ABSってなに?
二輪車のABS装備
ABS(アンチロック・ブレーキ・システム)とは自動車・航空機・鉄道などで車輪に急ブレーキをかけた際に、車輪がロックするのを防ぐための安全装置です。一般的に滑りやすい路面上で車輪がロックして滑走すると、グリップ力が低下して停止するまでの距離が延びてしまいます。
滑走させない程度に車輪を回転させることで、急ブレーキをかけた際の制動距離を短くすることができます。自動車を運転中に強いブレーキをかけてタイヤがロックすると車体の制御ができなくなり、スリップしたりスピンする危険性があります。
ABSは急ブレーキをかけた時にブレーキ圧の微調整をすることで車輪の滑走を防いで、制動距離を縮めたり車体がスリップをしないようにグリップ力を確保する安全機能です。
現在は新車販売されるすべての自動車にABSの装着が義務付けられていますが、最初は鉄道車両や航空機向けに開発されました。
ABSの仕組み
ABSの仕組みは?
ABSは急ブレーキをかけて車輪がロックするような場合に、電子制御によってブレーキ圧が調整されて車輪の滑走を防ぐための機能となります。
強いブレーキを掛けた時にタイヤがロックするとコンピューターが感知するとシステムが作動し、ブレーキ圧を少し緩めて車輪を回転させます。僅かに車輪が回転することでグリップ力を維持することができるので、短距離で止まることができます。
ABSは舗装された道路や雪道では威力を発揮し、制動距離を短縮することができます。ただし砂利道や舗装されていないオフロードで作動すると、かえって制動距離が延びてしまう場合があるので注意が必要となります。
ABSのランプについて
スズキ Vストローム250 ABS
ABSは急ブレーキをかけた時にのみ作動する機能なので、普段は使う機会がありません。このため万一システムに異常をきたして正常に機能しなくなったとしても、ドライバーは故障に気づくことができません。
システムの異常を知ることができるようにするために、ABS機能を搭載した自動車のほとんどには警告ランプが設けられています。
何らかの理由でABSの機能に異常をきたすと運転席のランプが点灯するので、ドライバーがシステムの異常を知ることができます。
■ABSランプが常時着いてしまっている時
ABSランプを含めて運転席にある警告灯は、エンジンキーをONにすると一斉に点灯してランプ切れのチェックができるようになっています。
正常な状態であればエンジンをかけると警告ランプが消えますが、エンジンをかけても常時点灯し続ける場合は、ABSの機能に何らかの異常があることを示しています。
ABSランプが常時点灯する場合には、バッテリーの電圧が低い・テールランプの球切れ・テールランプをLEDに交換して球切れと誤認・ABSの装置の故障、などの原因が考えられます。バッテリーの劣化・テールランプの球切れやLED化が原因であれば、自分で対処することができます。
バッテリーやランプを交換しても警告灯が消えない場合は、ディーラーに持ち込んで点検を依頼する必要があります。
もしもABSの警告灯が点灯している場合は軽くブレーキを踏んでみて制動が可能であれば、自分で運転してディーラーや整備工場に持ち込んで点検・整備を依頼できます。
整備工場まで運転する際は、急ブレーキをかけないように注意しましょう。安全を第一に考え、業者に依頼して車を運搬してもらうことをおススメします。
ABSシステムの点検・整備の仕方
点検方法は?
ABSはいざという時に正常に機能するために、日頃から点検・整備をすることが大切です。ただしこの機能はコンピューターが電子的に制御するので、目視でチェックできるようなものではありません。
それでも、正常にブレーキが作動するように日頃から点検をすることが大切となります。ブレーキを点検する際は、ブレーキローターの状態(錆び・凹凸・ひび割れの有無)・オイル漏れ・ブレーキパッドの厚さ・タイヤの溝、などをチェックすることができるでしょう。
自動車に搭載されているコンピューターは、故障や不具合の履歴が自動的に記録される仕組みになっています。ネット通販などで販売されている専用のスキャンツールを利用すれば、自動車のコンピューターに保存された情報を読み取って確認をすることが可能です。
ABSの異常の有無や履歴を知りたい方は、スキャンツールを入手してチェックをすることができるでしょう。
■ABSが作動するとどうなる
路面が濡れていたり雪や氷で滑りやすくなっていると、ブレーキをかけた時にABSが作動する可能性があります。路面が乾燥した状態でも急ブレーキをかけたりタイヤの溝が浅くなっていると、システムが作動する場合があります。
ブレーキを踏んだ際にABSが作動すると、システムが小刻みにブレーキ圧を緩めて車輪のロックを防いでくれます。この時にブレーキペダルが小刻みに振動するので、いつもと違うように感じるかもしれません。これはブレーキの異常ではないので、そのまま強くブレーキを踏み続けるようにします。
ペダルが小刻みに振動した時に焦ってブレーキペダルから足を離してしまうと、事故を起こす危険性があるので注意しましょう。ABSが正しく機能していれば、ブレーキを強く踏んでいる間でもハンドルを操作して危険を回避することが可能となります。
■ABSの為にも定期点検は大切
ABSが機能するためには各種センサー・コンピューターやブレーキ圧の制御機構だけでなく、ブレーキやタイヤが正常な状態であることが求められます。
コンピューターやブレーキ圧を制御する装置が正常であったとしても、ブレーキやタイヤに異常があるとシステムが機能しません。
もしもタイヤが古くなっていたり空気圧が不足すると、急ブレーキをかけた時にパンクして車体の制御ができなくなる危険性があります。
急ブレーキをかけた時に車体を安全に制御して短距離で停止させるためには、日頃の定期点検が大切といえます。
ABSの故障や異常が起こった際の修理
どうやって修理する?
通常であれば、ABSは頻繁に故障するようなものではありません。それでも冠水した道路を走行して電子回路に水が侵入したり事故などで車体に強い衝撃を受けたような場合は、システムに異常をきたす恐れがあります。
もしもABSやブレーキそのものが故障したり何らかの不具合が見つかった場合には、すぐに修理をする必要があります。バッテリー交換・オイル交換・ランプ交換・塗装などであれば、自分でも修理をすることが可能です。
これに対してブレーキやABSに関係する部分については、国から認定を受けた整備工場でしか点検や整備ができません。
ブレーキに関することで異常や不具合が見つかった場合は、ディーラーや認定を受けた整備工場に持ち込んで修理を依頼するようにしましょう。
■ABSの修理代金
ABSは電子回路・センサーや制御装置などから成っており、故障した場合は部品交換が必要になります。修理代は故障した箇所やお店によって違いがありますが、修理代には検査費用・部品交換(部品代と工賃)・点検代などの合計額となります。
センサーや電子回路の異常であれば、検査代(5千円ほど)と部品交換(1点あたり1万円から3万円ほど)の費用がかかります。
モジュール全体(ブレーキ圧の制御機構)を交換する場合には、修理代の総額が10万円から20万円程になることがあります。
まとめ
車の安全機能を理解しよう!
急ブレーキをかけた時に車体のスリップを防いでくれるABSは、命を守ってくれる重要な安全機能のひとつです。
ABSは日常的に使用するような物ではありませんが、いざという時に確実に機能させるためには日頃の点検やメンテナンスが欠かせません。