自動車のDPFとは?
アペックスDPF
そもそもDPFとは、ディーゼルエンジンの排気ガスに含まれる粒子状物質(主にスス)を除去するためのフィルターで、現在発売されているディーゼルエンジン搭載の乗用車、バス、トラック等にすべて搭載されています。
また、トラクターなどの農業機器や鉄道のディーゼル機関車(ただし、首都圏を走行する気動車のみ)にも装着されています。
マフラーに装備されており、粒子状物質をキャッチする役割を果たしています。
日本に導入されたのは2003年で、首都圏の一部自治体で制定された排ガス規制条例に基づき装備されたことがきっかけで、その後自動車排出ガス規制の厳格化により浄化装置の着用が義務化されています。
DPFは何のために必要?
ジョンソン・マッセイ・ジャパン・インク CRT(連続再生式トラップ)「DPF」
DPFの役割は、「大気汚染物質を放出させない」事です。
具体的には、ディーゼルエンジンの排気ガスに含まれる粒子状物質=ススをキャッチして、大気に放出させない役割を果たしています。
■どうして導入されたのか
DPF導入のきっかけは、東京都を始めとした首都圏の自治体が、2003年に粒子状物質の排出量に関する規制を、条例として制定した事によります。
ディーゼルエンジンの粒子状物質は、人間が吸い込むと呼吸器を中心に健康被害を引き起こすことが懸念されています。そのため、条例で定められた規制をクリアするために、ディーゼルエンジンへのDPFの装備が広がりました。
自動車の排気ガスに含まれる有害物質の規制は、1960年代にアメリカから始まり、年々、規制が強化されてきました。
排気ガスの規制は、当初、台数の多いガソリンエンジンを中心に進められてきましたが、徐々にディーゼルエンジンへの規制も強化されます。その中で、ディーゼルエンジンから排出される粒子状物質も規制の対象に盛り込まれるようになりました。
現在の日本では「平成30年規制」が適用されており、ディーゼルエンジンから排出される粒子状物質の排出量に、極めて厳しい規制がかけられています。
なお、一般的に用いられる「クリーンディーゼル」とは、このような厳しい最新の排気ガス規制に対応したディーゼルエンジンの事を指します。
■DPR・DFDって何?
DPFは、ディーゼルエンジンが排出する粒子状物質を効果的にキャッチする装置ですが、長年使い続けると粒子状物質でフィルターが詰まってしまい、浄化が出来なくなります。
そのため、DPFに詰まった粒子状物質を燃焼させ、フィルターを再生させる機能を「DPR」と呼びます。
同じような機能を「DPD」と呼ぶメーカーもあり、メーカー間での呼称は統一されていません。
DPF(またはDPR、DPD)搭載車種
クリーンディーゼルエンジン搭載車は、国内外の様々なメーカーが発売しています。
■マツダ
マツダ3 セダン(1.8 SKYACTIV-D)
スカイアクティブ・ディーゼルというブランドネームで、独自の低圧縮比技術を搭載したディーゼルエンジンを開発・発売しています。
スカイアクティブ・ディーゼルの特徴は、低圧縮で燃焼させる事でNox(窒素酸化物)の発生をおさえ、Noxトラップ等の高価な排ガス浄化装置を不要にした点にあります。そのため、他メーカーに比べ、スカイアクティブ・ディーゼルはコスト的な強みがあると思われます。
現在、「1.8Lターボ」「2.2Lターボ」の2種類のスカイアクティブ・ディーゼルを様々な車種に搭載しており、マツダの主力エンジンとなっています。
ただし、スカイアクティブ・ディーゼルにも、DPFは装備されています。
■トヨタ
トヨタ ランドクルーザープラド
トヨタが国内で販売しているディーゼルエンジン搭載の乗用車は、「ランドクルーザー・プラド」と「グランエース」の2種類です。いずれも、1GD-FTVという2.8L 直列4気筒のターボ付きのディーゼルエンジンを搭載しています。
1GD-FTVエンジンは、可変ジオメトリーターボチャージャーを搭載しています。このターボチャージャーは極めて珍しい事に、トヨタが自社で開発したものです。
高度な技術が求められるターボチャージャーは、三菱重工やIHI、ギャレットといった専業メーカーから調達するのが一般的ですが、トヨタはターボチャージャーの製造と設計をグループ内で内製しており、このエンジンの大きな特徴ともなっています。
トヨタグループの技術を結集した1GD-FTVは、44%という極めて高い熱効率をもったディーゼルエンジンとなっています。
トヨタのディーゼル搭載車について詳しく知りたい方はこちら
■三菱
デリカD:5
三菱が国内で販売しているディーゼルエンジン搭載車は、「デリカD:5」と「エクリプス クロス」の2車種です。いずれも、2.2L 直列4気筒のターボディーゼルエンジンを搭載しています。
排気ガスの浄化システムは、粒子状物質をキャッチするためのDPFと窒素酸化物を処理するための尿素SCRシステムを搭載し、厳しい排気ガス規制に対応指定しています。
三菱のディーゼル搭載車について詳しく知りたい方はこちら
■海外メーカー
MINI・新型クロスオーバー(DPF搭載車)
自動車の電動化が長期的なトレンドとなっている現在、日本メーカーではトヨタも三菱も新型のディーゼルエンジンの開発を凍結しており、積極的に開発を継続しているのはマツダのみとなっています。
それに比べると、ドイツやフランスのメーカーはディーゼルエンジンの開発に積極的と言えます。
ヨーロッパのメーカーは、日本メーカーが得意なハイブリッドエンジンの技術開発が遅れている事もあり、燃費規制等を考えると、特に大型セダンやSUVを中心にディーゼルエンジンを搭載せざるを得ないという事情があります。
また、ヨーロッパはドイツのアウトバーンに代表されるような高速道を一日何百キロも走りるという使い方をするユーザーも多く、それらのユーザーからディーゼルエンジンが支持されているというマーケットの状況もディーゼルエンジンの開発を後押ししています。
ヨーロッパ製のディーゼルエンジンは、排気ガス浄化システムにDPFと尿素SCRを組み合わせているのが一般的です。
まとめ
マツダ ボンゴに搭載されているDPF
一昔前は、黒煙をモクモクと吐き出しながら走るディーゼルエンジン車が当たり前でしたが、現在ではそんなクルマは見かけません。
それは、DPFが黒煙の元になる粒子状物質をしっかりキャッチして、外に出さないようにしているからです。
DPFは、クリーンディーゼルを支える重要な機関部品となっています。