歴代ランサーエボリューションをご紹介!
三菱 ランサーエボリューションX
三菱の最もアイコニックな車は?と問われると、パジェロやデリカといったオフロード車を挙げる方もいらっしゃるでしょうが、ランサーエボリューション(ランエボ)も有力候補の一台でしょう。
出自は実用セダンのランサーながら、ターボエンジンや四輪駆動が与えられたWRCウェポンとして生まれたランエボは、途中からはランサー本体よりも知名度があったのではないかと思われるほどに高い人気を誇りました。
同様の成り立ちを持つスバル インプレッサWRXとのライバル関係も今は昔。10世代目のランエボX(テン)が2015年に生産終了したことでランエボの歴史は幕を閉じており、三菱は乗用車としてはSUVに注力することを既に発表していることもあって、ランエボの復活はもはや絶望的でしょう。
スポーツカーがどんどん減っていくのは悲しいことですが、だからこそ今存在しているランエボたちの魅力が深まるというもの。
伝説的なランエボを、世代ごとにご紹介していきます。本記事ではこれ以降、ランサーエボリューションのことをランエボと表記させていただきますので、ご了承ください。
■【伝説の幕開け】第一世代(ランエボ〜ランエボIII)
三菱 ランサーエボリューション(初代 1992年型)
WRC(世界ラリー選手権)に出場する車両として公認を得るために開発・販売されたランエボは、1992年に発売されました。
初代ではまだまだエアロパーツもおとなしい印象ですが、搭載していた2.0リッター 直列4気筒ターボエンジンは250PSを発揮。
約1.2トンの軽量ボディを活発に走らせるには十分すぎるハイパワーで、当時販売されていたR32型スカイラインGT-Rよりも優れたパワーウェイトレシオを誇りました。
当初、初代ランエボは、WRC公認に必要な2,500台のみの限定販売とされていましたが、宣伝を一切しなかったにも関わらず注文が殺到。最終的には人気におされて、およそ8,000台が販売されたとされています。
三菱 ランサーエボリューションII WRC
もちろんスポーツカーたるもの、進化を止めるわけにはいきません。
出力を向上させる、足回りの構造変更で回頭性を向上させる、エアロパーツを進化させるなど、1代限りの限定モデルの予定はどこへやら、II、IIIと進化を続けたランエボ。
1995年発売のランエボIIIベースのWRCカーによって、ついに悲願のWRCチャンピオンを獲得します。
■【止まらない進化】第二世代(ランエボIV〜ランエボVI)
三菱 ランサーエボリューションVI(1999年型)
ランサーのフルモデルチェンジに合わせ、シャーシからの進化も達成したランエボIVからVIは、第二世代に分類されます。
第二世代の尖兵、IVの特徴は、それ以降も進化しながらXまで採用され続ける「アクティブ・ヨー・コントロール(AYC)」の新搭載。
後輪左右への駆動力を可変させてコーナリング性能を向上させるAYCは、もはや反則?!と思うほどにランエボの回頭性を向上させ、より一層スポーツセダンとしての魅力を向上させました。
三菱 ランサーエボリューションVI トミー・マキネン エディション(1999年型)
Vからはオーバーフェンダーを装着して、3ナンバーサイズにワイドボディ・ワイドトレッド化。VIではフロントのナンバープレート装着位置を左側にズラすなど、細部に至る徹底的な改良もあって、WRCでも大活躍。
当時のワークスドライバー、トミー・マキネンのドライバーズチャンピオン4連覇を記念して特別仕様車「トミー・マキネン エディション」が設定されるなど、ランエボの黄金時代とも言えるでしょう。
トミー・マキネン エディションは、専用デザインのエアロバンパーを採用、サスペンションやステアリングにも手が入るなどしており、その見た目のインパクトもあって現在に至るまで大人気のグレードです。
■【高級感とハイテク】第三世代(ランエボVII〜ランエボIX)
三菱 ランサーエボリューションIX プロトタイプ
再び、ベースモデルであるランサーがランサーセディアへフルモデルチェンジしたことに合わせて登場した第三世代。
それまでのランエボと異なり、ランエボVIIではかなり大人びた印象も与えるデザインに変更。オーバーフェンダーはよりデザイン的に滑らかなブリスターフェンダーになり、プロジェクターヘッドランプによる精悍な顔つきもあって、スポーツカーながら上級車の雰囲気も漂いました。
VIIでは、それまでのAYCに加え、新たに「アクティブ・センター・ディファレンシャル(ACD)」を新規搭載。前後輪の差動制限を電子制御することで、四輪駆動車ながら小回りを効かせるセッティングにも変更ができるようになり、さらに回頭性が向上しました。
三菱 ランサーエボリューションワゴン(2006年型)
より上級化したエクステリアなども特徴的ですが、バリエーション展開の多さも第三世代の特徴。VIIにはシリーズ初となるオートマチック搭載モデル「GT-A」が用意されたり、IXのワゴンモデル「ランサーエボリューションワゴン」が登場するなど、ユーザー層を広げたい意図がよく現れていた世代です。
実は第三世代ランエボではワークスWRC参戦をしておらず、ベース車両のランサーセディアで行われていたという逸話もある第三世代。
残念ながらWRCへのワークス参戦自体も2005年シーズンで終わってしまうのですが、ランエボ自体の高い走行性能はラリーや耐久レースなどで、プライベーターによって非常に重宝されていました。
■【10世代目にして伝説の終焉】第四世代(ランエボX)
三菱 ランサーエボリューションX(2008年型)
WRC参戦という重荷がなくなり、独自の魅力を追求できるようになったランエボXでは、ベースモデルが新たに「ギャランフォルティス」という別名称に変わったものの、ランエボの名前を維持。
また、これ以前のランエボのような期間や台数を限定した販売をやめ、カタログモデル化されました。
迫力のあるエクステリアはより一層上級化が進み、カリカリのスポーツカーというよりも上級GTのような雰囲気さえ感じさせましたが、中身の先鋭化は一層進行。
新たに独・ゲトラグ社開発の6速デュアルクラッチトランスミッション「ツインクラッチ SST」を搭載するなど、走行性能の向上には当然余念がありませんでした。
三菱 ランサーエボリューションX 英・サウスヨークシャー州警察パトロールカー
Xでは、それまでのAYCやACDという装備を昇華させた「S-AWC(スーパー オールホイールコントロール)」を搭載。四輪それぞれへの駆動力配分を電子制御しつつ、横滑り防止装置やトラクションコントロールと統合的に制御するという、現代的なアプローチが特徴的でした。
室内では本革張りのシートや高性能オーディオも魅力的だったランエボX。エンジンをアルミブロックとするなどの動力性能向上と、居住性や高級感まで向上させた欲張りな仕上がりだったと言えるでしょう。
残念ながら、ランエボの最終型となってしまったXですが、その実力はフィナーレを飾るにふさわしい妥協のないものでした。
三菱 ランサーエボリューションXのスペック
ボディサイズ(全長×全幅×全高) | 4,495mm×1,810mm×1,480mm | |
---|---|---|
ホイールベース | 2,650mm | |
最大乗車定員 | 5名 | |
車両重量 | 1,530kg | |
燃費 | - | |
エンジン種類 | 直列4気筒ターボ 1,998cc | |
エンジン最高出力 | 230kW(313PS)/6,500rpm | |
エンジン最大トルク | 429N・m(43.7kgf・m)/3,500rpm | |
駆動方式 | 四輪駆動(フルタイム4WD) | |
トランスミッション | 5速MT | |
新車価格 | 4,089,455円(消費税抜き) |
今では信じられない?!他にもあった、三菱のスポーツカーたち
三菱 カタログ
実用性重視の車ばかりとなった現在の三菱のラインナップからは想像もできませんが、三菱のスポーツカーの歴史はとても長いものでした。
しかもその長い歴史の中で、三菱らしい技術力満載のスポーツカーは、ライバルにはない独自の魅力を振りまいていたのです。
三菱スポーツの全てをご紹介したいところですが、近代でもアイコニックだった3台に絞ってご紹介します。
■GTO(1990〜2001年):ハイテクハイパワーのフラッグシップ
三菱 GTO(1990年型)
車名としては、1970年発売のギャランGTOの系譜となるGTOは、バブルの勢いが生み出した最も日本車らしいスポーツカーの1台でしょう。
国内では全車4WD、3.0リッター V6を自然吸気とツインターボの2種類を積んだGTOは、当時のライバル、スカイラインGT-Rやスープラに対抗できる三菱スポーツのフラッグシップカーでした。
未来を先取りしすぎていたGTOは、現代でもまだ珍しい前後スポイラーを可動させる「アクティブエアロシステム」や、スイッチひとつで排気音が変えられる「アクティブエグゾーストシステム」など、先進電子制御が満載。
残念ながらスポーツカー市場の縮小もあり、後継のないまま生産終了してしまいますが、三菱の技術力の高さを感じさせる名車でした。
■FTO(1994〜2000年):刺激的スタイルのFF軽量スポーツ
三菱 FTO(海外仕様)
GTOよりも小型のFTOは、こちらも1971年発売のギャランクーペFTOの系譜。ご先祖同士がそうであったように、GTOの弟分として登場しました。
GTOと異なって全車FF仕様とされたFTOは、2.0リッターながらV6という稀有なエンジンを搭載。やや鼻先の重さはありましたが、設計の妙で高い旋回性能を誇りました。
シャープでありながら流れるようなデザインは、現代でも通用しそうなタイムレスなもの。ファンも多かったのですが、こちらも後継のないままモデル終了となってしまいました。
■エクリプス(1989〜2012年):名前は引き継がれた、スタイルは…
三菱 エクリプス(米国仕様 2011年型)
ここでご紹介した3台の中では最も最近まで生産されていたのが、エクリプス。
北米市場メインの車種ではありましたが、初代、2代目、3代目では、アメリカ生産の車両が左ハンドルのまま国内導入されるという特殊性はありつつも、国内で正規販売されていました。
コンパクトクーペながら四輪駆動やターボエンジンも選択できたエクリプスは、当時米国で流行の兆しのあった「スポーツコンパクト」の流れにも乗って大ヒット。
映画「ワイルドスピード」などでの活躍も印象に残っていますね。
比較的2ドアクーペ市場が長く残っていた米国での生産は2012年まで続けられましたが、終了。現在ではコンパクトSUVのエクリプス クロスに名前が引き継がれています。
【在庫減少中!】三菱 ランサーエボリューションの中古車相場
三菱 ランサーエボリューションX(2008年型)
WRCという、華々しい世界の舞台で活躍したランサーエボリューションですから、人気は日本だけではなく世界的なもの。
VII以降では正規輸出も始まったのですが、それ以前のモデルや、日本国内限定モデルなどでは海外へ並行輸出されて消えてしまう在庫も数多く、国内のランエボの在庫数はどんどん減っています。
2020年10月現在、在庫台数は全世代合わせて271台。最も在庫が多いのは最終型のXで176台、ついでVIIからIXの第三世代が65台、IVからVIの第二世代で18台、III以前の第一世代ではたった8台と、年式の古さはあれど圧倒的な品薄状態が続いています。
興味深いことに、第三世代以外では中古車平均価格は200万円台を下回らず、第三世代でも190.7万円とかなり高値安定。人気の高さが伺えますね。
特に、ランエボの長い歴史のフィナーレとなったファイナルエディションや、トミー・マキネンエディションなどの人気稀少限定仕様などはプレミア価格化が進行しており、700万円台が相場になっているほど。
これからもなかなか下がりそうにはありませんので、ランエボが欲しい方はお早めにチェックしてみてください。
三菱 ランサーエボリューションワゴン(2005年型)
変わり種、ランサーエボリューションワゴンも在庫の少なさは同様で、確認できるのはたったの11台。
平均価格としては149.3万円とやや安くなっており、荷物も積める快速ワゴンとして非常に魅力的な相場となっています。
あまり状態の良し悪しを選べるような在庫数ではありませんが、走れるワゴンだっただけに走行距離も走ってしまっている車両が多く、程度の確認は慎重に行いたいところです。
まとめ
三菱 ランサーエボリューションX
三菱といえばランエボ、そんな時代は長く続いたのですが、今となっては昔のことですね。
性能の高さもさることながら、4ドアセダンとしての実用性の高さ、性能を考えればバーゲンだった頑張れば手が届く価格なども魅力だったランエボは、現在の三菱の状況を見る限り、もう復活することはないでしょう。
だからこそ今走っているランエボを大事にしていきたいところ。将来、三菱随一のクラシックカーの一台となるに違いない名車なのですから。