世界トップクラスが見る世界とは… 億超え上等の超高級車たち
ブガッティ ビジョン グランツーリスモ(フランクフルトモーターショー2015 出展車両)
お金はあるところにはあるのだなあとしみじみ感じさせられるのは、近年のハイエンド高級車ラッシュです。
スーパーカー自体の価格は大きく変動した印象はなくとも、高額な限定モデルが矢継ぎ早に登場したり、数台限定生産の超高級車などではもはや1億円程度では大きな話題にならないほどに価格上昇傾向が続いており、それらの車のマーケットも拡大していることを窺わせますよね。
しかも、それらの高額車たちはおそらくガレージに大切に仕舞い込まれるものと思われるので、大変幸運なオーナー以外はもはや実物を目にできず、我々はネット上の画像でしかもう見ることすらできないかもしれません。
そのため、常に最新情報をキャッチアップしていないと、知らないうちに聞いたこともない超高級車がどんどん増えていて重要なモデルを見逃してしまいそうですね。
ジャガー C-X75
そこでこの記事では、公表されている価格をベースに、億超え高級車の最新の話題をまとめてみたいと思います。
もちろん、メーカーが価格を公表していない車も数多くあり、本当にどの車が最高価格なのかは一概には言いづらい部分があるのですが、公表されている車だけでももはや想像もつきにくいほどの高価格となっていますので、一緒に驚いていきましょう。
最新億超え超高級車はこれだ!
■パガーニ ウアイラ トリコローレ(550万ユーロ/7億円)
パガーニ ウアイラ トリコローレ
2020年12月17日に発表されたばかりのホヤホヤの億超えスーパーカーが、イタリアの自動車メーカーであるパガーニによる「ウアイラ トリコローレ」。
ウアイラ トリコローレは、イタリア空軍のエアロバティックチーム「フレッチェ・トリコローリ」の創設60周年を記念して製作されるウアイラの限定バリエーションモデルで、なんと生産台数はわずか3台、価格は550万ユーロ(約7億円)と、クラクラしそうなハイエンドモデルとなっています。
2019年に発表されたウアイラ ロードスターBCが308.5万ユーロ(約3.8億円)でパガーニで最も高価なモデルの一台と謳われていましたが、1年あまりでその座をトリコローレに明け渡した形です。同族の中でも競争の激しさを感じさせますね。
パガーニ ウアイラ トリコローレ ピトー管
パガーニの車として史上最もパワフルなモデルとなるという「ウアイラ トリコローレ」は、メルセデスAMGがパガーニ専用に開発した6.0リッター V型12気筒ツインターボエンジンから840馬力の最高出力を絞り出します。それでいて車重は1.3トン程度と国産車でいえばカローラ程度に抑えられており、暴力的な加速を予想させます。
車両全体のエアロ構造も新たに最適化されているほか、ノーズ部には航空機同様のピトー管が設置されるなど、フレッチェ・トリコローリへのリスペクトとともに遊び心のある仕上がりとなっていますね。
■メルセデスAMG ONE(280万ドル/3.2億円)
メルセデスAMG Project ONE プロトタイプ
こちらは発表自体は2017年に行われているモデルですが、プロトタイプのテストの模様が頻繁に取り上げられるようになってきた億超えハイパーカーが、メルセデスAMG Project ONEです。市販仕様の車名は「ONE」となることが発表されています。
メルセデスAMGの創業50周年を記念したモデルとなるメルセデスAMG ONEは、なんとF1マシン譲りの1.6リッター V型6気筒ターボエンジンと、フロント2個、ターボチャージャーとエンジンにそれぞれ1個の4モーター式のプラグインハイブリッドシステムによって、システム出力で1,000hp以上の最高出力と最高速350km/h以上を実現するというオバケ級ロードカー。
レース中の負荷が市販車の比ではないとはいえ、短いスパンで使われるF1マシン譲りのエンジンを公道走行させるとあって、開発の難航も伝えられていましたが、最近ではメルセデスAMGペトロナスF1チームのドライバー、ルイス・ハミルトンが同車を運転する動画も公開されるなど、開発は順調に進んでいる様子。
メルセデスAMG Project ONE プロトタイプ
ハイパーカーとはいえ最新のプラグインハイブリッドらしく、短距離ならEV走行も可能な同システムは、800ボルトという高電圧で作動させることでケーブル径を細くし軽量化につなげるという斬新なシステム。
詳細なパフォーマンスはこれから公表されていくものと思われますが、価格は280万ドル(約3.2億円)とされています。世界限定で275台の生産となるとのことですが、すでに全数が売り切れてしまっているようです。
【1位は20億円?!】世界で最も高額な車ってなに?
■パガーニ ゾンダ HPバルケッタ(1,500万ユーロ/19.5億円)
パガーニ ゾンダ HPバルケッタ
先ほど最新のウアイラ トリコローレをご紹介したパガーニが、公表済の新車価格としては世界最高峰となる1,500万ユーロ(約19.5億円)という「ゾンダ HPバルケッタ」で、絶対的な世界トップクラスの座を勝ち取っています。
ゾンダはウアイラの前に生産されていたモデルで、パガーニ社を世界最高峰のスーパーカーメーカーに押し上げた張本人の車。アヴァンギャルドなデザインと本気のメカニズムに、信頼性とパワフルさを併せ持つAMG製のV型12気筒エンジンを搭載したゾンダは、1999年のデビューから瞬く間にスーパーカー界でも一目置かれる存在に上り詰めます。
すでに後継モデルのウアイラが登場していることもあり公には標準モデルの生産が終了しているのですが、超セレブからの要望を断り切れないのか、近年まで限定モデルの形で少数生産が続いてきました。
日本でも、前澤友作氏のワンオフ製作依頼による「ゾンダ ZOZO」が話題になったことを覚えている方もいらっしゃることでしょう。
パガーニ ゾンダ HPバルケッタ
そんなゾンダの中でも最も特別な一台となるHPバルケッタは、米・カリフォルニア州で開かれる「ペブルビーチ・コンクール・デレガンス」にて2017年に登場しましたが、なんと限定3台のうち1台が、パガーニ創業者のオラチオ・パガーニ氏の個人コレクションとなることが決定済。
氏の60歳の誕生日とゾンダの18周年(?)を記念したモデルとのことで、車名のHPとは氏のイニシャルのことだそうです。
HPバルケッタは単なるゾンダ ロードスターではなく、幌を装備せずにフロントウィンドウを低くした「バルケッタ」ボディが特徴的。往年のグループCレースカーをモチーフとしたリヤホイールに被さるカーボン製スパッツなど、刺激的なディテールが満載ですね。
搭載されるエンジンは7.3リッター V型12気筒自然吸気エンジンで、出力は800PSと、ゾンダとして最強のパワーを誇るのはまさにフィナーレにぴったり。伝説的な名車だけに、残る2名のオーナーも世界最高峰の価格も納得して支払ったことでしょうね。
■ロールスロイス スウェプテイル(1,300万ドル/14.5億円)
ロールスロイス スウェプテイル
2017年にイタリアのコモ湖畔で行われるクラシックカーイベント「コンコルソ・デレガンツァ・ヴィラデステ」で公開された「ロールスロイス スウェプテイル」は、華やかな同会場での注目を一躍集めた存在でした。
高級車作りに連綿と連なる長い歴史を持つロールスロイスならではのデザインモチーフは、1920年代の「スウェプト・テイル」と呼ばれたコーチビルト車からのインスピレーションとのこと。
コーチビルドとはかつてのハイエンド高級車の定番的な製作方法で、自動車メーカーから調達したシャシーに、オーナーの好みのボディを専門の「コーチビルダー」に作らせて載せることで、究極の車を実現する技法。シャシーだけでなくボディでも車体剛性を担うようになったモノコックボディ構造が現代の車に広まってからは、残念ながら半ば失われた技術となっています。
モノコック車では加工により繊細な技術を要すると思われるので、コーチビルダー全盛の時代よりも、もしかするとよりエクスクルーシブな技法といえるかもしれません。
ロールスロイス スウェプテイル スケッチ
スウェプトテイルをモチーフにするというアイデアの具現化に4年を要したというその仕上がりは、まさに圧巻。「なでつけられた」などの意味を持つ「Swept」の車名通り、長く伸ばされたキャビンが段々収束していくフォルムは、もはや車ではなく船を思わせる独特な世界観となっており、きっとオーダーしたクライアントのお眼鏡にもかなったことでしょう。
そう、スウェプテイルはロールスロイスが自主的に作ったのではなく、裕福なお客様の要望によるもので、いわば自動車版の「オートクチュール」。機構的なベースは既に生産終了済のファントムクーペではありますが、内外装の細かな部分に至るまで独自のデザインが行われており、まさに世界に一台の特別すぎる車となっていますね。
ロールスロイスという伝統のブランドだけあって、パルテノングリルなどの象徴的部分をなくしてしまうことなどは受けかねるとのことですが、法規的に対応ができる範囲内なら、かつ代金が用意できるのなら、理想の車を実現するためにどんな要望にも応えてくれそうなことは、スウェプテイルを見れば明らかでしょう。
もはや実物を見る機会は限りなくゼロに近いとは思われますが、遠目でもいいのでぜひオーラを感じてみたいですね。
■ブガッティ ラ・ヴォワチュール・ノワール(1,100万ユーロ/13.8億円)
ブガッティ ラ・ヴォワチュール・ノワール(左)、タイプ57SC アトランティック(右)
文字通り「黒い車」という意味のフランス語が車名となるブガッティ「ラ・ヴォワチュール・ノワール」は、W型16気筒 8.0リッタークワッドターボエンジンから1,500PSを絞り出す弩級スーパーカー「シロン」をベースとしたワンオフモデル。
生産はわずか1台のみという、もとより稀少価値の高いブガッティの中でも究極のエクスクルーシブさを誇るラ・ヴォワチュール・ノワール。お値段は1,100万ユーロ(約13.8億円)と、ゾンダ HPバルケッタやスウェプテイルには届かずとも、もはや紙幣で換算すればどんな大きさになるのか想像を絶するほどの高価格となっています。
ベースモデルのシロンからしてもはや常軌を逸した高性能・高価格となっているラ・ヴォワチュール・ノワールですが、モチーフとされたのは戦前の自動車で最も美しいデザインのひとつと称される「ブガッティ タイプ57SC アトランティック」とのこと。ハイエンド車メーカーの重鎮であるブガッティらしい歴史を感じさせる部分ですね。
もはや両車を隔てる時代の差が大きすぎるほか、ラ・ヴォワチュール・ノワールがミッドシップレイアウトなのに対しアトランティックはフロントエンジンと、直接比べようもないようにも見えますが、具体的な類似ポイントとして挙げられるのは、ラ・ヴォワチュール・ノワールのボンネットからリヤエンドまで伸びるシルバーのライン。
「とさか」のようなこの造形は、タイプ57SC アトランティックの個性を際立たせた独特なものです。
ブガッティ ラ・ヴォワチュール・ノワール(モルスハイム中心部におけるディスプレイ)
街乗りもこなしつつサーキット走行も可能なシロンに対し、ラ・ヴォワチュール・ノワールはよりグランドツーリングよりの性格に仕立てられる見込みとのこと。「見込み」というのも、実はまだデザインが発表されているだけで、実際の車の製作には数年かかる見通しとされていたためです。
そのため、詳細が公表されていないミステリアスなラ・ヴォワチュール・ノワールの幸運なオーナーは、現在まだ長い納車待ち期間中と思われます。完成を待ちわびていることでしょうね。
またブガッティは、本拠地としている仏・モルスハイムのクリスマスマーケットがコロナ禍の影響で中止となったことへの配慮として、市中心部のクリスマスツリー脇にラ・ヴォワチュール・ノワールを展示するという太っ腹なプレゼントを現在実施中。
2021年3月末まで特別に展示されるというこのディスプレイですが、現地にお住まいの方は世界トップクラスの稀少車をじっくり眺められるまたとないチャンス。大人気が予想されますので、思わず三密になってしまわないように注意してもらいたいところです。
日本車も負けてない! 億超えした日本車たちはこれだ
■レクサス LC500コンバーチブル 量産第一号車(200万ドル/2.2億円)
レクサス LC500コンバーチブル 量産第一号車
先ほどまでご紹介してきた車両とは桁が異なるせいで感覚が麻痺しそうになりますが、現在国内向け税込新車価格で1,500万円と、国産車としてトップクラスの高価格を誇るLC500コンバーチブル。
コンセプトカー時代からその美しいスタイリングで販売要望が殺到したというLCは、クーペボディでデビューしてからもオープンモデルの要望が多かったとのこと。そんな同車ですが、2020年1月、量産第一号車を米・アリゾナ州で開かれる自動車オークション「バレットジャクソン」にチャリティオークションとして出品したところ、なんと200万ドル(約2.2億円)の値で落札されました。
しかも落札主は、米・コロラド州のレクサスディーラー経営主の男性とのこと。チャリティへの積極的な関与が国民性となっているように思える米国とはいえ、かなりの男気の持ち主といえそうです。
ゼロハリバートンによるトランクにぴったりと納まる特注のラゲッジセットなども含めて、2020年8月に無事にオーナーの元に納車された量産第一号車。2億円オーバーの収益は、全額がレクサスからボーイズ・アンド・ガールズ・クラブ・オブ・アメリカとボブ・ウッドラフ財団に寄付されたとのことです。
■日産 GT-R50 by Italdesign(99万ユーロ/1.2億円)
日産 GT-R50 by Italdesign
こちらは打って変わってオークションによる結果ではなく、50台限定ながら通常生産が行われるGT-R50 by Italdesign。車名からも示されている通り、GT-Rとイタルデザインがそれぞれ2019年と2018年に50周年を迎えたことを記念して共同開発したモデルとなっています。
伝説的なイタリア人カーデザイナー、ジョルジェット・ジウジアーロによって創設されたイタルデザインは、初代ゴルフやパンダ、デロリアンなど、自動車史に残る名車の数々をデザインしてきた名門のデザイン会社。GT-Rの歴史についてはもはや語るまでもないかと思いますが、そんな両者の歴史を背負った記念モデルだけにその仕上がりは本気のものです。
GT-R NISMOをベースとしつつも、大幅にチューンアップされた720PSのエンジンなど、メカ面でもアップデートを実施。さらにそれらを独自意匠のエクステリアで包み、GT-Rらしさを残しつつもまるで未来からやってきたかのような先鋭的なデザインを実現しています。
限定50台の予約枠は2019年末ではまだ空きがあると報道がありましたが、すでに完売していてもおかしくないでしょう。折しもコロナ禍と納車開始が被ってしまった点は不運ではありますが、日産の歴史の大いなる1ページとして記憶されることでしょう。
■アキュラ NSX 量産第一号車(120万ドル/1.5億円)
アキュラ NSX 量産第一号車
こちらもLCコンバーチブルと同じく、チャリティオークションとしてバレットジャクソンに2016年に出品された量産第一号車のアキュラ NSX(日本名:ホンダ NSX)。
10年以上のブランクを経ての復活、さらに開発は日本のホンダだけでなく米国ホンダも大いに関与、量産は米・オハイオ州に新設された工場で行われるとあって、アメリカでの注目度の高さが話題となっていたNSXは、現在国内向けの税込新車価格が2,420万円なのに対し、5倍以上の高値となる120万ドル(約1.5億円)で落札されました。
実はNSXは、米国ではかなりお安めな価格設定なこともあり、当時のベース価格は15.6万ドル(約1,890万円)。こちらから計算するとなんと8倍近い価格ということで、その注目度の高さが窺えますね。
こちらもLCコンバーチブルと同じく、落札金額は全額小児脳腫瘍患者を支援する非営利団体などに寄付されたとのことです。
トヨタからも億超え車が登場か?! ル・マン ハイパーカーに期待!
■トヨタ GRスーパースポーツ(価格未定)
トヨタガズーレーシング GRスーパースポーツ プロトタイプ(ル・マン24時間耐久レース2020 出展車両)
新たに日本からも億越えハイパーカーの登場かと噂されているのが、トヨタガズーレーシングによる「GRスーパースポーツ」です。
ル・マン24時間耐久レースなどを含んだ世界トップクラスの耐久選手権「WEC」に参戦していたTS050 ハイブリッドの主要パーツで構成されるという同車は、来たる2021年に導入予定とされている新たなWEC最高峰クラス「LMH(ル・マン ハイパーカー)」規定に則った仕上がり。
LMH参戦車両としてホモロゲーションを取得するには、レース参戦から2年以内に最低20台の生産が義務付けられます。 そのためGRスーパースポーツは、THS-R(トヨタハイブリッドシステム・レーシング)から絞り出されるシステム出力が1,000PSと発表されている弩級の車でありつつも、市販が予告されているようなものなのです。
ヘッドライトやレーシングカーにしては高めの最低地上高などはロードカーらしさを感じさせますが、他の部分はレーシングカーにしか見えないような車が、おそらく日本の路上を走ることになるとは、圧巻ですね。
詳細なスペックや価格に関して公式な発表はまだされていませんが、巷では億超え確実と見られているGRスーパースポーツ。同じくLMHに参戦すると見られていたアストンマーティン ヴァルキリーが参戦中止と報じられるなどのライバル情報も含めて、続報に期待しましょう。
まとめ
パガーニ ウアイラ トリコローレ
1億を軽く超えてしまうほどの高価格がつけられた車両についてご紹介してきました。
もちろんその手の車を普段見ることは皆無とはいえ、探せばかなりの種類があるもの。中には価格を公表していない車種もありますので、幸運なオーナーのみが密かに味わっている名車もまだまだ隠れていることでしょう。