まず「ガズーレーシング」とは?トヨタのワークス参戦チーム!
トヨタ ガズーレーシング ロゴ
長く続くトヨタのモータースポーツ活動を現在一手に引き受けているのが、トヨタ ガズーレーシング。
元々は中古車画像システムとしてトヨタが開発したGAZOO(ガズー)から名前を取るこちらは、WRCやWEC、国内ではSUPER GTなど、トヨタがワークス参戦するモータースポーツ全体を担当しており、近年のヤリスWRCの活躍もあってその名はもはやかなり広まっていますよね。
トヨタ GRスーパースポーツ プロトタイプ(ル・マン24時間耐久レース2020 デモラップ走行車両)
そのモータースポーツ活動だけでなく、今や市販車両への技術フィードバックも行なっているトヨタ ガズーレーシングは、「もっといいクルマづくり」を目指して勢いのあるトヨタ自動車の中でも、かなりアツい存在です。
2020年は年初からコロナ禍の影響もあり、数々のモータースポーツイベントが中止となるなど波乱の年ではありますが、それでもトヨタ ガズーレーシングの活躍は止まることを知りません。
トヨタ ガズーレーシングの、最新の戦績についてまとめてみました。
ガズーレーシングが参戦する主なレースまとめ 最新戦績も!
■WEC(FIA世界耐久選手権):2020年はTS050最後の年!
トヨタ TS050ハイブリッド #8(ル・マン24時間耐久レース2020 優勝車両)
2021年のレギュレーション変更に伴って、2019-2020シーズンでの参戦が最後となるTS050ハイブリッド。
トヨタがル・マン24時間レースに参戦し始めて苦節33年目で初めて総合優勝を獲得した記念的モデルでもあるTS050の栄光の歴史も、今年で見納めとなってしまいます。
現在は最終戦となるバーレーン8時間を残すのみとなっていますが、WECで開催されるレースの中でも最もアイコニックなものの一つ、9月に開催されたル・マン24時間レースでは、歴史的初制覇を果たした2017年シーズンから3連覇となる快挙を達成。ラストイヤーに華を飾りました。
11月開催のバーレーン8時間の結果も気になるところではありますが、TS050ハイブリッドが属するLMP1クラスでは、トヨタ ガズーレーシングが現在ぶっちぎりでマニュファクチャラーチャンピオン筆頭候補ですし、LMPドライバーズランキングでも同率1位と2位を独占。TS050の有終の美に期待しましょう。
■WRC(世界ラリー選手権):参戦3年目のヤリスWRC、熟成の域
トヨタ ヤリスWRC(第2戦 ラリースウェーデン)
2017年シーズンのWRCへの衝撃的な復帰から3年目、熟成の進んだヤリスWRCは、今年もWRCで活躍中です。
コロナ禍の影響などで、2020年シーズンの半分以上となる9つのレースがキャンセルとなるなど波乱の展開はありつつも、現在しっかり開催が続いているWRC。現在は第6戦のラリー・イタリア(サルディニア)が終了し、残すは第7戦 ラリー・ベルギー、最終戦のラリー・イタリア(モンツァ)を残すのみとなっています。
ワークス参戦ではトヨタ、フォード、ヒュンダイが三つ巴となっており、マニュファクチャラーズランキングでは、シーズン中盤ではトヨタが1位連続して維持していましたが第6戦終了後にヒュンダイに抜かれ、7ポイント差で2位となるなど接戦が続いています。
しかし、ドライバーズランキングではトヨタ ガズーレーシングのエバンスが総合1位、オジエが2位と安定した成績を残せていますので、今後2戦でのマニュファクチャラーズランキング1位奪取にも期待がかかりますね。引き続き応援したいところです。
■ダカールラリー:今度は中東開催!「世界一過酷」なラリー
トヨタ ハイラックス ラリーレイド仕様 #310(ダカールラリー2020 参戦車両)
2020年シーズンのダカールラリーは、1月5日から17日までの12日間、初開催となる中東・サウジアラビアで競いました。
トヨタ ガズーレーシングはラリーレイド仕様のハイラックスでワークス参戦し、なんとF1やWECでの世界チャンピオン経験もあり世界的に有名なフェルナンド・アロンソをドライバーに迎えるなど、話題十分での参戦となった今年のダカールラリー。
残念ながら総合優勝こそX-raidミニJCWに乗るサインツに譲りますが、トヨタ ガズーレーシングはアルアティヤが総合2位、ヴィリエールが5位につけるなど、大健闘でレースを終えました。
また、トヨタ ガズーレーシングが支援するチームランドクルーザー・トヨタオートボデーは市販車部門でワンツーフィニッシュするなど、トヨタ勢の活躍が印象的だった今年のダカールラリー。来年こそは総合優勝も期待したいところですね。
■ニュルブルクリンク24時間レース:2020年は参戦せず、来年に期待
トヨタ GRスープラ(ニュルブルクリンク24時間耐久レース 2019年参戦車両)
13回目の参戦となり、もはやトヨタ ガズーレーシングの参戦が毎年の恒例となった感もあるニュルブルクリンク24時間レースは、5月の開催予定を9月に延期していましたが、残念ながらトヨタ ガズーレーシングとしての参戦は中止され、2021年の再挑戦を目指す旨を発表してました。
2019年はGRスープラとLCの2台体制での参戦で、GRスープラはクラス3位・総合41位、LCはクラス優勝・総合54位のリザルトでした。今年ガズーレーシングから参戦予定だった車両は新開発V8エンジンを搭載したLCだったとのことで、活躍も期待されましたが、来年のカムバックに期待しましょう。
ワークス参戦ではありませんが、SP10クラスにはGRスープラ GT4、SP8クラスにレクサスRC F、SP3クラスにはカローラアルティス2台やGT86が参戦するなど、プライベーターからのトヨタ系車両での参戦も目立った今年のニュルブルクリンクは、悪天候で9時間以上の中断などの波乱の展開だった様子です。
■SUPER GT:GRスープラGT500のデビューイヤー!リザルトは?
KeePer TOM'S GRスープラ #37(SUPER GT 2020年第1戦 優勝車両)
今週末に第6戦鈴鹿を控えているSUPER GTは、今年がGRスープラのGT500デビューイヤー。
2020年シーズン開幕戦の富士では、なんとGT500トップ5をGRスープラが独占するなど大活躍し、GT300でも埼玉トヨペットGB GRスープラGTが優勝するなど、まさにGRスープラの年であることを印象付けました。
第5戦終了時点でのポイントランキングでは、GT500はドライバーランキングとチームランキングともにトヨタ勢が1・2・4・5位と上位を占めており、GT300ではやや下位に沈んではいますが残り3戦の活躍が期待されます。
■全日本スーパーフォーミュラ選手権:エンジン提供継続中!
ITOCHU ENEX TEAM IMPUL #20(スーパーフォーミュラ 2020年第1戦 優勝車両)
そのコーナリング能力の高さから、アジア圏で最高峰、時にはF1を超えるスピードをも実現するといわれる究極のフォーミュラシリーズ、スーパーフォーミュラ。トヨタ ガズーレーシングでは、TRDを通じてエンジン供給を続けており、ホンダ系のM-TECとの2社からエンジンを選んで各チームが使用しています。
シャシーは全チームで共通のものを使用、エンジンも2社から供給とはいえどちらも約550馬力と同等の出力なので、ドライバーとチームの力が存分に発揮される激しいレース展開が特徴です。
他のイベントの例に漏れず、2020年前半にはイベントを開催できていなかったスーパーフォーミュラですが、日程をずらして全7戦を戦うことに変わりない2020年シーズン。なんと第3戦まで終了した現在、ドライバーランキングでは1〜5位まで、チームランキングでは1〜4位までTRDエンジン勢が占めるという大活躍。
残り4戦もTRDエンジン勢の活躍に期待して応援しましょう。
■全日本ラリー選手権:開催中止多数も、ヴィッツGRMNが活躍中
トヨタ ヴィッツGRMN(全日本ラリー選手権 2020年 参戦車両)
全10戦開催予定だった2020年シーズンの全日本ラリー選手権ですが、なんと6戦が開催中止になるという苦難の年となっています。しかし、3月の新城ラリー、7月のラリー丹後、9月のRALLY HOKKAIDOと順調に開催され、残すは11月のツール・ド・九州を残すのみとなりました。
トヨタ ガズーレーシングから参戦するのは、国内では150台の限定生産だった3ドアボディにスーパーチャージャーエンジンを搭載したヴィッツ GRMNベースの車両。JN2クラスに参戦しており、現在はドライバーランキングで3位、コドライバーランキングで2位につけています。
エンジニアやメカニックとしてトヨタ社員が担当するなど、車両の製作からラリー参戦までトヨタ一丸で行われている全日本ラリー選手権への参戦は、日本各地という馴染みのあるステージでの戦いが特徴的な全日本ラリー。最終戦となるツール・ド・九州でのヴィッツGRMNの活躍も期待されます。
■スーパー耐久:GRヤリスがレースデビュー!えっ モリゾウも搭乗?!
ROOKIE Racing GRヤリス #32(スーパー耐久 富士24時間レース 参戦車両)
こちらはトヨタ ガズーレーシングのワークス参戦ではありませんが、事実上姉妹チームとでも呼べそうなルーキー・レーシングが、ST-1クラスにGRスープラ、ST-2クラスに本レースがレースデビューとなったGRヤリスで、スーパー耐久に参戦しています。
開幕戦の富士では安定の速さでGRスープラ、GRヤリス共にクラス優勝を果たし前途洋々。第2戦の菅生終了時点では、2020年シーズンのレースはまだ4戦あるため油断はできませんが、どちらもポイントランキングでクラス首位につけています。
なんとモリゾウ選手(豊田章男トヨタ自動車社長)がGRヤリスでアタックする場面も見られるなど、特に公式レースデビューとなる開幕富士にかけるガズーレーシングとしての期待と使命感の強さ感じられました。無事クラス優勝と幸先のいいスタートで、今後の戦闘力のさらなる向上にも期待がかかりますね。
こちらもトヨタ ガズーレーシングの車両ではありませんが、埼玉トヨペット Green Braveからはなんと4ドアセダンのクラウンRSがST-3クラスへ参戦し、こちらも開幕富士でクラス優勝するなど、トヨタ車の勢いが感じられます。今後の4戦にも期待ですね。
【ゲームの世界でもGR!】eモータースポーツにも積極関与中
GRスープラ GTカップ 2020
コロナ禍の現代において、特に年前半ではレースイベントが開催不可になった代替として、本物のレーシングドライバーがゲームでオンライン対戦するイベントを開催した例が複数見られましたが、トヨタ ガズーレーシングのeモータースポーツへの関わりは2019年にまで遡ります。
プレイステーション4用レースゲーム「グランツーリスモ スポーツ」を対戦プラットフォームとし、GRスープラの発売開始とともに始まったワンメイクレース「GRスープラ GTカップ」は、2019年シーズンには約28,000プレイヤーが参加した人気シリーズとなり、2020年シーズンもしっかり開催中。
現在は8月16日開催のオーストラリア・マウントパノラマサーキットでの第7戦を終え、リアルイベントでの対戦からオンライン対戦へと変更もあってまだ日時は未定ではありますが、2020年シーズンの決勝を残すばかりとなっています。
また、参戦ユーザーが自由にメーカーを選択できるFIA GTチャンピオンシップの2019シーズンでは、マニュファクチャラーシリーズでトヨタが優勝するという快挙も達成しています。
GRスープラ GTカップ 2019 決勝(東京モーターショー2019)
近年では歴としたスポーツの一種として市民権を得始めているeスポーツの世界において、実車をベースとしたレースゲームは、現実世界との関わりもかなり深いジャンル。
裾野の広いeモータースポーツの世界でトヨタのファン、モータースポーツのファンになってもらうことで、リアルワールドでのファンも増えることが予想されますので、ここに目をつけた点は、さすがユーザーフレンドリーなトヨタ ガズーレーシング!という印象ですね。
現時点では、対戦プラットフォームであるグランツーリスモ スポーツではTS050やGRスープラしか収録されていませんが、GRヤリスなど幅広く収録が進み、他の車種でも公式レースイベントなどが始まることも期待できますよね。
今後も広がっていくであろう、eモータースポーツの世界でのGRの活躍から目が離せません。
【5大陸走破プロジェクト】「もっといいクルマ」の実現につなげ
トヨタ 5大陸走破プロジェクト(2014年 オーストラリア)
こちらはモータースポーツではありませんが、トヨタ ガズーレーシングの「傘の下」で開催が続いている、世界中のトヨタ従業員ほかが実際に世界中を自社の車で踏破するという過酷なチャレンジが「5大陸走破プロジェクト」です。
文字通り地球上の5大陸を走破することを目的としており、2014年のオーストラリアで72日間 2万キロの走破を皮切りに、北米・南米、ヨーロッパ、アフリカと続いてきたこのプロジェクトも、現在は最終段階のアジアに到達しています。
トヨタ 5大陸走破プロジェクト(2015年 北米)
本来であれば2020年は最終ゴールとなる日本に到達しているはずでしたが、この世界情勢ですので残念ながらチャレンジは中断されているものと思われます。
実際に自社の車でその地域のあらゆる条件の道路を踏破し、それぞれの市場のニーズを把握することで「もっといいクルマづくり」、それを支える「人づくり」をかなえるというこんな一大プロジェクトは、まさにトヨタほどの企業規模だからこそ為せる野心的すぎるプロジェクト。
この車のこの部分がプロジェクトの成果です!とはアピールしづらい、将来に種を蒔く気の長いプロジェクトではありますが、その成果はきっと将来のトヨタ車の魅力向上につながることでしょう。
まとめ
トヨタ ヤリスWRC(2020年第5戦 ラリーターキー)
トヨタ ガズーレーシングの参戦する主なレースに関して、ご紹介してきました。
市販車の動力性能、操る楽しさの大幅な向上も近年は話題のトヨタ車。その源泉にはさまざまなモータースポーツに参戦していることによる経験値の集積ももちろん貢献していそうです。
費用対効果を考えてワークス参戦を取りやめるメーカーが多い中、トヨタ ガズーレーシングにはこれからも末長くモータースポーツ活動を続けてほしいものです。