一代にしてスーパーカーとしての名声を確立。アウディ R8
アウディ R8 クーペ V10 RWD(海外仕様車)
スーパーカーメーカーと言われて一番に思い浮かぶメーカーは、やはりフェラーリやランボルギーニなど、専業として長年スーパーカーを販売し続けているメーカーたちが強みを持っていますよね。
しかし、そんなマーケットに新規参入し、一代にしてアウディにスーパーカーメーカーという印象を確立した特別な車が「R8」です。
ミッドシップにハイパワーエンジンを搭載し、アウディ車でお馴染みのクワトロシステムで四輪を駆動するR8は、アウディのDNAを強く感じさせるとともに、アウディ傘下にあるランボルギーニとの繋がりも見て取れる、多面的な車。
そんなR8の魅力を、詳しく見ていきましょう。
アウディ R8の魅力 3選!「らしさ」あふれる極上性能
■V10に7速デュアルクラッチ、これぞスーパーカーの走行性能
アウディ R8 スパイダー(海外仕様車)
現行型R8は、世界中で活躍するレーシングカーである「R8 LMS」と約50%ものパーツを共通とする、5.2リッター V型10気筒ガソリンエンジンを搭載。カリッカリのスポーツエンジンとなる同ユニットは、今や620PSを発揮するという途方もないパワフルさが魅力的です。
また組み合わされるトランスミッションは、7速のSトロニック デュアルクラッチトランスミッション。クワトロの圧倒的なトラクション性能と相まって、0-100km/h加速はわずか3.1秒、最高速度は331km/hにも達する、圧倒的なパフォーマンスがR8の持ち味です。
■似たもののない独特のエクステリア、洗練のインテリア
アウディ R8 クーペ(海外仕様車)
R8は、ミッドエンジンスーパーカーという成り立ちでありながら、長年繰り返されて完成されてきた定型のスタイリングを追わず独自の魅力を備えています。
フロントエンド部に厚みのあるR8のフォルムは、ロー&ワイドさを感じさせながら四輪駆動の高いトラクション性能を予感させる、独特のデザインですよね。
またスーパーカーとは、スパルタンなピュアスポーツカーを凌駕する動力性能を持ちつつも、洗練された高級感のあるインテリアが必須なジャンル。R8のインテリアも、高級車メーカーとして長年の歴史を持つアウディならではの上質なインテリアが実現されています。
■意外?!室内空間もトランクもしっかり、実用性バッチリ
アウディ R8 クーペ V10 RWD(海外仕様車) インテリア
意外に思われるかもしれませんが、乗用車作りに長年の経験のあるアウディの車だけに、R8は普段使いも楽々こなせるほどの実用性の高さも特徴の一つ。
室内は頭上空間も含めて余裕がありますし、サイドシルが意外と低めに抑えられており、無理な体勢にならずに乗り降りが可能。フロントに位置するトランクスペースは広さも深さも十分で、お二人でのドライブ旅行にもしっかり対応できる点は嬉しいところですね。
また、アウディマグネティックライドによる乗り心地は、普段は快適そのものでありつつ、状況に応じてスーパーカーの走りに変貌するといういいとこどりが嬉しいところです。
アウディ R8のスペック
ボディサイズ(全長×全幅×全高) | 4,430mm×1,940mm×1,240mm | |
---|---|---|
ホイールベース | 2,650mm | |
最大乗車定員 | 2名 | |
車両重量 | 1,670kg | |
燃費 | - | |
エンジン種類 | V型10気筒ガソリン 5,204cc | |
エンジン最高出力 | 456kW(620PS)/8,000rpm | |
エンジン最大トルク | 580N・m(59.1kg・m)/6,600rpm | |
駆動方式 | 四輪駆動(4WD) | |
トランスミッション | 7速DCT | |
新車価格 | 30,310,000円(消費税込) |
R8の歴史を辿ってみた ミッドシップスーパーカーは長年の悲願!
■【前日譚】アウディ ローゼマイヤー(2000年)
アウディ ローゼマイヤー(パリモーターショー2000 出展車両)
遡ること1991年に発表されたクワトロ スパイダー コンセプトや、アヴスクワトロ コンセプトで初めて示された「ミッドシップスーパーカーを作る」というアウディの野望。
アルミスペースフレームなどの技術は市販乗用車にも展開されはしましたが、なかなか本体となるスーパーカーは実現することなく年月が過ぎます。野望は潰えたものと思われていた2000年、パリモーターショーで登場したコンセプトカー「ローゼマイヤー」は、プロジェクトがまだ進行中であることをありありと世界中に示しました。
ブガッティやベントレーなど、フォルクスワーゲングループに属するハイエンドメーカーとも共有されるミッドエンジンプラットフォームを利用するとされたローゼマイヤーは、アウディの前身のひとつ「アウトウニオン」が戦前にレースシーンを席巻したレーシングカーを彷彿とさせる、スチームパンク的なスタイリングが特徴的。
8.0リッター W型16気筒エンジン搭載と想定スペックも飛び抜けたもので、落ち着いた乗用車専業のイメージだったアウディのイメージを大きく向上させ、世界中で話題をさらいました。
■【スタイルが定まる】アウディ ル・マン クワトロ(2003年)
アウディ ル・マン クワトロ(フランクフルトモーターショー2003 出展車両)
ローゼマイヤーの衝撃的なデビューからさらに数年後、一気に現実味を増して登場したのが「ル・マン クワトロ」コンセプト。現代の目線で振り返れば、すでにR8の特徴的なデザインはこの頃から確立していたことがわかりますね。
アルミスペースフレームとカーボンファイバー素材をふんだんに用いた軽量ボディに、直噴技術を用いたV型10気筒ターボエンジン、デジタルコックピットディスプレイやLEDヘッドライトといった、時代の最先端を行く技術のオンパレードとなっていた野心的なコンセプトカーは、何よりもその美しいデザインが特徴的ですよね。
ミッドシップスーパーカーとなると定型的なデザインになりがちと思いきや、アウディらしい精緻さを感じさせる滑らかなフォルムや、ドア後方の「サイドブレード」などの独特な要素は、アウディがスーパーカー開発にかける勢いの凄さを感じさせるものでした。
■【ウィル・スミスも乗った!】アウディ RSQ(2004年)
アウディ RSQ(ニューヨークモーターショー2004 出展車両)
ル・マン クワトロのデビューから1年後、なんとSF大作映画「アイ, ロボット」のためだけに製作したという「RSQ スポーツクーペ」からも、R8のデザインを感じることができます。
わずか10週間で製作されたとされるRSQは、劇中の2035年のアメリカにおいてウィル・スミス演じる主人公が使用する車。完全自動運転を実現していることが劇中では示されていましたが、いざというときは手動での運転も可能とされており、スポーツカーらしさも感じさせるところでした。
相当に滑らかにデフォルメされてはいますが、フォルムはまごうことなきR8のもの。市販型R8の登場までまだ数年を残してはいましたが、人々の脳裏にその未来的な印象が焼きついたことでしょう。
■【伝説の始まり】アウディ R8(初代 2006〜2016年)
アウディ R8 クーペ(2013年型)
アウディの野望がやっと結実したのはなんと2006年。アウディほどの大企業とはいえ、思いついてからすぐに市販!とできるほどスーパーカー開発は容易くなかったことが窺い知れますね。
ミッドシップ・四輪駆動スーパーカーというコンセプト自体は、同じくフォルクスワーゲングループに属し、アウディ傘下のランボルギーニから「ガヤルド」として先行して発売されてしまいますが、両車の関係が密接なことは公然の秘密であったと言えるでしょう。
アウディ R8 e-tron クワトロ(2010年型)
デビュー当初は、当時のRS4に搭載されていた4.2リッター V型8気筒ガソリンエンジンをドライサンプ化して、6速のゲート式マニュアルトランスミッションと組み合わせて搭載していましたが、のちにランボルギーニ ガヤルドに用いられていた5.2リッター V型10気筒エンジンを追加。
このエンジンは、元を辿ればアウディのS6やS8に搭載されていたV型10気筒エンジンをベースとしており、アウディとしても使いやすかったことでしょう。
その他にもV型12気筒ディーゼルツインターボエンジンを搭載したR8 TDI ル・マンなどのコンセプトカーや、限定的な販売に留まったものの電動スーパーカーの先鞭をつけたR8 e-tronなど、バリエーション展開も豊富でした。
アウディ R8(初代)のスペック
ボディサイズ(全長×全幅×全高) | 4,435mm×1,905mm×1,250mm | |
---|---|---|
ホイールベース | 2,650mm | |
最大乗車定員 | 2名 | |
車両重量 | - | |
燃費 | - | |
エンジン種類 | V型8気筒ガソリン 4,163cc | |
エンジン最高出力 | 309kW(420PS)/7,800rpm | |
エンジン最大トルク | 430N・m(43.8kg・m)/4,500-6,000rpm | |
駆動方式 | 四輪駆動(4WD) | |
トランスミッション | 6速MT | |
新車価格 | 16,170,000円(消費税込) |
■【番外編】アイアンマンはR8がお好き? MCUに続々登場!
トニー・スタークの愛車、アウディ R8 クーペ
先ほどはアイ, ロボットでの活躍をご紹介しましたが、その他にもR8は大作映画に続々登場しています。顕著な例では、「アイアンマン」シリーズの主人公、トニー・スタークが愛車として用いていることが有名でしょう。
アイアンマンシリーズでは1作目と2作目でR8が登場、次いで公開された「ジ・アベンジャーズ」ではアキュラNSXに浮気していますが、3作目ではR8 e-tronへ乗り換えるなど、アウディがお好きな様子。
スターに囲まれた銀幕の中でも輝くR8は、ハイエンドカーにも負けない存在感がありますね。
R8は積極的なレース活動も話題!世界トップカテゴリーで大活躍
アウディ R8 LMS(2019年仕様)
初代と2代目ともに、R8の特徴的な部分が、積極的なレース参戦を行っていること。スーパーカーとはいえスポーツカーたるもの、レース参戦で活躍することでその高性能を知らしめることができれば、イメージアップとなりますよね。
特に印象的なのがGT3カテゴリーに属するR8 LMSの世界中での大活躍でしょう。日本でもSUPER GTのGT300クラスにプライベーター参戦しているなどその姿を見ることができますが、市販型のR8に近いフォルムでありつつもレーシングカーの迫力を備えたR8 LMSは素直にカッコいい仕上がりですよね。
アウディ R8 LMS(Audi Team Hitotsuyama SUPER GT GT300クラス参戦車両)
また、より身近なカスタマーレーシング向けの車両として、GT4クラス向けのR8 LMS GT4や、R8 LMS GT2を開発・市販しているなど、様々なカテゴリーで活躍するR8が見られる点は、ブランドイメージの向上に非常に寄与していることでしょう。
2017/2018シーズンからは電動フォーミュラカーのトップカテゴリーレース「フォーミュラE」にワークス参戦しているなど、モータースポーツの世界でも電動化を急速に進めるアウディ。内燃機関レースへのサポートがいつまで続くのは不透明ではありますが、現在の手厚いバックアップ体制をできるだけ長く続けてもらいたいものです。
アウディ R8の最新情報まとめ
■特別限定車「グリーンヘル」登場!ニュル24時間での活躍を記念
アウディ R8 グリーンヘル(右 海外仕様車)
2020年9月に発表された特別限定車「R8 グリーンヘル」は、R8のレース仕様「R8 LMS」のニュルブルクリンク24時間耐久レースでの活躍を記念したものです。
ニュルブルクリンクは、ドイツ南部に位置する世界的に有名なサーキットで、山間を利用した高低差のある過酷なコースが特徴的なため、「グリーンヘル」と愛称が付けられています。
R8 LMSは、2012年以来5回の総合優勝を達成しているなど、ニュルブルクリンク24時間耐久レースとも縁の深いレーシングカー。そのため、当地での活躍を記念した限定車の名前として「グリーンヘル」と名付けたということですね。
セラミック製ブレーキなどの特別装備も見られますが、特徴的なのは渋めの「ティオマングリーン」の外装色でしょう。世界限定50台と手に入れることも「過酷」ではありますが、その点も含めて特別なR8となっています。
■2019年の改良内容も復習!さらにアグレッシブなスタイルに
アウディ R8 クーペ(海外仕様車)
現行モデルのR8は2015年デビューですが、現在は2019年4月のニューヨークモーターショーで発表された改良モデルが販売されています。
こちらはデビュー以来初の大型改良で、内外装の意匠変更と、エンジンのパワーアップが主な改良点。特にエクステリアは、幾何学的でやや落ち着いた印象もあったフロントエンドがレーシングカーを思わせるダイナミックなデザインに変更された点が特徴的です。
また、国内には上級グレードとなる「V10パフォーマンス クワトロ」グレードのみが導入されていますが、こちらは従来から10hp向上した620hpのハイパワーと、2.0kg・m引き上げられた59.1kg・mの高トルクによって、0-100km/h加速でクーペ 3.1秒、スパイダー3.2秒、最高速度はそれぞれ331km/hと329km/hの高性能となっています。
アウディ R8、新車・中古車価格まとめ
アウディ R8 クーペ(海外仕様車) インテリア
2020年11月現在のアウディ R8の税込新車価格は非常にシンプルになっており、クーペがV10 パフォーマンス 5.2FSI クワトロ Sトロニックで3,031万円、スパイダーもV10 パフォーマンス 5.2FSI クワトロ Sトロニックで3,177万円と、それぞれ1グレードのみが販売されています。
さすがハイエンドなスーパーカーだけあって、オプションリストが豊富なため、自分仕様に染め上げていくとさらに高額な価格となってしまうことは覚悟が必要かもしれません。
といっても、アウディ・エクスクルーシブ仕様のマットカラーオプションは106万円と驚きの価格となってはいますが、それ以外ではバング&オルフセンサウンドシステムが28万円など、アウディの乗用車系と大きく変わらない程度の価格に抑えられているのは良心的ですね。
参考までに、ランボルギーニ ウラカンの新車価格は、ウラカンEVOが約3,282.8万円、ウラカンEVOスパイダーが約3,611.0万円となっており、R8よりもやや高価に設定されています。
しかし、ウラカンEVOにはRWDモデルも設定されており、そちらはクーペで約2,654.0万円、スパイダーで約2919.4万円と、なんと600万円以上も安い価格が設定されているなどもはやバーゲン状態。見比べると、R8は若干割高感も感じてしまうところかもしれません。
アウディ R8 V10 ディセニアム(海外仕様車) エンジンルーム
2020年11月現在の中古車市場では、R8が62台、R8スパイダーが20台の在庫が確認できます。さすがにスーパーカーだけあって、在庫台数は豊富とは言えませんね。
ちなみに初代R8の姉妹車であるランボルギーニ ガヤルドは70台(スパイダー含む)、2代目R8の姉妹車であるウラカンは90台(スパイダー含む)の在庫が確認でき、両方合わせてランボルギーニの方が在庫台数が豊富という、興味深い状況になっています。
R8の中古車平均価格は現行モデルが2030.7万円で初代モデルが856.8万円、R8スパイダーでは現行モデルが1864.0万円で初代モデルが1112.9万円となっており、さすがに現行モデルはまだまだ高めの値段で推移していますね。
並べてしまうと初代モデルの安さが際立ってしまいますが、初代モデルは現行型に比べて新車価格自体も低めだったことも考慮が必要。モデルを通して、特別に値落ちしていないと見るのが適切でしょう。
具体的には、たとえば現行型のクーペでは最安で1500万円程度から在庫が確認できます。こちらは2019年のフェイスリフト前のモデルとなっていますが、まだまだデビューから数年と古びない印象ですので、新車価格を考えればかなりリーズナブルな印象かもしれませんね。
アウディ R8 クーペ(海外仕様車)
まとめ
アウディの誇るスーパーカー「R8」についてご紹介してきました。高級車としても独特のこだわりが詰まった車作りが印象的なアウディの車だけに、ミッドシップスーパーカーであっても独自の魅力に溢れていることがお分かりいただけたでしょうか。
隠されたラテンの血統も含めて、非常にユニークな仕上がりはまさにR8だけの世界でしょう。
自然吸気の大排気量V型10気筒という、より一層環境規制の厳しくなっていくであろう今後はもはや生まれようのなさそうな宝石のようなエンジンを味わうことができるだけでも、R8を手に入れる価値はありそうです。