設けられたシャープな形状のエアインテーク、フロントエンジン車ながら後方に配置されたラジエーターの排気口にあしらわれたL形状のメッシュグリルなどでしょう。
レクサス車らしい緻密なデザインのヘッドランプやテールランプ、車両後部のディフューザーに三角形型に埋め込まれた3本出しのマフラー、高々と迫り上がるアクティブリアウィングなども、見るものに特別な車であることを実感させるデザイン要素です。
インテリアも独特の世界観。液晶パネルと可動式リングを組み合わせた読み取りやすいメーターパネルや二段構造のダッシュボードなどは、LFA以降、現在に至るまでのレクサス車でも見られるものですが、元祖はLFAなのです。
■【LFAの魅力】ニュル最速記録も!ニュルブルクリンクパッケージ
レクサス LFA ニュルブルクリンクパッケージ
もとより世界500台限定生産のLFAですが、その中でもさらに特別なのが、50台限定のスパルタン仕様「ニュルブルクリンクパッケージ」です。
独・ニュルブルクにある、非常に過酷なことで知られる全長20.832kmの「ノルドシュライフェ(北コース)」を有するサーキット、ニュルブルクリンクの名を冠しているのは、LFA開発時から走り込みを続けた同コースへの感謝の念からかもしれませんね。
サーキット走行を重視した特別グレードとなるニュルブルクリンクパッケージは、ベース仕様と比べてよりアグレッシブなエアロパーツを特別装備。中でもアクティブリアウィングの代わりに装着される角度調整式リアウィングはかなり大型で、まるでレーシングカーを思わせます。
エンジンやトランスミッションの性能向上、軽量化まで行われたニュルブルクリンクパッケージは、その名に恥じない記録の持ち主。
2011年8月には、ニュルブルクリンク 北コースにおいて、量産車メーカーの市販FR車として当時世界最速の7分14秒64というラップタイムを記録しました。
レクサス LFAのスペック
ボディサイズ(全長×全幅×全高) | 4,505mm×1,895mm×1,220mm | |
---|---|---|
ホイールベース | 2,605mm | |
最大乗車定員 | 2名 | |
車両重量 | 1,480kg | |
燃費 | - | |
エンジン種類 | V型10気筒 4,805cc | |
エンジン最高出力 | 412kW(560PS)/8,700rpm | |
エンジン最大トルク | 480N・m(48.9kgf・m)/7,000rpm | |
駆動方式 | 後輪駆動(FR) | |
トランスミッション | 6速ASG(オートメーテッドシーケンシャルギアボックス) | |
新車価格 | 37,500,000円(消費税込) |
レクサス LFAを超える存在に!GRスーパースポーツコンセプト
トヨタ ガズーレーシング GRスーパースポーツコンセプト(東京オートサロン2018)
2010年代のレクサス/トヨタを代表するハイパフォーマンスカーがLFAであったとすれば、次の2020年代を背負っていくことが期待されているのが、現在コンセプトカーが披露されている、「トヨタ ガズーレーシング GRスーパースポーツ」でしょう。
レーシングマシンとほぼ同じ主要パーツを使い、「公道走行可能なレーシングカー」という発想が見た目からもビンビンに伝わってくるレーシーな車に仕上がるようです。
トヨタ TS050(WEC2020 第6戦 スパ・フランコルシャン カーナンバー8)
ル・マン24時間レースなどの有名耐久レースで構成された選手権、WEC(世界耐久選手権)に実際に参戦しているトヨタのレーシングマシン「TS050」の公道仕様という位置づけで開発中のGRスーパースポーツ。
実戦で鍛え上げられたハイブリッドシステム、2.4リッター V6ツインターボの「THS-R(トヨタハイブリッドシステム・レーシング)」は、熱効率50%という、市販車で同等のスペックが達成されるならば前人未到レベルの高効率パワートレインとなっているとのこと。
現在さらに効率を高めるべく開発継続中とのことで、一体どんな新境地を見せてくれるのか、今から楽しみなところです。
トヨタ ガズーレーシング GRスーパースポーツコンセプト(東京オートサロン2018)
現時点では発売予定時期はおろか、予定価格すら発表されていませんが、数千万円とも数億円とも噂されるその価格も含めて、LFAと同じように限られた人しか体験できない車となりそう。
コロナ禍に負けることなく開発続行の末、日本の公道を走る姿をぜひ見せてもらいたいものです。
トヨタ ガズーレーシング GRスーパースポーツコンセプトのスペック
エンジン種類 | V型6気筒ツインターボ 2,400cc | |
---|---|---|
ハイブリッドシステム | THS-R(トヨタハイブリッドシステム・レーシング) | |
パワーユニット最高出力 | 735kW(1,000PS) |
レクサス LFAの中古車は存在するの?
レクサス LFA メーター
日本国内向けには200台しか販売しなかったLFAですが、生産完了から7年が経過した2020年9月現在、2台の中古車が市場に存在することが確認できます。
もちろんどちらの車両も価格は「応談」であり、冷やかし客は相手にもしてもらえなさそうではあるのですが、複数台の在庫があるというのは稀と思われます。もしかすると今年前半のコロナショックによる影響があるのかもしれませんね。
現在中古車市場で確認できるのは、LFAらしいホワイトボディにレッドインテリアの1台と、精悍なブラックの内外装の1台。もはや新車では手に入らず、その価値はこれからも上がり続けていくと思われるので、懐に相当な余裕のある方は、在庫があるうちに問い合わせてみることをオススメいたします。
■「新車」もまだ買えるかもしれません!?
レクサス LFA
既に生産が完了しているLFAですが、ここ数年、なぜか新車のLFAが新規登録される例が複数回確認されています。レプリカなどではなく、正真正銘のLFAのピカピカの新車です。
これは海外の一部のレクサスディーラーにおいて、未登録のままのLFAを在庫している場合があるため。どういう基準で販売しているのかは分かりませんが、選ばれし新たなオーナーに対し、おそらく想像もつかないほどの価格で、新車登録をして販売しているようです。
既に生産完了した車をここまでの長期間にわたって保管しているのですから、もしかすると誰にも売る気はなく、個人的なコレクションの意味合いもあるのかもしれませんね。
レクサス LFA インテリア
2020年初頭の報道では、そんな未登録のLFAが、米国だけで残り4台存在するとのことです。どうしても誰の手にも渡ったことのないLFAが欲しい!とお思いの大富豪のあなたなら、車1台を並行輸入するくらいのことは朝飯前でしょうから、海外のレクサスディーラーでLFAを探してみれば、まだ未登録の新車が手に入るかも。
2017年には12台はあったとされる未登録のLFAも、遂に1ケタ台にまで減ってしまいました。今度こそ正真正銘にLFAが「売り切れ」てしまうことも、時間の問題でしょう。
まとめ
レクサス LFA
現実的に手に入れるには、ミニカーを買うぐらいしか選択肢のないLFA。
実際に体験できないことは悲しいですが、LFAの開発によって得られたノウハウは、それ以降のレクサス/トヨタFRスポーツカーの開発にも活かされているとのことで、そう言われてみればトヨタ 86などは、ミニ・LFA風にも見えるかもしれません。
レクサス LFA シリアルプレート
実際に体験することは難しいとはいえ、日本の自動車メーカーが、ここまで世界中で絶賛されるほどの真の「名車」を作り出せたという事実だけでも、日本人として誇らしい気持ちになります。
LFAは、これからもずっと続いていくであろう日本車の歴史の中にあっても、最も偉大な車の1台であり続けることでしょう。