自動運転とは
そもそも自動運転とは?
自動運転とは「ドライバーの運転を必要とせず、車が自動的に走行やブレーキの判断を行って作動させる技術」のことです。とはいえ全ての車が自動的に運転を行ってくれるわけではなく、ドライバーのサポート技術にとどまる自動運転もあります。どの程度自動化されているかの段階に合わせて、0~5のレベル別に分類されています。
「レベル0」は全ての運転をドライバーが自ら行い、システムによるサポートはありません。「レベル1」「レベル2」はドライバーが運転しますが、衝突の危険が迫ったときの回避行動や高速道路で走行速度を一定に保つ操作など、特定の条件下でドライバーをサポートする技術であり、事故が起きた場合はドライバーの有責となります。
一方、「レベル4」~「レベル5」は操作をしなくても自動的に運転してくれるため、基本的には事故が起きた際の責任の所在は自動車のメーカーや道路管理者などになる可能性が考えられますが、現在は明文化されていません。そのため、今後レベル4やレベル5の自動運転車が実用化された際には、新たな法整備が必要になると言われています。
ただし、「レベル3」のみシステムから判断を迫られた場合はドライバーが対応する必要があるため、ドライバーが責任を負う方針です。
■国内では2020年に自動運転のレベル3が解禁
2020年4月に「道路交通法」と「道路運送車両法」が改正され、日本国内ではレベル3の自動運転車が公道で走行可能となりました。2020年11月現在、各メーカーからレベル3に対応した新モデルは発売されていませんが、2020年度内にホンダが発売を予定していると発表しています。
レベル3は「一定速度に保つことが義務付けられている道路など、特定の条件下においてアクセルやブレーキ、ステアリングを自動運転システムが行う」段階で、運転操作はシステムを中心に行われます。ドライバーが運転する場面が訪れるとシステムが交代要請を出し、その時点で運転の主体がドライバーに交代します。
自動運転の取り組み | 国内メーカー
ここでは、国内メーカーの自動運転に関する取り組みを紹介します。
■トヨタ
トヨタ社はアメリカを皮切りに世界各国で自動運転に関する実証実験を進めたい考えで、2021年に延期となった東京オリンピックにおいて最新技術の一部をお披露目する予定となっています。
技術開発はアメリカを拠点とするTRIと、東京を拠点とするTRI-ADが中心となって進めており、中国の百度が組織する自動運転の開発連合「アポロ計画」にも参画しています。
■ホンダ
ホンダ社は2020年度内にレベル3の運転技術を搭載した「レジェンド」の新車販売を予定しており、すでに型式指定を国土交通省から取得しています。
自動運転装置の名称は「Traffic Jam Pilot(トラフィック・ジャム・パイロット)」で、装置の作動開始後の速度が約50km以下である場合に自動運転が可能になります。レベル4の実現にも意欲を見せており、2025年頃を目途に技術的な確立を実現したい意向です。
■日産
2020年現在、自動運転レベル2に相当する「プロパイロット2.0」を一般車向けに実装済みです。
高速道路で同一車線上を走行中にアクセルやブレーキ操作を行わずに速度の維持が可能なシステムを搭載しています。
■マツダ
マツダ社の自動運転技術は「マツダ・コ・パイロット・コンセプト」という考え方を元に開発されており、基本的には「人が運転することを前提として自動運転技術を取り入れていく」という姿勢を示しています。
2020年現在、ドライバーが体調不良などで運転に支障をきたした時に安全を保ちながら車両を停止するための技術について特許を出願中ですが、具体的にレベル3以降の自動運転車を販売する予定は現在のところ報告されていません。
自動運転の取り組み | 国外メーカー
ここからは、国外メーカーにおける自動運転の取り組みについて紹介します。
■アウディ
アウディ社は2017年に「A8」にレベル3の自動運転機能を搭載して発売する予定でしたが、延期が繰り返され、現在でも市販化には至っていません。
しかし、すでにレベル4の自動運転技術も実証実験レベルで実現しており、今後も完全自動化に向けて開発を続けていくとみられています。
■GM
2020年に「Cruise Origin」という名称の自動運転レベル4対象車の量産モデルを発表しています。
実用化の具体的な時期は明言されていませんが、今後生産が本格化していく予定です。
■BMW
BMW社は2021年の自動運転技術の実用化を目指しており、当初は「iNEXT」コンセプトの市販仕様で実現されるとの観測がありました。
しかし、2020年11月に発表された市販仕様「iX」にどのような自動運転技術が搭載されるかは、まだ発表されていません。
■テスラ
テスラ社は2020年10月に一部のユーザーに対して「完全自動運転」のベータテスト用ソフトウェアをリリースしています。
現在のところ今後の展開は発表されていませんが、技術をさらに向上させて、完全自動運転の実現にまい進していくとみられています。
■フォード
フォード社は、レベル4以降こそが正式な自動運転と位置付けており、レベル3以下はドライバーの運転をサポートするシステムにとどまるとしています。そのため、レベル3を実用化するための開発は進行しているものの、レベル4を実装できる段階になるまで自家用車にはレベル2までの自動運転技術しか搭載しないのではないかと言われています。
一方で、商用サービス分野においては配送サービスなどの実現に向けて、2021年にはレベル4にあたる自動運転技術を投入したい考えを表明しています。
自動運転で実現できるサービスは?
ここからは、今後自動運転が発展することにより、実現する可能性があるサービスを紹介します。
■自動運転バス・タクシー
茨城県境町が開始した自治体初となる自動運転バスの定常運行
自動運転レベル4の技術が実用化レベルに到達すると、自動運転バスやタクシーの運行が可能になります。アメリカではウェイモが自動運転タクシーの運用を開始しており、日本も実用化に向けた動きが進んでいます。
自動運転バスに関して言えば、中国やフランスがシャトルバスの開発中であり、フランスに本拠を置くイージーマイルは2017年から公道上での実運用をスタートさせている状況です。日本国内では相鉄バス・群馬大学・日本モビリティの3者合同で2020年秋に実証実験を行っており、本格的な社会実装が待たれています。
■移動型コンビニエンスストア
「お店が自分の所まで来てくれる」e-パレット
世界的には店舗そのものの無人化を目指す動きが強まっていますが、自動運転技術による移動型コンビニエンスストアの実現も可能性としては考えられます。
スウェーデンやアメリカでは試験運用が行われており、日本国内でもトヨタが多様な用途に対応できる自動運転技術を搭載した電気自動車「イーパレット」を開発中です。
■トラックの自動隊列走行
トラック隊列走行の実証風景
トラックを自動運転で走行させられれば、物流の人手不足や渋滞解消が期待できます。アメリカのテキサス州などでは自動運転トラックによる貨物輸送を想定した公道上での試験走行が行われている段階です。
また、日本では先頭車両をドライバーが操作する「隊列走行」の実証実験が2019年に実施されているなど、今後の動きに注目です。
まとめ
ここまで、自動運転の基礎知識や各社の自動運転技術に関する現状などをお伝えしてきました。一般向けに販売されている自家用車においてはレベル2の実装にとどまるメーカーが大半ですが、実証実験ではほとんど全ての運転を自動化できるレベル4の導入も試みられています。
世界ではすでに自動運転バスやタクシーの実用化が開始されている国もあり、今後はさらに広い地域で自動運転が普及していくでしょう。2020年にはレベル3の実装が国内で解禁されたことも手伝って、日本でもさらなる自動運転技術の発展が期待されます。