シエナの特筆すべき点
《photo by Toyota》トヨタ・シエナ新型
トヨタが海外向け車種として生産・販売を行っている大型ミニバン、それがシエナとなります。乗車スペースは最大8人と広々とした作りになっており、ファミリー向けとしては最適な乗車環境を提供すると言えるでしょう。
初代シエナは1997年、大型ミニバンであるエスティマの後継車に位置付けられるものとして発表されました。2021年1月時点における現行車は2020年にフルモデルチェンジされた4代目となります。
現行モデルのサイズは全長5,169mm×全幅1,994mm×全高1,740mm。2019年に生産が終了した先代車エスティマの最終モデル(3代目)のサイズが、全長4,820mm×全幅1,810mm×全高1,745mmなので、シエナはエスティマより若干大きいタイプということになります。
シエナは、なぜ国内で販売されないのか
《photo by Toyota》トヨタ・シエナ 新型の XSE
日本の自動車メーカーであるトヨタが製造しているとはいえ、シエナの国内販売はトヨタ公式として行われていません。あくまで北米など海外向け車種として取り扱われています。ではなぜシエナはトヨタの国内向け販売ラインナップに含まれないのでしょうか?
理由としては、シエナを国内で販売してもさほど売り上げを見込めないと、トヨタ側が認識しおり、日本と海外ではミニバンに対するニーズが異なるため、海外のニーズに併せたシエナをそのまま国内販売したとしても、日本のユーザーに広く受け入れられることはないだろうと捉えられています。
海外とくに北米におけるミニバンは、主にファミリーカーとしてのイメージが強いものとなっており、一家全員で乗車するケースが頻繁にあるユーザー向けと見なされています。
しかし日本では少子化および核家族化の影響のため、1世帯における家族構成人数がそれほど多くない傾向にあります。そのため、ファミリーカーとして扱う場合、必ずしもシエナクラスのスペースが必要というわけではありません。
大型ミニバンよりも小振りで、価格・燃費・維持費ともにリーズナブルなタイプが選ばれやすい傾向にあると言えるでしょう。
一方、日本におけるサイズが大きいタイプのミニバンは、インテリア・エクステリアや走行性能などに関し、高級感に重きを置く方向性で確立されています。つまり、家族向けとしての観点とは異なる部分にニーズが見出され、そこに重点が置かれています。
シエナの他にトヨタが手がけている大型ミニバンのアルフォードやヴェルファイアは、そういったコンセプトに基づく車種と言えるでしょう。
シエナの魅力
《photo by Toyota》トヨタ・シエナ2021年型
3列シートを備え、広々とした空間で海外における一般的な世帯人数にも対応できる点は、シエナの魅力と言えるでしょう。レッグスペース・ヘッドスペース共にゆったりくつろげる空間が確保され、乗車時間を快適に過ごすことができます。
本来のコンセプトがファミリー向けということもあり、内装・外装・装備共に日本販売仕様の大型ミニバンと比べるとやや控え目な印象があります。
しかしそのシンプルさが持ち味になっているとも言えるでしょう。日常生活のシーンにマッチする、ファミリーカーらしい使い勝手の良さがうかがえます。
シエナの性能
《photo by Toyota》トヨタ・シエナ 新型の XSE
2020年に発売されたシエナの現行車に当たる4代目では、全ラインナップがハイブリッド仕様のパワートレインとなっています。
2.5L直列4気筒のガソリンエンジンにモーターを組み合わせ、ガソリンと電気双方のエネルギーを使用して駆動します。ハイブリッドシステム全体の最大出力は245hp、複合モードの燃費は約15km/Lとされています。
走行形態を切り替えるドライブモードとしては、NORMAL・SPORT・ECO・EVの4通りが設定されています。
一般的な車道走行に対応するのがNORMAL。SPORTではハイブリッドシステムからのブーストを得ることにより加速性がアップします。ECOではガソリンとバッテリーの使用効率が最適化され燃料消費軽減がなされます。EVは電気のみを用いて低速走行するモードとなります。
状況に応じてそれらドライブモードを使い分けることで、より走りや燃費に適切な使用が可能となるでしょう。
シエナの充実装備
《photo by Toyota》トヨタ・シエナ 新型の XSE
4代目シエナは従来のコンセプトを引き継ぐと共に、より安全性に配慮された車と言え、その姿勢は装備からうかがい知ることができます。
安全機能として新型シエナには「トヨタ・セーフティ・センス2.0」が標準装備されています。これは従来の基本的なセーフティシステムに併せて、新たな機能を追加したものとなります。
主な追加機能としては、歩行者検知機能を備えた自動ブレーキであるプリコレジョンシステム、車間距離を保った追従走行を可能とするダイナミックレーダークルーズコントロールがあります。
他にはウインカーなしの車線逸脱を報せるレーンデパーチャーアラート、対向車を検知するとヘッドライトをロービームに自動切り替えするオートマチックハイビームなどが挙げられます。
安全装備以外にも家族向けミニバンに適した様々な機能を装備しています。中でも日常生活の場で便利なものとしては、両手が塞がった状態でもテールゲートやスライドドアを開閉できるハンズフリー機能が挙げられます。これにより荷物の出し入れが容易に行えることでしょう。
また、オンボードバキューム(車載掃除機)も用意され、複数人が頻繁に乗車する使用環境において車内を清潔に保つ上で役立つものと言えます。
■シエナのエクステリア
シエナのフロントデザインは、日本の新幹線から着想を得ているとされています。海外販売車とは言え日本車らしいイメージを備えたものと言えるでしょう。ヘッドライトはフロント部分の高い位置に配置され、横長のデザインが採用されています。
箱型のデザインを避けながら室内の広さを実現するため、リア部分には傾斜したピラーが用いられています。スピーディな印象を与える外観でありながら車内空間を広く感じさせる工夫の1つと言えるでしょう。
■シエナのインテリア
《photo by Toyota》トヨタ・シエナ新型
シエナの運転席部分にはブリッジコンソールが用いられています。ブリッジコンソールとは運転席と助手席の間のブリッジを高くし、インパネとアームレストを繋ぐデザインを指します。これによりドライバーはシフトレバーやスイッチ類の操作が自然な体勢で行えます。
また、ブリッジにはカップホルダー・ワイヤレス充電器・小物入れなども配され、運転時にそれらの取り出しも容易となっています。
7人乗りのグレードに限定されますが、2列目のキャプテンシートにはスライド幅を635mmとするスーパーロングスライドが採用されています。足回りの空間を広く取ることができ、運転時間をより快適に過ごせる工夫が施されています。
3列目シートは収納式となっており、座席未使用時には積載用スペースに変えることも可能となります。
シエナのライバル車は?
米ホンダ オデッセイ
ホンダ製の大型ミニバン・オデッセイ。その中でも北米仕様タイプが、シエナのライバル車に相当すると言えるでしょう。
1994年に発表された初代オデッセイは国内のみならず海外でも販売されました。日本車としては大出力の大型車に相当しますが、それでも当時の北米のカーユーザーからは車内が狭く非力と判断されてしまいました。
その指摘の改善を目標とし、以降海外向けのオデッセイは現地のニーズを意識した独自の進化を遂げることになります。北米仕様のオデッセイは2018年に発売開始となった5代目が2021年1月時点での現行車に当たります。
全長5,161mm×全幅1,993mm×全高1,734mmのサイズからなる広い車内空間が特徴であり、その他機能や安全性能においてもシエナとコンセプトを同じくした点が見受けられます。シエナとはニーズや販売シェアが競合するライバル同士の間柄と言えるでしょう。
シエナの中古車価格
《写真提供:response》《photo by Toyota》トヨタ・シエナ新型
3代目やそれ以前のモデルのシエナが流通しています。一般的な相場は以下の通りとなります。
◎シエナ:70万円台~640万円台
本来の新車価格は$34460(約356万円)ですが、年式が新しいモデルでは輸入車ということもあり割高となっています。
※表示価格は車両本体価格で情報は車情報サイトresponse中古車価格より(2021年1月現在)
まとめ
《photo by Toyota》トヨタ・シエナ2021年型
国内のトヨタディーラーでは購入できないシエナ。しかしその特徴や装備性能を鑑みると、国内需要は決して少なくないように思われます。果たしてこれから先シエナの国内販売が実施されるのかどうか注目したいところです。