アメ車は運転が退屈と思ってる? シボレー コルベットを見よ
ナショナル・コルベット・ミュージアム
アメリカ製の自動車といえば、一番に浮かぶのは最近ではSUV、もっとポピュラーなところでは高級セダンでしょうか。
しかし、V8エンジンを搭載したマッスルカーやスポーツカーも、アメリカ車の長い歴史の中で多数登場した由緒正しき車型。その中でも、シボレーの「コルベット」は、トップクラスのステータスと性能を両立してきた実績があります。
伝統を重んじつつ、時代ごとに革新も忘れなかった歴代コルベットで共通の魅力をまとめました。
■2シーター、V8エンジン・・・ハズさない定番!
シボレー コルベット ZR1(C6)
コルベットの長い歴史は1953年から現在まで60年以上にわたるものですが、スポーツカーらしい2ドア・2シーターはそのモデルライフ中で常に維持されてきました。
また、初代となるC1の登場当初は直列6気筒エンジンを搭載していたものの、パワー不足を補うべく後にV型8気筒エンジンへと換装されて以降は、アメリカ車の象徴とも言えるV型8気筒の大排気量エンジンを現代に至るまで搭載しているのも伝統。
欧州とも日本とも違う、アメリカらしいスポーツカーへのアプローチを続けています。
■実は軽量さも重視、世界が認める優れた運動性能
シボレー コルベット(C1 1953年型)
大排気量エンジンを搭載していますし、ボディサイズとしても大柄なことから、重量級と思われがちですが、最新型であるC8のアメリカ仕様の車重は約1.5トンと、6.2リッターもの大型エンジンを搭載していることを考えれば比較的軽量に抑えられている点もコルベットの特徴。
初代からボディパネルをFRP(ファイバーグラス強化プラスチック)などのプラスチック系素材としていたり、C8では新たにカーボンファイバーの活用も進むなど、スポーツカーらしく軽量化にも余念がありません。
■エボリューションモデルも続々登場
シボレー コルベット ZR1(C7 2018年型) インディ500 公式ペースカー
ベースモデルで充分以上に高性能なコルベットですが、エボリューションモデルがそれぞれの世代で登場することも、もはやお約束。
ハイパワー版のZ06、まるでレースカーのような本格的な装備が加えられたシリーズ最強モデルのZR1など、さまざまな追加モデルが時に台数限定で販売されることは、コルベットファンを楽しませています。
新型もスタンバイ、今度はミッドシップ・スーパーカーだ!
シボレー コルベット スティングレイ(C8)
2019年は、コルベットにとって大きな変革の年となりました。
パフォーマンスを重要視するコルベットですので、それまで幾度も噂はされてきたものの実現しなかったエンジンのミッドシップマウント化。遡ること60年代からシボレー自身も可能性を探っており、ミッドエンジンのコルベットのコンセプトカーを複数リリースはしてきました。
しかし、初代からの長年の伝統であったFRスタイルの魅力は大きく、なかなかファンの期待を上回るほどの変革が実現しにくかったのかもしれません。
しかし、コルベット8世代目(C8)となるコルベット スティングレーは、なんとエンジンをミッドシップマウントしたもはやスーパーカーと思えるような刺激的なボディで登場、世界中の話題をさらいました。
シボレー コルベット スティングレイ(C8)
これまでのロングフード・ショートデッキの伝統的文法を打ち破った短く低いボンネットや、ドア後部に大きく口を開くエアインテークなど、ミッドシップ車らしい特徴が散りばめられたボディはしかし、どこかコルベットらしさも感じさせますよね。
先代(C7)・先先代(C6)からは、硬質な印象を与えるボディデザインに移行していたこともあり、C8の筋肉質で塊感のあるフォルムやディテールが、新世代のコルベットらしさを演出しているためかもしれません。
シボレー コルベット スティングレイ(C8) エンジンルーム
もちろん、搭載位置がドライバー後方に移動されたとはいえ、大排気量のV型8気筒エンジンという伝統はそのまま。
C8では、ベースモデルの状態でも490hp(約496.8PS)、Z51パフォーマンスパッケージ装着車では495hp(約501.9PS)を発揮する6.2リッターのハイパフォーマンスさで、 8速DCTのみとなるトランスミッションと組み合わされ、0-60mph加速はたったの2.9秒でこなします。
シボレー コルベット スティングレイ(C8) インテリア
もはやスーパーカーそのものといったルックスに合わせ、C8ではインテリアも大幅に高級化しています。
近年のコルベットのインテリアモチーフを引き継ぎつつも、レーシングカーを思わせる上下端をフラットにしたハンドルや、12インチのサイズを誇るフル液晶のメーターパネルなど、国際派で最先端のインテリアへと進化しています。
シボレー コルベット スティングレイ コンバーチブル(C8)
また、新たに電動ハードトップを採用したコンバーチブルや、右ハンドル仕様の設定など、コルベットの長い歴史の中で「初」となる新基軸が数多いこともC8の特徴。
特に右ハンドルの設定は驚くべきことで、我々日本人としてはありがたいですよね。無論、すでに詳細は発表されている日本仕様車では全車右ハンドルとなっています。
コンバーチブルも、ルーフを閉じていればクーペと同様の空力性能を確保しているとのことで、オープンカーの開放感とコルベットらしい動力性能を両方楽しめる贅沢な仕上がりになっていそうです。
シボレー コルベット スティングレイ(C8)
すでに米国では納車も続々始まっている新型コルベット スティングレイは、ミッドシップ車らしい見かけだけではなく、本物の走行性能を持っていることが高く評価されており、2021年5月が予定されている日本での発売開始が待ち遠しいですね。
シボレー コルベット スティングレイのスペック
ボディサイズ(全長×全幅×全高) | 182.3in×76.1in×48.6in | |
---|---|---|
ボディサイズ(メートル法換算・参考値) | 4,630.4mm×1,932.9mm×1,234.4mm | |
ホイールベース | 107.2in | |
ホイールベース(メートル法換算・参考値) | 2,722.9mm | |
最大乗車定員 | 2名 | |
車両重量 | 3,366lbs | |
車両重量(メートル法換算・参考値) | 1,526.8kg | |
燃費 | EPAコンバインド:19.0MPG | |
エンジン種類 | V型8気筒 6.2L | |
エンジン最高出力 | 490hp/6,450rpm | |
エンジン最大トルク | 465lb-ft/5,150rpm | |
駆動方式 | 後輪駆動(MR) | |
トランスミッション | 8速DCT | |
新車価格 | 13,500,000円(消費税込) |
歴代コルベットの印象的なモデルをピックアップ!
■初代「C1」(1953〜1962年):伝説の始まり、可憐なロードスター
シボレー コルベット(C1 1953年型)
コルベットの長い歴史の始まり、通称C1コルベットは、欧州でのスポーツカーを用いたカーレースに触発されたことから開発が始まったとのこと。
当時はまだまだ高嶺の花だったオープンカーで、アメリカ国内の基準としては小型軽量のボディに適度にパワフルな直列6気筒エンジンを組み合わせたC1は、欧州のスポーツカーの文法そのものの可憐さを有していました。
今見返すと、スムーズなボディラインや装飾過多でないシンプルなディテールは非常に魅力的。まして当時のアメリカでは、非常に新鮮に受け止められたことでしょう。
しかし、ややパワー不足で旧態依然とした直6エンジンが不評で、デビュー後数年でV型8気筒エンジンに換装されたことで、現代までのコルベットの道筋が定まります。
■二代目「C2」(1963〜1967年):初代に負けないインパクト!
シボレー コルベット スティングレイ(C2 1963年型)
初代のスムーズなラインから一転、二代目となるC2では、マッチョなフェンダーや豊満なボディワークで、まるで宇宙船のような近未来ルックで登場。
すでにコルベットはスポーツカーとして高い評判を得ていたのですが、大胆な変貌で世間を驚かせませした。
新型モデルにもつけられている「スティングレイ」というサブネームはこのC2で登場。そう言われてみれば、クーペモデルの徐々に絞り込まれていくキャビンや、車両中央に配置されたキャラクターラインが、スティングレイ=アカエイを思わせますよね。
ルックスのみならず、リジッドアクスルだったC1とは異なって後輪独立懸架を採用したり、コルベットとして伝統となるハイパフォーマンスグレード「Z06」が初登場するなど、走りの面でもパワーアップ。
特にZ06は、後に7.0リッターまで大排気量化されるなど、アメリカトップクラスのスポーツカーとしての性能に磨きをかけていました。
■五代目「C5」(1997〜2004年):「曲がれる」コルベットに進化
シボレー コルベット Z06(C5 2001年型)
エンジンのパフォーマンスがどんどんと向上していく反面、欧州のスポーツカーと比べて「直線番長」的な烙印を押されることもしばしばだったコルベットに、大進化をもたらしたのが五代目となるC5でした。
新たにホイールベースを短縮・トレッドを拡大するなど、シャシー構成からコーナリングを重視したC5は、どうしても大排気量エンジンを搭載するためフロントヘビーとなっていた重量配分を改善するため、トランスミッションを車体後部に配置するトランスアクスルレイアウトを採用。
グイグイ加速できる5.7リッター V型8気筒エンジンのパワーに加えて、ドライバーの意思に素直に反応するスポーツカーらしいハンドリングをも実現していました。
そのほか、ルックス面でも先代までとは異なり一気にモダン化。リトラクタブルヘッドライトという現代では消えてしまった特徴は別として、フォルムは現行車としても通用するものですよね。
そのリトラクタブルヘッドライトは、C2以降のコルベットの伝統の一つだったのですが、C5で廃止。C5はまた、市販乗用車最後のリトラクタブルヘッドライト装備車でもありました。
【かっこよすぎる】コルベットの伝統のひとつ、レース参戦活動
シボレー コルベット C7.R
スポーツカーたるコルベットとは切っても切れないのが、レース参戦です。
初代C1の頃から続けられていたレース参戦は、すでに結成20年以上となるワークスチームの「コルベット レーシング」を含め、もはやコルベットの伝統の一つ。世界中のトップクラスのレースに参戦し、観客の目を楽しませています。
シボレー コルベット レースカー(C2 1963年)
なんといっても、初代の開発が欧州のカーレースに触発されてのものだったのですから、純アメリカンスポーツカーとして、レースに参戦しないわけにはいきませんよね。
市販車ベースのものから、データ取得を目的とした試作車によるレース参戦まで、さまざまなバリエーションで行われてきたレース参戦は、その華々しい戦績とともに、コルベットファンの誇りとなっています。
近年のコルベット レーシングは、2015年にデイトナ/セブリング/ルマンという世界有数の24時間耐久レースで三冠を達成したり、2016年にレース仕様のコルベットでの通算100勝を達成しているなど、快進撃が続いています。
シボレー コルベット C8.R
もちろん、ミッドシップとなったC8にもレーシングカーが準備されており、さらに向上した戦闘力でこれからも活躍してくれることでしょう。
コルベット レーシングから、コルベット C8.Rから、これからも目が離せませんね。
シボレー コルベット、新車・中古車価格まとめ
シボレー コルベット Z06(C7)
新型モデルとなるC8の価格はすでに発表されており、最も廉価なクーペ 2LTで税抜き1,072万円、豪華装備のクーペ 3LTで1,272万円、コンバーチブルが1,409万円とのことです。
先代のC7では廉価グレードでは廉価グレードでは1,000万円切りを実現していたのですが、新規軸満載のC8では値上がりも止む無しといったところでしょう。しかも、イタリアの跳ね馬や暴れ牛のエンブレムの車よりは断然お安く、コスパは高めです。
2020年10月現在の中古車では、コルベットが128台、コルベットコンバーチブルが34台確認でき、それぞれ現行モデルに限った中古車平均価格は消費税抜きで738.1万円と786.1万円となっています。
現行モデルであっても最安では600万円台から在庫されているほか、新型C8ではマニュアルトランスミッションの設定がなく、今後も設定する予定はないと発表されているので、マニュアルで大排気量エンジンを操りたい好事家のみなさまは、お早めに中古車を押さえておいた方がいいかもしれませんよ。
まとめ
シボレー コルベット スティングレイ(C8)
アメリカの誇りでもある、コルベットについてご紹介してきました。
大排気量に厳しい日本の自動車税種別割では、6.0リッター超のエンジンを搭載するコルベットは10万円越えの税額となるなど、維持費の面でもアメリカンな余裕が必要となりそうではありますが、見せてくれる世界はきっと他の車では体感できないものでしょう。
新型となるC8を、日本の路上で早く見かけたいものですね。