ガズーレーシングってなに? トヨタワークスのレース参戦チーム!
トヨタ ガズーレーシング ロゴ
トヨタ ガズーレーシングという名前を聞いても、トヨタは分かるしレーシングも分かるけど、GAZOO(ガズー)ってなに?とお思いの方もいらっしゃるかもしれませんね。
ガズーはトヨタが運営する自動車関連情報サイトで、元々は豊田章男・現トヨタ自動車社長が有志と立ち上げた中古車画像システムでした。
現在の中古車情報サイトでは、詳細な画像が何十枚も掲載されていて、現物を見なくても大体の程度が把握できるのが当たり前ですが、ガズー発足当時は実車を見るのが鉄則となっており、展示スペースの確保などに苦戦していたそう。
ガズーはインターネットを利用した複数画像による中古車販売の効率化に成功し、現在では自動車関連の情報を総合的に扱うサイトへと進化しています。
ちなみにGAZOOとは、「画像」を入力し間違えた結果から採用された名前とのこと。お茶目ですね。
トヨタ ガズーレーシング TS050ハイブリッド
そんなガズーの名を冠したトヨタのモータースポーツ活動の総本山となるのが、トヨタ ガズーレーシング。レース車両では赤・白・黒のペイントワークが印象的で、一目で分かる特徴かもしれません。
現在ではレース活動の経験を市販車に落とし込んだGR・GRスポーツの各車種も展開するなど、我々一般ユーザーとしても関わりのあるトヨタ ガズーレーシング。その歴史について、簡単にまとめてみました。
■ガズーレーシングの歴史:長年続くトヨタのモータースポーツ活動
トヨタ ヤリスWRC(2019年型)
現在のガズーレーシング体制になるずっと前、1960年代からトヨタはモータースポーツに取り組んできました。
日本でのモータースポーツ黎明期の日本グランプリやラリーだけでなく、早くも1957年にはオーストラリア1周ラリーにクラウンで出場するなど、世界的なモータースポーツ参戦活動・支援活動を続けてきたトヨタ。
近年でこそエキサイティングな車作りが定評となってきているトヨタ車ではありますが、市販車ラインナップではより思慮深い車種が多いイメージもあるかと思いますので、この継続的なモータースポーツ活動はやや意外に思われる方もいらっしゃるのでは。
■ガズーレーシングの歴史:チーム・ガズーの設立とニュル24時間耐久
トヨタ GRスープラ(第47回ニュルブルクリンク24時間耐久レース 2019年 参戦車両)
そして、そんなトヨタのモータースポーツ活動の大きな転機が、当時は副社長であった豊田章男・現トヨタ社長と社内有志で結成した「チーム・ガズー」による、2007年のニュルブルクリンク24時間レースへの参戦でしょう。
参戦車両は開発資金に物を言わせた超絶レーシングカー… ではなくお手製チューニングのトヨタ アルテッツァだったとのことで、親近感が湧いてしまいますね。
参戦にあたってトヨタワークスの名を名乗ることを許されなかったため、章男氏が設立に関わったガズーの名を用いたそのレース活動は次第にヒートアップしていき、トヨタの新車開発にも技術フィードバックがなされるほどに成長していきます。
そして現在のように、トヨタのモータースポーツ活動を「トヨタ ガズーレーシング」で一括して担当する段階にまで至るのです。
■ガズーレーシングの歴史:ダカールにWRCにWEC!続々ワークス参戦
トヨタ ハイラックス(ダカールラリー2020 参戦車両)
自動車の人気自体に翳りが見え隠れする現在、モータースポーツは不利益分野であると判断される場合も多く、巨大自動車メーカーの中でもワークス参戦をどんどん取りやめているところもあるのですが、トヨタは幅広いレースにワークス参戦。
トヨタ ガズーレーシングとして参戦するレースは、国際的なものに限ってもFIA世界耐久選手権(WEC)、WRC、ダカールラリー、ニュルブルクリンク24時間レースと、トップクラスの高名なものばかり。
もちろん日本国内でもSUPER GTにGRスープラで参戦したり、SUPER FORMULAへのエンジン提供など、数多くのレース活動を行なっています。
その上プライベーター用の車両開発や技術支援なども継続して行っており、まさにトヨタだからこそ成せる大盤振る舞いでしょう。
■ガズーレーシングの歴史:市販車へレースのノウハウをフィードバック
トヨタ GRヤリス プロトタイプ
そして、我々一般ユーザーとして喜ばしいことは、市販車にもガズーレーシングの車両開発・レース活動の経験値が注ぎ込まれていること。
お手軽にスポーツカーの楽しさが味わえるGRスポーツや、GRスープラやGRヤリスといったハードコアモデルまで、豊富なラインナップから選べるトヨタのスポーツ仕様車たちは、近年ますます評判が高まっていますよね。
そんな現行の市販車両について、簡単にではありますがご紹介していきます。
GRの現行車両まとめ! スープラからコペンまで
■【GRブランド】トヨタ GRスープラ
トヨタ GRスープラ
伝説的なトヨタブランドのフラッグシップスポーツカー、スープラが、ついに現代に復活したのは2019年のこと。
新型スープラは、なんとドイツの高級車メーカー「BMW」との共同開発で生まれた車で、その結果BMWの新型Z4とは兄弟関係となるという、驚きの出自をもちますが、そんなウンチクは置いておいてとにかくかっこいい2ドアスポーツクーペが復活してくれたことは素直に喜ばしいことでしょう。
スープラの伝統でもある直列6気筒エンジン搭載モデルと、鼻先の軽量化につながる直列4気筒エンジンモデルが用意されており、直6ターボエンジン搭載のトップグレードとなるRZでは387PSという高出力が与えられています。
登録上トヨタブランドの車ではありますが、GRブランドの専売車種第一号として「GRスープラ」という商品名が与えられており、車体後部にはしっかりとGRエンブレムも装着されています。
また、これまで国内展開のみだったGRブランドを世界に広めるという役目も負っており、グローバルにGRスープラと呼称されます。
今後さらにGRの手が入ったGRMNなどの特別モデルの設定にも期待がかかりますね。
ボディサイズ(全長×全幅×全高) | 4,380mm×1,865mm×1,290/1,295mm | |
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最高出力 | 285kW(387PS)/5,800rpm(RZ) | |
最大トルク | 500N・m(51.0kgf・m)/1,800-5,000rpm(RZ) | |
新車価格帯(消費税抜き) | 4,540,910〜6,648,182円 |
■【GRブランド】トヨタ GRヤリス
トヨタ GRヤリス プロトタイプ
GRブランド専売車種第二弾にして、純トヨタ内製のスポーツカーの復古という大きな役目も担うGRヤリスは、市販車をベースにしたラリーカーを作るのではなく、「ラリーカーのベース車として最適な市販車」を作った話題の車。
ヤリスと名前はついていますし、コロっとしたフォルムやヘッドランプ・テールランプなどを共有していますが、もはや完全に別物の純スポーツカーとなっています。
ベースとなるヤリスには設定のない3ドアボディやルーフ後端が大胆に下げられたフォルムは、空力や軽量化、高剛性化といった走りのための特別仕立て。ルーフにはカーボン、一部ボディパネルにアルミをおごるなど、異例とも思えるこだわりが貫かれています。
また、RZグレード以上に搭載される1.6リッターターボエンジンは、WRCでの使用領域を分析したラリー直結のスポーツエンジンで、272PSというハイパワーを発揮。組み合わされる四輪駆動システム「GR-FOUR」との相乗効果で、小さなボディから想像できない加速性能をもたらします。
より気軽に扱えるRSグレードの1.5リッターエンジンと合わせ、2020年9月の発売以降、これから日本の街中でもどんどん見かける機会が増えていくことでしょう。
ボディサイズ(全長×全幅×全高) | 3,995mm×1,805mm×1,455mm | |
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最高出力 | 200kW(272PS)/6,500rpm(RZ) | |
最大トルク | 370N・m(37.7kgf・m)/3,000-4,600rpm(RZ) | |
新車価格帯(消費税抜き) | 2,409,091〜4,145,455円 |
■【GRスポーツブランド】トヨタ プリウスPHV GRスポーツ
トヨタ プリウスPHV GRスポーツ プロトタイプ
ここからは、既存の市販車にGRのスパイスが加わった「GRスポーツ」グレードの車たちをご紹介します。
ベースとなるプリウスPHVですでに低重心のスポーティなフィーリングが好評を得ていますが、GRスポーツ仕様では剛性アップパーツと空力パーツの装着によってさらなる高みを追求。
フロントで13mmローダウンとなる専用チューニングサスペンションによって、滑らかなハンドリングと優れた乗り心地を両立しています。
ベースのプリウスPHVでは曲線基調が目立っていたエクステリアはシャープなイメージに変更されているほか、インテリアでも特別装備が満載で、見ても乗っても満足できる特別な一台です。
ボディサイズ(全長×全幅×全高) | 4,685mm×1,760mm×1,470mm | |
---|---|---|
最高出力(エンジン+モーター+ジェネレーター) | 72kW(98PS)+53kW(72PS)+23kW(31PS) | |
最大トルク(エンジン+モーター+ジェネレーター) | 142N・m+163N・m+40N・m | |
新車価格帯(消費税抜き) | 3,429,091〜3,870,910円 |
■【GRスポーツブランド】トヨタ プリウスα GRスポーツ
トヨタ プリウスα GRスポーツ プロトタイプ
7人乗り仕様も用意される異色のハイブリッドワゴン、プリウスαにもGRスポーツの設定があり、プリウスPHV同様に剛性アップと空力性能向上を図った専用パーツを装備します。
専用の18インチアルミホイールと組み合わされるベース車から25mmダウンしたサスペンションによって、よりスポーティな乗り心地と15mmのローダウンを両立しており、専用意匠となる外装部品と合わせて、流麗なワゴンながら迫力のあるスタイリングとなっていますね。
GRスポーツの前身であるG‘s(ジーズ)時代から継続してラインナップされているため、外装デザインなどではやや他のGRスポーツ車との方向性の違いも感じられますが、プリウス譲りの環境性能と室内の余裕を兼ね備えた稀有な存在です。
ボディサイズ(全長×全幅×全高) | 4,665mm×1,775mm×1,560mm | |
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最高出力(エンジン+モーター) | 73kW(99PS)+60kW(82PS) | |
最大トルク(エンジン+モーター) | 142N・m(14.5kgf・m)+207N・m(21.1kgf・m) | |
新車価格帯(消費税抜き) | 3,103,000〜3,293,000円 |
■【GRスポーツブランド】トヨタ ノア/ヴォクシー GRスポーツ
トヨタ ノア GRスポーツ プロトタイプ
こちらもG‘s時代からのラインナップとなるノア/ヴォクシー。なんとG‘s立ち上げの第一弾に選ばれたのが先代ノア/ヴォクシーだったこともあって、G‘s初の二世代目モデルでもありました。ファミリー向けミニバンでスポーツブランドの幕開けを飾ったということはかなり驚きですよね。
誰でもスポーツカーを体験してほしい、というトヨタの願いがありありと感じられます。
両側スライドドアで背高ノッポのミニバンなんて走りは適当でしょ、と思いきや、車両下部に追加された剛性パーツは、燃料タンクを避けて左右非対称形状とするなど本格的なこだわりが感じられます。
またサブマフラーの追加によって、よりアクセル操作に応じた軽快な排気音が室内に適度に届くようにチューニングするなど、ドライバーだけでなく同乗者へのアピールも忘れていません。家族みんなでドライブを楽しめる、通なミニバンですね。
ボディサイズ(全長×全幅×全高) | 4,795mm×1,735mm×1,810mm | |
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最高出力 | 112kW(152PS)/6,100rpm | |
最大トルク | 193N・m(19.7kgf・m)/3,800rpm | |
新車価格帯(消費税抜き) | 3,006,000円 |
ボディサイズ(全長×全幅×全高) | 4,795mm×1,735mm×1,810mm | |
---|---|---|
最高出力 | 112kW(152PS)/6,100rpm | |
最大トルク | 193N・m(19.7kgf・m)/3,800rpm | |
新車価格帯(消費税抜き) | 3,006,000円 |
■【GRスポーツブランド】トヨタ C-HR GRスポーツ
トヨタ C-HR GRスポーツ
欧州仕立ての素直なハンドリングと優れた乗り心地がベースモデルですでに定評のあるC-HRにも、マイナーチェンジを期についにGRスポーツが設定されました。
ベース車の素性の良さゆえか、追加された機能パーツは床下中央のフロアセンターブレースのみで、サスペンションチューニングと専用の19インチアルミホイールへの変更と、比較的にシンプルなチューニングメニューとなっているC-HR GRスポーツ。
しかし、GRスポーツらしい内外装の専用意匠は、SUVとして異例なほどスポーティなC-HRにもぴったりマッチしており、特別感のある仕上がりになっていますね。
ボディサイズ(全長×全幅×全高) | 4,390mm×1,795mm×1,550mm | |
---|---|---|
ターボ仕様最高出力 | 85kW(116PS)/5,200-5,600rpm | |
ターボ仕様最大トルク | 185N・m(18.9kgf・m)/1,500-4,000rpm | |
ハイブリッド仕様最高出力(エンジン+モーター) | 72kW(98PS)+53kW(72PS) | |
ハイブリッド仕様最大トルク(エンジン+モーター) | 142N・m+163N・m | |
新車価格帯(消費税抜き) | 2,529,091〜2,859,091円 |
■【GRスポーツブランド】トヨタ アクア GRスポーツ
トヨタ アクア GRスポーツ プロトタイプ
普通車でのGRブランドのエントリー車種となるアクア GRスポーツは、ハイブリッド車ならではの超低燃費を楽しみながら、さらに運転の楽しさまで追求した贅沢な車です。
電動パワーステアリングにまで専用チューニングが施されたGRスポーツは、剛性強化パーツや空力パーツ、スポット溶接打点の追加などで、一層強固なボディ剛性を獲得。
専用チューニングのサスペンションと合わせ、ホットハッチさながらの迫力のエクステリアに負けないハンドリングを実現しています。
ボディサイズ(全長×全幅×全高) | 4,070mm×1,695mm×1,440/1,455mm | |
---|---|---|
最高出力(エンジン+モーター) | 54kW(74PS)+45kW(61PS) | |
最大トルク(エンジン+モーター) | 111N・m(11.3kgf・m)+169N・m(17.2kgf・m) | |
新車価格帯(消費税抜き) | 2,219,000〜2,373,000円 |
■【GRスポーツブランド】ダイハツ コペン GRスポーツ
ダイハツ コペン GRスポーツ
なんと、メーカーの垣根を超えてダイハツ車からも登場してしまったGRスポーツ。2シーターオープンカーという国産車ではめっきり少なくなってしまったスポーティさが魅力のコペンが、GRの手にかかるとさらに完熟のハンドリングマシンへと変貌を遂げました。
GRスポーツの通例通り、パワートレインへのチューニングは行われていないのですが、車体床下に装着される剛性アップ・空力向上パーツの数々によって、切れ味鋭いハンドリングを実現。
ボディサイズの小ささと車両重量の軽さというアドバンテージを活かした、公道上でも違いが分かる、楽しめるスポーツカーとなっています。
ボディサイズ(全長×全幅×全高) | 3,395mm×1,475mm×1,280mm | |
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最高出力 | 47kW(64PS)/6,400rpm | |
最大トルク | 92N・m(9.4kgf・m)/3,200rpm | |
新車価格帯(消費税抜き) | 2,163,637〜2,213,637円 |
GRの頂点は世界最高峰の市販車に?! GRスーパースポーツ
トヨタ ガズーレーシング GRスーパースポーツ プロトタイプ(ル・マン24時間2020 デモラップ走行車)
GRというブランドをトヨタが本気で育てようとしていることが分かるのが、GRスーパースポーツの開発でしょう。
ル・マン24時間など、世界最高峰の耐久レースシリーズ、WEC(世界耐久選手権)に参戦しているプロトタイプレーシングカー「TS050 ハイブリッド」のコンポーネンツを用いて、公道走行および市販可能な文字通りの「スーパースポーツカー」として開発が進められているのが、このGRスーパースポーツ。
WECにワークス参戦しているだけでも今や稀なのに、こんな野心的なプロジェクトを実行できてしまうような企業は、もはや日本ではトヨタくらいのものでしょう。
トヨタ ガズーレーシング GRスーパースポーツ プロトタイプ(ル・マン24時間2020 デモラップ走行車)
発売時期や価格だけでなく、性能の詳細なども未だに発表されていないGRスーパースポーツですが、レーシングカーを起点とすることからも、もはや世界最高峰のパフォーマンスを実現しようとしていることは明白でしょう。
これまで主に欧米のハイエンドスーパーカーメーカーでしか到達しなかった高みを超えられる性能を、コロナ禍など跳ね返して、実現してもらいたいものですね。
エンジン型式 | V型6気筒直噴ツインターボ | |
---|---|---|
エンジン排気量 | 2,400cc | |
パワーユニット最高出力(エンジン+ハイブリッドモーター) | 735kW/1,000PS | |
ハイブリッドシステム | トヨタハイブリッドシステム・レーシング(THS-R) |
まとめ
トヨタ GRヤリス プロトタイプ
トヨタ ガズーレーシングに関して、ざっくりとお伝えしてきました。
レース活動は、ともすれば我々一般ユーザーからは遠い世界にも感じてしまいそうですが、GRやGRスポーツといった市販車にもそのノウハウがフィードバックされており、片鱗を味わうことができるのは、スポーツカーの減っている現代においてとても幸せなことですよね。
ワークス参戦活動、市販車の販売の両方を、これからも末長く続けてもらいたいところです。