運転免許を返納。でも、免許証代わりの身分証明書がない!
運転免許証
運転免許の返納が急激に増えています。
警察庁がまとめた運転免許統計によると2019年に運転免許証を返納したのは前年比42.7%増の60万1022件となり、制度開始以来、過去最多でした。
このうち、75歳以上の後期高齢者は35万0428人。高齢ドライバーによる悲惨な交通事故が相次ぎ、大きくマスコミに取り上げられる事で、免許を返納する動きが加速しているようです。
しかし、運転免許証を返納してしまうと、クルマの運転が出来なくなる事はもちろん、もう一つ、困った問題が発生してしまいます。それは、「身分証明書がなくなる」という大問題です。
例えば、読者の皆さんが銀行に行って、新しく銀行口座を開設しようとした場合はどうでしょう。申込書に住所氏名等を記入し、窓口に提出すると「身分証明書を掲示して下さい」と要求されます。この「身分証明書」が問題なのです。
少し前までは、身分証明書は「健康保険、国民健康保険または船員保険等の被保険者証」でも大丈夫でした。
しかし、犯罪集団やテロリスト等によるマネー・ローンダリングを防止する観点から、「犯罪による収益の移転防止に関する法律(通称:犯罪収益移転防止法)」の「犯罪による収益の移転防止に関する法律施行規則」が2020年4月1日に改定され、原則、身分証明書は「写真付き」のものが求められる事になったのです。
しかし、「写真付きの身分証明書」は、それほど種類がありません。運転免許証を除くと、
①旅券(パスポート)
②個人番号カード(マイナンバーカード)
③官公庁が顔写真を貼付した各種福祉手帳(身体障害者手帳など)
などになってしまいます。
皆さん、パスポートを毎日持ち歩きますか?パスポートってかさばるから、それも大変ですよね。写真付きのマイナンバーカードは全然普及していません。読者の皆さんはお持ちですか?
結局、日本国民の大多数が保有している写真付きの身分証明書は運転免許証しかない、というのが実態です。
では、運転免許証を返納してしまったら、どうやって自分の身分を証明すればいいのでしょうか?その問題を解決するために制度化されたのが、「運転経歴証明書」の交付制度です。
運転免許証の代わりに運転経歴証明書を交付!身分証明書として有効!
新しい身分証明書!
申請による運転免許の取消し(自主返納制度)は、平成10年4月からスタートしました。来たるべき高齢化社会を予見し、運転免許制度の観点から環境の変化に対応するための制度でした。
そして、運転経歴証明書の交付は、平成14年6月からスタートしました。「自主返納を行うと身分証明書がなくなってしまう」等の懸念に対応するための制度としての導入でした。
その後、平成24年4月からは、犯収法施行規則改正により、銀行等において、 本人確認書類として使用可能になり、運転経歴証明書の身分証明書としての有効性が一気に高まりました。
さらに、令和元年12月からは、道路交通法改正により、運転免許の失効者にも運転経歴証明書の交付申請が可能になり、かつて運転免許証を持っていた人の多くが、運転経歴証明書を保有できるようになりました。
そのような制度面での環境整備と、運転免許証返納車の急増から、2019年の運転経歴証明書の交付件数は、前年比44.7%増の51万9188件と大幅に増加しました。
運転経歴証明書、どこでもらえるの?
鮫洲運転免許試験場
身分証明書として便利に活用できる運転経歴証明書は、どこに行けば入手できるのでしょうか。
結論から言えば、各都道府県の、
1)運転免許試験場
2)運転免許更新センター
3)警察署
となっています。
では、実際にどうすればいいのでしょうか。
■東京都の場合
東京都で、最も一般的と思われる、「運転免許証の自主返納と同時に運転経歴証明書を入手する場合」で見てみましょう。
まずは、運転免許試験場か、運転免許更新センター、あるいは警察署に行きます。
東京都の場合、受付時間は
運転免許試験場
・平日の午前8時30分から午後4時00分まで
・日曜の午前8時30分から正午、午後1時00分から午後4時00分まで
・土曜、祝休日、年末年始(12月29日から1月3日まで)は業務なし
運転免許更新センター・警察署
・平日の午前8時30分から午後5時15分まで
・土曜、日曜、祝休日、年末年始(12月29日から1月3日まで)は業務なし
上記のようになっています。
運転免許試験場に行く最大のメリットは、運転経歴証明書の「即日交付」をしてもらえる事です。また、運転経歴証明書に掲示する写真も、運転免許試験場で撮ってもらえます。
一方、運転免許更新センター・警察署は、比較的、自宅や職場の近くにある、というメリットがあります。ただし、運転経歴証明書に掲示する写真は、「撮影した写真を持参する」必要があります。
また、運転経歴証明書を受け取るまで、2週間程度の時間がかかります。小笠原諸島のような島部警察署では、さらに時間がかかって、4週間程度かかるとの事です。
■何が必要?
運転免許試験場の場合、返納する運転免許証。運転免許更新センター・警察署の場合、返納する運転免許証と運転経歴証明書に掲示する写真が必要となります。
手数料は、運転免許試験場、運転免許更新センター・警察署共に、1,100円となっています。
留意事項としては、
紛失等で運転免許証をお持ちでない方は、運転免許試験場のみの受付になります。この場合、住所、氏名、生年月日が確認できるもの(住民票の写し(マイナンバー(個人番号)が記載されていないもの。コピーは不可)、マイナンバーカード(個人番号カード)、健康保険証、旅券、在留カード等)もお持ちください。
返納される運転免許証の住所が現住所と異なる場合は、現住所が分かるものもお持ちください。(住民票の写し(マイナンバー(個人番号)が記載されていないもの。コピーは不可)、マイナンバーカード(個人番号カード)、健康保険証、旅券、在留カード、消印付郵便物等)
運転免許更新センター、警察署で申請して、運転経歴証明書の受領を郵送で希望される方は、レターパックライト(青色・370円)を郵便局で事前に購入し、申請時にお持ちください。
となっています。
いずれにせよ、運転経歴証明書を入手する手間は、それほど大変なものではない、と言えるでしょう。
運転経歴証明書の入手方法については、各都道府県で詳細が違いますので、各都道府県警察のホームページで確認したり、運転免許証試験場にお問い合わせする等、自身でのご確認をお願いいたします。
免許返納を後押し!運転経歴証明書の掲示で様々なメリットが!
高齢ドライバーの免許返納を後押しするために、官民の協力のもと、運転経歴証明書の掲示で様々な特典が得られる制度あり、年々、特典の充実度が向上しています。
例えば、警視庁管轄の東京都の場合、ほんの一部分ですが、
①物流:日本通運株式会社首都圏支店 → 引越の通常料金の10パーセント割引
②銀行:巣鴨信用金庫 → スーパー定期預金の金利優遇:店頭金利+0.05パーセント
③ホテル:帝国ホテル東京 → 帝国ホテル直営レストラン・バーラウンジにて10パーセント割引
④デパート・スーパー:丸正チェーン加盟店 → 500円分のクーポン進呈
⑤趣味・娯楽等:はとバス → 定期観光(A・B・Cではじまるコース)の料金を5パーセント割引
⑥美容・理容:ヴィサージュ クリエーション → 訪問美容 施術料金20パーセント割引
⑦自動車学校:王子自動車学校 → 新規免許取得者をご紹介の方に3,000円分のクオカードプレゼント、紹介でご入校の方に割引あり
⑧墓石・仏壇等:デザイン仏壇コーディアル → 仏壇・仏具等10パーセント割引
⑨商店街:巣鴨地蔵通り商店街振興組合 → お買い物をされたお客様に記念品プレゼント(1回限り)
⑩食品等:ストロベリーコーンズ → 1,500円以上のご注文の方にミックスパック1箱プレゼント
⑪人形:人形の久月 浅草橋総本店 → お買い物されたお客様に粗品プレゼント
⑫交通:一般社団法人東京都個人タクシー協会 → タクシー乗車料金10パーセント割引
⑬自転車・カート等:株式会社スズキ自販東京 → セニアカー購入時ボディカバー1個プレゼント
⑭服飾等:紳士服コナカ → 店内全品5パーセント割引
⑮メガネ等:メガネドラッグ → メガネ・サングラス(税込11,000円以上)10パーセント割引
⑯補聴器:東日本リオン → 補聴器10パーセント割引(修理・部品・電池を除く)
⑰家電等:ノジマ → ケータイ・スマホ店頭サービス通常3,240円が半額
⑱法律関係:岡高志行政書士事務所 → 遺言書作成・相続についての初回相談無料(訪問対応可能)
⑲医療:平河町鍼灸治療院 → 初回半額
⑳車買取:ラビット世田谷代田店 → お車買取又は販売でご成約された方に5,000円商品券プレゼント
㉑生活:オリックスレンタカー → レンタカー基本料金から20パーセント割引
等々、様々なメリットがあります。
詳細は、警視庁の特典紹介のホームページのリンクを参照いただければと思います。
また、東京の警視庁だけでなく、全国の都道府県警察でも同じような特典制度の充実を図っておりますので、お住いの地域の都道府県警察のホームページをご参照いただければと思います。
まとめ
クルマ好きな人でも、いつかは訪れる運転免許返納の時期。
しかし、運転経歴証明書制度の導入によって、運転免許証を返納しても身分証明等で不便な思いをする事は無くなりました。
また、官民を挙げて、運転免許返納を後押しする仕組みがどんどん整備されています。
これを機会に、運転免許証の返納と、運転経歴証明書について考えてみてはいかがでしょうか。