レンジローバーとは?
レンジローバー ウェストミンスター
レンジローバーとは、イギリスのランドローバーが生産している高級SUVのモデルです。ランドローバーとは高級四輪駆動車を専門に販売している、英国の自動車メーカーです。
現在はジャガーとともにタタ・モーターズの傘下になっており、ジャガー・ランドローバーの一部です。伝統的で歴史のある自動車であるレンジローバーという車がラインナップしているのですが、ランドローバーと混同してしまうことがあります。
簡単に言うならば、レンジローバーはフラッグシップモデルの名前です。世界で初めてオフロードのためにフルタイム4WDを採用したモデルで、高級自動車に匹敵するほどのオンロードでの快適性を備えているモデルです。
発売された当時はオフロードを走行できる高級車は、車種が限られていました。その中で世界で称賛を受けて、砂漠のロールスロイスとも呼ばれるほどの走破性と快適性のバランスが取れています。
フラッグシップモデルとして歴史が長い車種ですが、ランドローバーの中に複数のレンジローバーがラインナップされています。
レンジローバーが生まれた背景
ランドローバー ディフェンダー 最終モデル
地味ながらも上質な車を作るメーカーだったローバー社。1948年に「ランドローバー(ディフェンダー)」を発売していますが、走破能力と頑丈さは高いものの快適でスタイリッシュとは言い難いものでした。
上流階級の人たちにとって、農場での移動手段としてランドローバーを活用していたものの、都会での走行には似合わないものでした。そこで快適でスタイリッシュなクロスカントリー車を求める声が寄せられます。高速巡航もでき正装も似合うようなモデルです。
1970年にデビューしたレンジローバーは、カントリージェントルメンの希望に応えたモデルとなります。 ランドローバー第2の市販モデルとなったレンジローバーは、コイルスプリングを採用し、セルフレベリングシステムや4輪ディスクブレーキも標準装備されます。
155km/hという高速巡航も可能な性能と、オフロード性能を兼ね備えていることから、リリースと同時に英国の上級のステータスシンボルとなりました。高速巡航性やオフロードでも快適に乗れることが話題となり、都会の富裕層にも人気のモデルとなります。
■レンジローバーは「砂漠のロールスロイス」
レンジローバースポーツ 2013年式
1970年代にオイルショックが発生しましたが、急速に経済力を得た中東諸国の富裕層には、砂漠であっても快適に移動できるレンジローバーは貴重な移動手段となります。当時の内装は現在のレンジローバーの内装と比較してそれほど上質なものではありません。
しかしオンロードでも快適に走行できること、またオフローダーとして超一級の性能を持っていることから、「砂漠のロールスロイス」と呼ばれるほどになります。
ドライブフィールはどんな路面でも快適で、悪路であっても走破できる強靭な車ということから、富裕層を中心に支持を集めます。特に、パリダカール・ラリーでの活躍はレンジローバーの実力の高さを明らかにしました。
伝統的にイギリス王室メンバーもレンジローバーを愛用していることから、英国王室御用達の証も得ることになります。
次の見出しからはレンジローバーがどのような歴史を歩んできたのかご紹介します。
レンジローバーの歴史
レンジローバーの歴史は古く1970年に初代モデルが登場しています。その後もモデルチェンジを経て4代目が現行モデルとして販売されています。基本となる特徴は変わらずに、時代や背景に合わせて、進歩しているモデルです。
■初代レンジローバー
初代レンジローバー
初代レンジローバーは1970年から1996年まで発売されていました。フルタイム4WDとして、オンロードでもオフロードでも快適に走行できるモデルとなっています。
高級なラグジュアリーカー、 荷物を積載できるエステートカー、力強いパフォーマンスカー、オフロードを走行できるクロスカントリーカーという4つの役割を1台でこなします。
当時は、Jeepやベンツが高級SUVを販売している程度で、高級クロスオーバーというジャンルが珍しいものでした。発売された当初は3ドアモデルのみでしたが、後に5ドアモデルが追加されます。
ボディ設計はシンプルなもので鉄板製のボディにアルミ製のドアやフェンダーが取り付けられています。ランドローバーがオフロード車を開発したときには、鉄不足に悩まされており、アルミを多用していました。レンジローバーもアルミを多用して、車体の軽量化と防錆対策を施しています。
初代レンジローバーは長年発売されてきたモデルで、馬力もありオフロードも力強く走行できる車ですが、サスペンションがや電気系統のトラブルに悩まされることが多いです。しかし社外品も潤沢に供給されているので、安価に部品交換ができます。
■2代目レンジローバー
レンジローバー 2001年式
2代目レンジローバーは1995年から2002年まで販売されていました。インテリアが豪華になっていること、ヘッドライトが角型になっています。乗用車化を測りたいマーケティング側と機能を重視する設計陣の折り合いが難航して、企画から開発まで時間がかかったと言われています。
4ドアワゴンになっており、ラダーフレームと前後のリジットアクスルはそのままに、ボディはスポット溶接構造に変更されています。二代目のレンジローバーでもエアサスペンションを採用しているのですが、トラブルが発生することから、金属バネに交換することも多いです。
初代と同様に、フルタイム4WDを採用しており、4Lもしくは4.6LのV型8気筒エンジンで力強く走行できます。
■3代目レンジローバー
ランドローバー レンジローバー 2004年式
3代目レンジローバーは、2002年から2013年まで発売されていました。BMWのローバー売却などから、フォードが開発を引き継ぎます。ボディやエンジンが大型化されていること、またタウンユースを意識したモデルになっています。
デザインの面では、より初代を意識したデザインモチーフになりました。エンジンが新しいものになり、ガソリンエンジンはBMWの4.4Lエンジン、ディーゼルエンジンは2.9Lターボエンジンになります。
その後2006年にはジャガー製のエンジン、ディーゼルエンジンはフォード製とパワーユニットが変更されています。2010年にはさらにガソリンエンジンが5L、ディーゼルエンジンは4.4Lと排気量アップされており、力強いパワーユニットです。
■4代目レンジローバー
レンジローバー 2014年モデル
4代目のレンジローバーは、2013年から発売されており、ラグジュアリーなデザインに変更されています。4代目レンジローバーからは、オールアルミモノコックが採用されており、3代目よりも420kgも軽量化されているのです。
テレインレスポンス2が搭載されているので、路面状況に合わせて自動的にセッティングが最適化されます。また後部座席が拡大しているので、車内での居住性も高まっています。走行性能だけでなく車内での快適性も高まっているモデルです。
現行のレンジローバー
現行のレンジローバーにラインナップされているモデルをご紹介します。レンジローバーでも価格帯や特徴となるポイントが異なっており、違った魅力を持っているのが特徴です。
■レンジローバー
レンジローバー・フィフティ
ランドローバー車の中でも頂点のモデルとも言えるレンジローバーは、高級SUVの代表的なモデルです。既述しましたが歴史が古いモデルで、レンジローバーと言えば高級車というイメージを持つほどに、世界最高峰のSUVという印象を持たせるモデルです。
レンジローバーは4WD車では初めてエアサスペンションを採用したことにより、伸びのある足回りを実現しました。伝統のラダーフレームに、アルミを使用した頑丈なボディが特徴的です。
三代目からはモノコックボディを採用していますが、オフロードの走破性に影響を与えないほどボディ剛性は確保しています。発売当初から現行モデルに至るまで、「元祖ランドローバー」とも言えるフラッグシップモデルです。 オフロードでもオンロードでも快適に走行できる代表的な車です。
税抜き新車価格:1,357万円~
■レンジローバー・スポーツ
レンジローバー スポーツ HST
レンジローバースポーツは2005年から発売されているモデルです。ポルシェのカイエンの成功によって刺激を受けて開発されたモデルとも言われています。レンジローバーからスポーツ性能を高めているのが特徴です。
レンジローバーのボディと似た形状をしていますが、初代モデルではシャシーはディスカバリー3と共通で、さらにサスペンションなど足回りの味付けも異なっており、レンジローバーがラグジュアリーに走行するのに適しているのに対して、レンジローバースポーツはスポーティな走行も得意です。
現行モデルの2代目レンジローバースポーツは、2013年から発売されています。5Lまたは3Lのガソリンエンジン、もしくは3Lのディーゼルエンジンが設定されています。また日本では2018年からプラグインハイブリッドモデルも設定されました。
レンジローバーよりもボディサイズもコンパクトで、スポーティなモデルがレンジローバー・スポーツです。
税抜き新車価格:850万円~
■レンジローバー・ヴェラール
レンジローバー・ヴェラール PHV
レンジローバーのヴェラールは2017年から発売されているモデルで、最も美しい車として、「ワールド・カー・デザイン・オブ・ザ・イヤー2018」にも選出されています。
イヴォークとレンジローバー・スポーツの中間に位置しているモデルで、アルミニウムによって大幅に軽量化されています。4気筒ガソリンターボエンジンとツインターボエンジン、さらにV型6気筒スーパーチャージガソリンエンジンを搭載。
エンジンは力強く素早い加速を見せますが、エアサスペンションによってロールを制御をしていることにより俊敏にコーナーを曲がることができます。
レンジローバーのオンロードでの快適性に加えて、面一処理されたボディで、都会の走行にぴったりのエクステリアを備えていることが特徴です。
税抜き新車価格:652万円~
■レンジローバー・イヴォーク
レンジローバーイヴォーク PEV
レンジローバー・イヴォークは日本では2012年から販売されているモデルで、2008年に発表されたLRXというコンセプトカーを製品化しています。デザインコンセプトはそのままになっておりクロスクーペ・デザインが再現されているモデルです。
広い空間と多用途性が実現されており、それでいてスタイリッシュなボディが特徴です。クーペと5ドアのモデルの2タイプのボディデザインがありました。
2Lガソリンターボエンジンなどが搭載されており、オンロード・オフロードを問わずして高い走行性能を発揮します。 SUVでもソフトトップのコンバーチブルモデルもありました。
2019年には2代目モデルが発売され、初代で設定されていたクーペなどはなく5ドアモデルのみとなります。新しいプラットフォームを採用し、99%が新設計のボディ構造となります。
居住空間とトランク容量が拡大しており、実用性も高くなっているのが特徴です。コンパクトサイズながらスタイリッシュなので、街乗りにぴったりです。
税抜き新車価格:450万円~
■レンジローバー PHEV
レンジローバースポーツPHEV
大型のボディとはいえ先進的な燃費性能を実現しているのが、レンジローバーのプラグインハイブリッドモデルです。現在はレンジローバーとレンジローバー・スポーツに設定されており、2018年から発売されています。イヴォーグやヴェラールにも今後追加される予定です。
このうちレンジローバーのプラグインハイブリッド仕様「P400e」に採用されているPHEVパワートレインは、2L 4気筒ターボエンジンに最高出力142PSの駆動用モーターを組み合わせます。エンジンとモーターを組み合わせた最高出力は404PSです。
0-100km/h加速は6.4秒という速さで、WLTCモードによる等価EVレンジ値も40.7kmと十分な距離が確保されています。そのため短距離であれば、EVモードで静かに走行できますし、エンジンと組み合わせると力強く走行できるモデルです。
プラグインハイブリッドであっても走破性は犠牲になっておらず、最大渡河水深は900mmを実現。レンジローバーのどんな地形でも走破できる性能は維持しています。
税抜き新車価格:1,107万円~(レンジローバースポーツ)
まとめ
レンジローバーは、ランドローバー社のラインナップの中でも、フラッグシップとも言えます。特徴となるポイントが異なる複数の車種があり、ラグジュアリーなものから、コンパクトなモデルまで選択できます。
レンジローバーという名前が有名なことから、ランドローバーという会社名と混同してしまうことがあるでしょう。いつの時代でも高級SUVのフラッグシップモデルとして君臨しているレンジローバーは、いつか乗ってみたい憧れの1台です。