フォーミュラeが注目される理由とは?
日産のフォーミュラeマシン
フォーミュラeが注目される理由は、「電気自動車を使用したモータースポーツの最高峰だから」と言えるでしょう。
フォーミュラeは世界唯一のEV自動車レースとして、2014年に国際自動車連盟(FIA)が中国で初めてシリーズを開催しました。
フォーミュラeのレースは「e-Prix」と呼ばれ、世界の大都市やリゾート地などの市街地で開催されるのが特徴とされています。シーズンは12月~年明け7月までの年間十数戦程度が開催されています。
フォーミュラeが必要とされる理由
フォーミュラE 第5戦 香港ePrix
必要とされるポイントとしては、レース理念であるリサイクルやエコを様々な視点から「レースを見ている側に環境保護を意識させること」にあります。
- 観戦者は公共交通機関を利用してもらう(会場には駐車場がありません)
- 1レース1セットだけで走行するリサイクルが可能となっているタイヤを使用する
- 100%再生可能な燃料を使用する
- 自宅からのオンラインライブ360度の観戦を提供する
■【必要な理由その1】化石燃料を使わず環境に配慮
レースは、上記の理念を基に開催されています。
また、F1のように化石燃料を使用せずに地球温暖化問題に配慮して行われている点も理念の一つといえるでしょう。F1では化石燃料を燃焼させCO2を排出させますが、フォーミュラeの電気自動車の場合は化石燃料の代わりに100%電動でバッテリーから給電して走行します。
そのため、CO2も発生しませんし騒音もでません。環境問題に配慮されているといえるのはそれだけではなく、上記の理由から市街地での開催なども可能となるのです。
■【必要な理由その2】電気自動車(EV)の開発・普及
フォーミュラeの理念でも述べた通り、環境問題を考え電気自動車の普及を促進することを目指しているわけですが、どのような形で促進が図られているのかというと、レースにおいて使用される電動化技術を一般車にフィードバックすることでより、高性能な電気自動車を開発することができるわけです。
現在では、ほとんどの大手自動車メーカーやサプライヤーがフォーミュラeに参加しており、レーシングカーの開発プログラムなどを最先端技術のテストヘッドとして使用してレースにおいて性能が実証された技術をすぐに普通自動車に投入しています。
そのため、FIAの技術ロードマップはパワートレインの効率化にポイントをおき自動車メーカーも普通自動車の開発過程において超効率的なパワートレインの開発に力を入れています。
このことからわかるように、自動車メーカーや関連企業の参加や協賛が増えておりこのバックアップを受けてどんどん電動化技術のブラッシュアップにつながっているのが現状です。
フォーミュラeの問題点
日産e.dams、 フォーミュラE
環境問題に配慮し、電気自動車の開発にも貢献しているフォーミュラeですが、問題点もあります。
例えば、電気自動車の製造段階での問題としては、工場での製造の際に二酸化炭素(CO2)が排出されてしまいます。
その量としては、ガソリン小型自動車の製造・リサイクルで1台あたり5,000kgの二酸化炭素(CO2)量が排出されます。電気自動車の製造では1台あたり10,000kgの二酸化炭素(CO2)量が排出されます。
このことからもわかるように、全てにおいて環境に優しいわけではないということです。
そして、電気自動車への移行に必要な課題としは、動力面での改善が必要です。2014年の時点でのフォーミュラeのレース中は1台のバッテリー容量が少なく途中でクルマを乗り換える必要がありましたが、2018年に導入された「Gen2」により45分フォーマットのレース1回を戦える容量を使用。2022年に導入予定の「Gen3」ではレース中の急速充電が可能になるように開発が進められています。
このことからも伺えるのは、このような開発によるコストの高騰化です。2019年からポルシェやメルセデスの参入により開発競争が過熱する恐れがあります。
開発競争が過熱すれば、開発コストも上昇していくのは当然の流れとなっていきます。開発コストが高くなれば、結果的にモータースポーツの撤退も視野に入れるメーカーも現れる可能性もあがるということになります。
次の項ではその他の問題点をそれぞれに分けてご紹介していきます。
■【フォーミュラeの問題点その1】厳しすぎる?!電池残量
フォーミュラeのレースでは、最初の4シーズンまでクルマに電力を供給するバッテリーが45分持たなかったのは上記でも少し触れましたが、それまでのレースにおいてはドライバーがレースの途中でピットインをする必要がありました。
降車の際に邪魔になるハンドルを引き抜き車外に飛び出し、バッテリーが切れたクルマからフル充電されたクルマに乗り換えるわけです。これは、電池残量がなく仕方がないこととはいえ、電気自動車の電力供給の問題を目の当たりにする光景といえたでしょう。
これは、普通自動車においても同じ問題となるわけですからクリアしなければならないものでした。しかし、ルシッド社によって開発されたカーボンファイバー製の外板に包まれたバッテリーが誕生したことで、これまでの2倍近い54kWhの出力を可能にしました。
しかし、未だ最高速度はF1の時速350km以上には及ばない280kmではありますが、バッテリーの容量や冷却に課題を克服することができればF1に追いつくこともそう遠くないのでないでしょうか。
特に全個体電池が搭載されるようになると飛躍的に性能が伸びるのは間違いないでしょう。
■【フォーミュラeの問題点その2】ペナルティの基準
2つ目の問題点として挙げられるのは、レースでのペナルティの基準についてです。
マシン空力デバイスがほとんどなく、レースの大半が狭いストリートサーキットで行われることから、平均的なシングルシーターシリーズに比べ多くのクラッシュや接触が発生しているのが現状です。
しかし、レースにおいてクラッシュや接触が多いことが当たり前の状況でペナルティ基準が一貫しておらず、明確でないとドライバーからの不満が噴出しています。例えば、第6戦の三亜ePrixでもクラッシュやペナルティの審議が多発しました。
レース終盤にセバスチャン・ブエミとディ・グラッシ、フラインスが絡んだ多重クラッシュにおいて、ディ・グラッシ、フラインスがリタイアに6番手でチェッカーを受けたブエミに10秒のタイム加算ペナルティが課せられ、8位に降格されました。
このレースでも、ペナルティの基準が明確でないとドライバーのSNSでの不満が爆発するなどの騒動になり話題となりましたが、フォーミュラeでは、レース後のペナルティ・リザルト変更も多いためレース運営の点での改善策が必要とされているのが現状です。
まとめ
BMW i8 ロードスター がベースのフォーミュラEセーフティカー
注目が集っているモータースポーツとしてフォーミュラeをご紹介してきました。
ガソリンやディーゼルに代わる次世代の電気自動車の開発と普及を目的に行われているわけですが、環境問題への課題、電気自動車の開発などの課題なども多々あることがわかります。
しかし、どんどん進化してきていることも確かです。この先、どのような進化が見られるのか、どのようにフォーミュラeが変わっていくのかという事もモータースポーツファンだけに限らずとも期待ができるのではないでしょうか。