知っておきたい重要部品!サーモスタットとは?
サーモスタット
自動車のエンジンは、内部で爆発を起こして動力を発生させてくれる、重要な部品です。しかし、十分に暖機が済んだ状態のエンジンは、自動車の近くに立つだけでも熱気を感じるほどに高温になりますよね。
そのままエンジンが回り続けると温度が上がりすぎてしまうので、エンジンを冷却することが必要になります。冷却水を用いてエンジンを冷却する「水冷エンジン」において、冷却水の温度を調節することを担当している部品こそが、「サーモスタット」です。
サーモスタットはエンジンの中にある水温調整を担当しており、エンジンを最適な温度帯に保てるように、冷却水の流路を切り替えて温度を調整しています。
サーモスタットのはたらきによって、エンジンが高温になりすぎる「オーバーヒート」を防いでいるだけでなく、エンジンの燃焼効率を向上させることにも貢献しています。
自動車が快調に走るためには、エンジンとラジエーターとサーモスタットの三角関係は非常に重要な位置づけであり、冷却水がスムーズに流れることは、快適なドライブを支える非常に重要なファクターとなっています。
■知れば単純!サーモスタットの仕組み
サーモスタットの仕組みは?
サーモスタットの主流はバルブ式のもので、基本的な状態はバルブが閉まっている状態で、冷却水温度が上昇すると開いている状態になります。バルブが開いているときは、エンジン内部の温度が高い状態であることを意味しています。
自動車用のサーモスタットでポピュラーなのは、サーモスタット内部に入っている蝋(ろう)でバルブの開け閉めを制御するタイプ。冷却水の温度が低い時は蝋は固体ですが、温度が上がってくると蝋が溶けはじめて体積が膨張し、バルブを開いていきます。
この仕組みは、電源が全く必要ない完全な機械制御で低コストな上、激しい温度変化の繰り返しにも充分に耐えることのできる耐久性と信頼性があるので、広く用いられています。
冷却水回路には、始動直後などでエンジン温度を高めたい時用にエンジンから出てきた冷却水がそのままエンジンに戻る回路と、温度が高くなった冷却水を冷やすためにラジエーターを通す回路があり、サーモスタットはバルブの開閉によって、その回路の切り替えを行なっています。
近年では、より高精度に冷却水制御ができる電子制御式のサーモスタットなども広がりをみせています。年々厳しくなる排ガス規制や燃費規制に対応するために、より緻密に冷却水の流れを制御することが求められているようです。
■サーモスタットはエアコンやこたつでも活躍
車に詳しくない方であっても、サーモスタットという名前を聞いたことがある方もいらっしゃるのでは。サーモスタットの「温度の切り替えによって作動して、温度を調整する」というはたらきは、自動車だけでなく、ご家庭の家電などでも利用されているかも知れません。
わかりやすい例では、こたつがあげられるでしょう。スイッチを入れてこたつがどんどん温まってくると、小さく「カチッ」と音がして、ヒーターが切れてしまうことがあります。
これは故障しているのではなく、サーモスタットのはたらきで、こたつ内部が高温になりすぎないように調整してくれているというわけなのです。
【必見】サーモスタットが故障したら車はどうなるの?
車に限らず、どんなものでも故障は避けることができません。サーモスタットも、基本的に信頼性の高い部品ではあるものの、故障してしまうことや、長期間使い続けたものでは動きが悪くなってしまう場合もあるでしょう。
サーモスタットが調整を担っている冷却水は、水冷エンジンが動く際には欠かせない重要なものなので、サーモスタットが故障してしまうと、ヒーターが効きにくかったり燃費が悪化したりといった軽度な故障で済む場合もあれば、エンジンが高温になりすぎてダメになってしまったり、最悪のケースでは車両火災などにつながることも考えられます。
サーモスタット本体は目視では確認できないので、サーモスタットが故障しているかもしれない予兆を知っておくことは重要です。
■こんな症状があったらサーモスタットが故障しているかも
水温が上がりにくい、冬場にヒーターが効きにくい
サーモスタットのバルブが開いたままになってしまう故障が発生すると、エンジンが冷却され過ぎてしまい、「オーバークール」と呼ばれる状態になります。
エンジン始動直後など、エンジンを暖機したいような場面でも冷却水がラジエーターを通って冷やされてしまうので、エンジンが動くのに最適な温度帯に達するまでに時間がかかってしまう状態です。
この状態だと、なかなかエンジンの暖機が終了しない、ヒーターが効きにくい、燃費が悪くなるなどの症状が出る場合があります。冬場など気温が低めの時に、症状が出やすくなります。
水温が高すぎる、オーバーヒート警告灯が点灯する
反対に、サーモスタットのバルブが閉まったままになってしまう故障が発生すると、エンジンの温度が高くなりすぎる「オーバーヒート」となってしまい、エンジンそのものが故障する恐れがあります。オーバーヒートを示す警告灯が点灯したり、水温計が付いている車では針が通常以上に高温側を指したりすることがわかりやすい症状です。
サーモスタットが閉まったままになってしまうと、暖機運転が終わって冷却水温度が高まってきても冷却水をラジエーターで冷却することができず、冷却水もエンジンも温度がどんどん高まっていく一方になってしまいます。
あまりにエンジンの温度が高まると、エンジンの出力が低下してきたり、オイルによる潤滑が間に合わなくなって焼きつきが発生してしまったり、部品が熱で変形してしまうなどのダメージを受けてしまいます。これらのダメージは、エンジンが冷えただけでは直らないものもあり、場合によっては部品やエンジン本体の交換などの修理対応が必要になることも。
さらに、最悪の場合は車両火災につながってしまうこともあるので、オーバーヒート状態で車を走行させ続けるのは大変に危険な行為となります。
■サーモスタットの寿命はどのくらい?
サーモスタットを普通に使うことを前提に考えると、具体的に寿命が定まっているものではありません。
しかし、故障してから交換するのはは当然ですが、故障の状況によってはサーモスタット以外の部分にもダメージが及びかねませんので、長く乗りたい場合には、壊れていなくても予防的に交換することも考えておくべきでしょう。
目安としては、10年間・10万キロ程度で予防的な交換をするケースが多いようです。
エンジン内部のタイミングベルトの寿命もほぼ同じくらいの寿命であることも覚えておくと良いでしょう。
サーモスタット、交換費用はどれくらい?自分で交換できる?
サーモスタットの交換方法も知っておこう
■サーモスタットの交換費用、目安はこのくらい
サーモスタット自体の価格はそう高いものではなく、車種にもよりますが2,000円から3,000円程度となっています。
そのほか、交換の際には冷却水を抜く必要があるので、新たに補充する冷却水や、接続部分のガスケットを交換したりなども必要になるものの、部品代の合計としては5,000〜1万円程度に収まる場合が多いでしょう。
しかし、サーモスタットの交換は、場合によってはエンジンルーム内でさまざまな部品を取り外しする必要があったりなど、手間がかかる作業でもあります。基本的な工賃として5,000円程度、作業難易度の高い車種ではもう少しかかり、全体の支払い額としては1〜2万円程度かかる場合が多いようです。
電子制御式のサーモスタットや、部品価格・作業工賃が高めな輸入車などでは、支払い総額がもう少し嵩んでしまう場合もあるでしょう。
サーモスタットの交換費用目安
サーモスタット本体 | 2,000〜3,000円程度 |
補充する冷却水や接続部分のガスケットの交換 | 2,000〜4,000円程度 |
工賃相場 | 5,000円程度 |
大体の相場 | 10,000〜15,000円程度 |
■【DIY】サーモスタットの交換方法
先ほども作業の手間がかかる場合があるとご紹介しましたが、腕に自信があればご自分で作業することも可能です。基本的なサーモスタット交換の作業手順をご紹介しますが、全ての車種で適用できるものではないことをご承知おきください。
冷却水は水冷エンジンの適切な作動に不可欠な要素ですので、不適切な作業をしてしまうと、サーモスタットだけでなくエンジン本体などにより重大な故障を引き起こしてしまう可能性もあります。作業の際は慎重に、十分に気をつけながら行なってくださいね。
冷却水を抜く
冷却水用のドレンコックなどから、冷却水を抜きます。
注意しておきたい部分として、冷却水は「ロングライフクーラント」とも呼ばれ、主成分が「第一種指定化学物質」に指定されるエチレングリコールなどなので、下水などに流してはいけません。きちんと回収しておきましょう。整備工場や自動車用品店などで引き取ってもらえる場合もありますので確認をとっておくなど、作業を始める前に処理方法を決めておくとよいでしょう。
ラジエーターホースなどを外す
冷却水の流れとして、サーモスタットがエンジンよりも上流側に付いている場合や、下流側に付いている場合が車種によって異なるので、どちら側を取り外せばよいのか確認して、ラジエーターホースを取り外しましょう。車種によっては、周辺の部品も取り外しが必要な場合があります。
部品によって、取り付けられているねじなどが異なりますので、どのねじがどの部分に付いていたものなのか、後から分かるようにしておきましょう。
デジカメやスマホのカメラ機能を使ってエンジン内部を撮影し、どの部分の部品がどのように取り付けられているのかを前もって記録しておくのも良いでしょう。
サーモスタットの交換
古いサーモスタットを取り出してから、新しいサーモスタットに交換します。古いサーモスタットを取り外す前に、取り付け方向などを確認しておきましょう。
取り付けられているパッキンなどは、一見ダメージがなく再利用が可能そうに見えたとしても、新品交換するべきものです。周辺に傷をつけないように、一緒に取り外しておきましょう。
取り外した部品を取り付ける
新しいサーモスタットを取り付ける際、ねじを締め付けていきますが、締め付け具合が均一でないと、反動で別の所にゆるみが生じることもあるので、締付けに関しては均一の力で固定しておきましょう。
その後、パッキンやラジエーターホースなど、取り外した部品類を元通りに取り付けていきましょう。ねじの種類などを間違えないように気をつけて取り付けていきましょう。
取り付け作業が終わっても部品が余っていると大問題ですので、取り付け忘れなどがないよう、慎重に作業することが必要です。
冷却水を補充、エア抜きをして完了
部品の取り付けが終わったら、車両の冷却水リザーバータンクに冷却水を入れていきましょう。いっぱい近くまで入れておき、ラジエーターキャップを開けた状態でしばらく暖機してラジエーターまで冷却水が回りはじめてから、再度規定の量までリザーバータンクに冷却水を加えます。
冷却水関連の作業をした際には、冷却水回路に空気が噛んでしまい、流れが悪くなってしまうなどの不具合につながります。車種によっても手順は異なりますが、キャップを外したままアイドリングを続けるなどして、エア抜きを行いましょう。
まとめ
愛車についてもっと知ろう
サーモスタットはエンジンの温度調整をするために重要な役割を果たし、車を守ってくれる大事なパーツです。
まさに縁の下の力持ちであり、安全かつ快適なドライブを提供する黒子的存在で非常に頼もしいものなんですよ!
よくある質問
サーモスタットって何をする部品?
自動車のエンジンは非常に高温になるものなので、冷却水を内部に通すなど、冷却する必要があります。しかし、冷やし過ぎもエンジンにはよくありません。そこで、エンジンをちょうどいい温度に保てるよう、冷却水の流れを調整している部品が「サーモスタット」なのです。
サーモスタットはどうやって動いてるの?
自動車用のサーモスタットにも複数種類がありますが、ポピュラーなのは内部に蝋(ろう)が入っているタイプ。冷却水が冷えている間は蝋が固まっていますが、温度が上昇すると蝋が溶けてサーモスタットのバルブが開かれ、冷却水がラジエーターに回るようになります。
サーモスタットを交換するのは難しいの?
車によって、サーモスタットを交換するために取り外す必要のある部品が多いか少ないか、作業スペースが広いか狭いかなどの違いがあるものの、サーモスタットの交換作業自体は意外とシンプルといえそう。しかし、作業の不手際で冷却水がうまく回らなくなると、エンジンの故障や車両火災などにもつながりかねません。不安な方は、プロの整備士さんにお願いするべきでしょう。