車両盗難対策に役立つ「イモビライザー」とは?
「イモビライザー」、略してイモビなどと呼ばれることもあるこの装置は、車両が盗難されないようにするための防犯機能のひとつです。
イモビライザーを装備した車は、単純に鍵を偽造したとしてもエンジンを始動することは不能となります。10年ほど前までは国産車としては高級車や一部の車両にしか装備されていませんでした。
しかしその後、世界的なイモビライザーの標準装備化の流れもあり国内でも普及が進み、新車へのイモビライザーを装着することができる車種は現在では9割を超え、意識はしていなくても実はイモビライザー装着車に乗っている場合が少なくないと思います。
世界的には、EU諸国やカナダ、オーストラリア、ニュージーランド、中東湾岸諸国などでは法制化によりイモビライザーの装着が義務付けられています。
日本ではまだ議論されている段階で、完全な義務化には至っていません。
イモビライザーは盗難防止機能として長けてはいるものの、完全な装置ではなく、ガラスを割られたり車両ごと運ばれてしまうと盗難されてしまいます。
■標準装備化進む!イモビライザーの仕組み
イモビライザーを搭載した車の場合、なぜ鍵の形状を複製しただけのスペアキーではエンジンが始動できないのでしょうか。
その仕組みは電子的に鍵と車が通信をして照合する手続きを経ていることにあります。
従来型の鍵はキーシリンダーに対して物理的に鍵の形状が一致することでエンジンのセルモーターの電気スイッチをONにしてエンジンを始動していました。
イモビライザー付きの車両は車両側のイモビライザーコンピュータとイモビライザーキーに内蔵された電子部品(トランスポンダー)のキーID情報が一致しないと通電させない構造になっているのです。
このIDは数百万通りのIDを相互に連携しており簡単には解読できない仕組みになっています。
■愛車にイモビがついているか知りたい?ここをチェック
イモビライザーが愛車に付いているかどうか調べるには、メーター周辺の警告灯やインジケーターを確認してみるとよいでしょう。
車のエンジンが停止している時に、メーター内に鍵のマークの警告灯や、赤色などのインジケーターが点灯したり点滅していれば、その車にはイモビライザーが装備されている可能性が高いです。
ただし、赤色のインジケーターだけの場合は、セキュリティ機能の作動を示していることもあり、イモビライザーが備わっているとは限らない場合もあります。
メーター周辺の警告灯やインジケーターをチェック!
エンジンが停止時に鍵のマークの警告灯や赤色などのインジケーターが点灯したり点滅している場合 | イモビライザーが装備されている可能性が高い |
赤色のインジケーターだけの場合 | イモビライザーが備わっているとは限らない |
■車だけじゃない!バイクでもイモビライザー採用拡大中
車両盗難のおそれがあるのは自動車だけでなく、バイクも同じです。そこで近年では、バイクにもイモビライザーの搭載が進められています。
当初は高価格帯のモデルからの搭載で始まり、近年では普及価格帯のモデルにも備わっているという点は車と同じで、現在では250ccクラスでも搭載が始まっています。
自動車と異なり、人力でもある程度運べてしまうバイクは、盗難のリスクも高め。それでも、イモビライザーを装備した車両なら、窃盗犯としても後々必要になる手数の多さを嫌うものと思われ、盗難抑止にもある程度の効果があることが見込まれています。
自動車の「キー」の種類をおさらい、どれがイモビ対応?
かつては車の鍵といえば、ギザギザの金属製のものが当たり前でした。
しかしキーレスと呼ばれる遠隔操作で鍵の開錠、施錠が可能なリモコンキーが現れました。
その後は鍵の電子デバイス化が進み、イモビライザーキーも登場します。
そして最新のものでは鍵のボタン操作も必要無いスマートキーが広く普及してきています。
鍵を失くしてしまった場合や、スペアキーを作ろうとした場合に自分の車の鍵のことを良く知っていないといざという時に困ってしまうことがあります。
主な鍵の種類を解説しますので、参考にしてください。
■リモコンキー
これは最もメジャーなキータイプです。
鍵本体や、別体式のリモコンにボタンがついていて、開錠と施錠をワイヤレスで行うことが出来ます。エンジンの始動は、ハンドル脇のキーシリンダーに鍵本体を差し込んで行うものがほとんどです。
昔はテレビのリモコンの様に赤外線を使って車に信号を送っていましたが、現在は電波式が主流となっています。
キーフリーのスマートキーが大いに普及している近年、見かける機会はだんだんと減ってきていますが、リモコンキータイプの鍵であってもイモビライザーを装備しているものもあります。
■スマートキー
スマートフォンの様に、現代の電子デバイスを形容する言葉となった「スマート」という名を冠した鍵です。
最近は軽自動車から高級車まで多くの車がこれを採用しています。国内で初めてスマートキーがオプション採用されたのは2000年登場の3代目セルシオでした。
簡単に説明するとポケットやかばんにこのスマートキーを入れておけば、鍵を取り出すことなく車の解錠・施錠やエンジン始動が出来るものです。
従来の鍵と決定的に異なることは車両と鍵が双方向に通信をすることで、車種によっては車両に近づくだけで解錠したり、離れるだけで施錠したりすることもできます。
これにより鍵をしまったまま車を使うことができるため、非常に便利な鍵と言えます。
鍵本体はカード型や四角や楕円の小型のタイプが多く、従来の金属製の鍵を緊急用に内蔵している場合がほとんどです。
登場初期には鍵を持ったまま同乗者が降りてしまい、その後エンジンを切ったら再始動が出来なくなるなどのトラブルもありましたが、現在はエンジンがかかったまま鍵が車から離れると警報音を鳴らすなど工夫されています。
これにイモビライザーの機能が加わったタイプも多く存在します。
■メカニカルキー
旧車などでよく見られるのが、ドアロック用のリモコン機能も備わらないメカニカルキータイプ。キー本体の溝形状でのみセキュリティを担保しているので、簡易に作成した合鍵でも解錠・エンジン始動ができてしまいます。
イモビライザータイプのキーは、スペアの作成費用がかなり嵩んでしまいますが、単純なメカニカルキーの場合はスペア作成も安価に可能。
近年では、ノコギリのようにギザギザした山を持つタイプではなく、「ウェーブキー」と呼ばれる彫り込みタイプの溝形状を持つことで、ピッキングに対する高い防犯性を付与したメカニカルキーも多く用いられています。
メカニカルキータイプでイモビライザー機能が付いていることは稀と思われますが、後付けのイモビライザーシステムやセキュリティシステムと組み合わせることで、現代的な防犯対策を行うことが可能になります。
イモビ付きスペアキーは作れる?イモビの電池って切れるの?
イモビライザー搭載車のスペアキー(合鍵)をつくる場合には、物理的な金属製の鍵だけではなく、このID照合に関わる電子部品も新たな鍵に登録する必要があり、専用の機材を用いて解析して設定する必要があります。
車によっては車側のセットアップも必要で、ディーラーでしか作成できない場合もあります。
一般的には数百円でスペアキーを作ることが出来ますが、イモビライザー付きの場合やスマートキータイプの場合にはスペアキー作成に数万円の費用が掛かります。
紛失すると従来の鍵のようにJAFや専門業者を呼んでも簡単には鍵が開けられないデメリットにもなっています。スペアキーは必ず事前に作って保管しておいた方がいざというときに対処が可能です。
また、イモビライザーのチップ自体は、車両側のアンテナから電源を供給できることが多く、イモビライザーチップ用の電池交換などは必要とされないことがほとんどです。
リモコンキータイプのイモビライザーキーなら、車両のキーシリンダー周辺にアンテナがある場合が多く、エンジンをかけようとすると自然とイモビライザーチップに電源が供給されることになります。
スマートキータイプのイモビライザーキーでは、ドアロック用の電波には電池が用いられるので、電池が消耗するとドアロック解除ができなくなる場合も。また、その場合、イモビライザー用の電波も伝達距離が短くなったりする場合もあるので、エンジンをかけるためには車両のスタートボタンなどの近くにキーを近づけるなどの対処が必要になる場合もあります。
メーカーや車種によっても対応の仕方が異なりますので、詳しくは取扱説明書をしっかりと参照することが必要です。
装着車も油断禁物!イモビでは防げない最新犯罪傾向
■イモビ作動中のランプ点滅、防犯効果はあるの?
イモビライザー搭載車はメーター周辺やインパネ周辺にセキュリティがONになっていることを知らせる赤いランプが点灯する場合があります。
これはユーザーに施錠状態を知らせるためだけでなく、犯行に及ぼうとする者への警告として有効です。
無理に開錠したりエンジン始動を試みると警報音を発する場合もあるため、イモビライザーが装備されていない車種よりは装備されている車種で警告ランプが点灯している場合の方が圧倒的に抑止力はあると思われます。
しかし現代の窃盗団は事前に盗難車種の情報を徹底的に調べ上げ、専用の電子デバイスを用いて犯行に及ぶことが多く、メーカー側の盗難対策と犯人達はいたちごっこのような関係にあります。
このような専門的な窃盗集団を相手にしてしまうと、イモビ作動中のランプの点滅は、もはや意味がないものとも言えそうです。
■イモビを無効化!その名も「イモビカッター」
長い間防犯対策として無敵という扱いを受けてきたイモビライザーですが、犯罪集団の技術力向上も凄まじく、「イモビカッター」と呼ばれる専用器具を用いることで、イモビライザーを簡単にリセットできてしまうことが分かってきています。
本来、イモビライザーを装備した車は、車側とキーでワンセットのIDが登録されており、本物のキーが近くにあることを検知しないとエンジンが始動しないはずなのですが、イモビカッターを用いるとそのIDを任意のものに変更ができ、窃盗犯手持ちのキーを本物として上書き登録することができてしまうとのことです。
イモビカッターを使用するには車内に侵入する必要があるものと思われ、車両のセキュリティシステムなどで追加の防犯対策をすることも可能ですが、ちょっと停めるだけだから、とロックしないまま車両を離れたりしてしまうと、あっという間に盗まれてしまう可能性もあるということです。
イモビライザーだけでなく、二重三重と防犯対策をしておく重要性がありそうです。
■イモビの電波そのものをハイジャック!話題の「リレーアタック」
リレーアタックによる盗難手口
また、イモビカッターのように車両周辺でゴソゴソと作業をする必要すらない巧妙な手口として特に最近話題に上っているのが「リレーアタック」でしょう。
これは、オーナーの持つ本物のキーの電波信号を傍受して、その信号を使うことでさもオーナーがロックを開け、エンジンをかけているように車に勘違いさせる手法です。
近年装備が広まっているスマートキーの車では、一度エンジンをかけてしまえばキーが近くになくても走行し続けることが可能で、あっという間に持ち逃げされてしまうケースが多発しているようです。
上記の画像のように、お出かけ先で起こることもあれば、玄関に置いているスマートキーの信号を傍受されて駐車していた車を盗まれるなど、自宅でも発生するおそれのあるリレーアタック。
車を使っていない時は、ドアアンロック用信号やイモビライザー信号をスマートキー本体から発しなくする「省電力モード」にしておいたり、スマートキーを電波を通さないケースに入れておくなど、新たな防犯対策が求められています。
イモビライザーを後付けする方法
後付けタイプのイモビライザーキットも販売されています。
機構は簡単で、純正で採用されているようなID認証システムの親機と子機で構成されています。
車両側のスターター回路に割り込ませることで、子機(鍵)とID照合した場合のみ通電を許す構造です。
1万円を切る価格から販売されており、DIYで装着したり、車以外の建設機械やトラクター、バイクなどに付けることも可能です。
装置そのものは電子デバイスながら電気的には簡単な仕組みです。
しかし純正採用のイモビライザーは窃盗団により車種ごとに緻密に解析されている場合が多く、むしろ想定外のこのような社外の後付けイモビライザーの方が効果的な場合もあります。
しかし原理的には親機の位置がバレてしまうとハーネスを短絡してつなぐだけで解除となってしまうため、簡単に見つけられない位置に装備したり防犯対策を二重、三重に施す必要があります。
まとめ
イモビライザーが優秀でも最も強調しておきたいことは万全な防犯対策は無いという事です。
スマートキーではない古い車に後付けタイプのイモビライザーやセキュリティシステムを追加した方が、簡単に盗難出来ない場合が多いようです。
相対的に、レクサスなどの最もセキュリティシステムの進んだ高級車の方が専用端末により一瞬で開錠とエンジン始動が為されるなど電子デバイス一辺倒の対策は脆弱性が指摘されています。
車両盗難はより巧妙に高度化、ハイテク化されていますのでハンドルロックを付けたり取り外す、見
えないところに別途始動スイッチを設けるなどアナログな手法の対策を重ねることで盗難されにくくなります。
防犯カメラの設置やGPSの搭載など二重、三重の対策をすることで盗難を遅らせたり犯人逮捕につながります。
本格的な防犯対策は専門のセキュリティ装置施工業者などに相談してください。大切な愛車、守るためにも物理的な対策を含め、検討してみては如何でしょうか。
よくある質問
■イモビライザーってなに?
イモビライザーとは、エンジンをかける際、車がキーを自動的に照合することで、所有者のキー以外ではエンジンをかからなくする防犯機能です。イモビライザーを装備した車では、キーに微弱な電波でIDを発信するチップが内蔵されており、この電波を車がキャッチし、それが車のIDと一致した場合にのみエンジンがかかります。
■イモビライザーはどうやって使うの?
別途初期設定が必要だったり操作が必要だったりするセキュリティ機能とは違い、イモビライザーは特に操作する必要のない防犯機能です。車とキーの信号は最初からセットになっているので、普段通りエンジンをかけたり切ったりするだけで、イモビライザーは自動的に作動します。
■今乗ってる車にイモビライザーがついてるか知りたい
メーター内の警告灯やインジケーターランプで簡易的に判断することができます。車のエンジンが停止している際に、メーター内に鍵の形をした警告灯や、赤色などのインジケーターランプが点滅している場合、イモビライザーが装備されている可能性が高いです。ただし、インジケーターランプのみの場合は、セキュリティシステムの作動を知らせているだけの場合もあるので注意が必要です。