車検とは?
《写真提供:photoAC》
車検は、正式には「自動車検査登録制度」と言います。長い名称なので、略して「車検」とか「継続検査」と呼ばれています。この制度は、クルマが現時点で保安基準に適合しているかどうかを国が検査するもので、クリアすると次の車検までの間、公道を走ることが認められます。
車検は任意のものではなく、「道路運送車両法」(第61条「自動車検査証の有効期間」)という法律でおこなうことが定められており、安全面に問題がないか、排気ガスなどが基準値内か、などの項目を検査するよう決められています。ですから、ある一定期間ごとに必ず車検を受ける必要があります。
ディーラーなどから車検の案内がくると、「もう車検の時期か」と思うことは少なくないかもしれませんね。では、車検の有効期限、つまりどれくらいの周期で車検は受けなければならないのでしょうか?
■車検の有効期間
車検の有効期間は、車種によって異なります。通常の自家用車であれば、
・新車登録から初回の車検:3年間
・それ以降:2年間
です。キャンピングカーなどの8ナンバー特殊車は、初回検査も含めて、すべて2年ごとの車検。バス・タクシー・ハイヤーなどの旅客車、車両総重量が8トン以上の貨物車は、初回検査も含めて、すべて1年ごとの車検になります。自家用の普通自動車と比べて、バスやタクシーは距離を走りますし、商用なので、車検の有効期限が短いという特徴があります。
ちなみに、排気量250ccを超えるオートバイにも車検があり、自家用車と同じで初回車検が3年、以降は2年ごとになります。
■車検の歴史
日本の車検制度は、はじまって90年
車検制度のはじまりは、戦前までさかのぼります。1930年(昭和5年)、タクシーやバスといった商用車の安全性を確保するためにスタートしました。この時代、自家用車を持っている人は少なかったとはいえ、所有していても車検の義務がありませんでした。しかし戦後、自動車が徐々に一般化していきます。そして、1951年(昭和26年)に、車検が商用車だけでなく、一般車両にも義務化されました。さらに、自動車事故が増加するに伴って、1955年(昭和30年)に被害者救済のための「自動車損害賠償保障法」が成立。車検制度と密接な関係がある自動車損害賠償責任保険いわゆる「自賠責保険」への加入が義務づけられました。この間も、軽自動車は車検を受ける必要がありませんでしたが、1973年(昭和48年)ついに義務化されました。
補足として、2002年(平成14年)には環境配慮のために「使用済自動車の再資源化等に関する法律」、いわゆる「自動車リサイクル法」が成立しています。環境省のホームページには、「車検時及び使用済自動車を引き渡す時に必要になります」とありますが、自動車リサイクル法を主導している公益財団法人自動車リサイクル促進センターのホームページでは「現在、継続検査を受ける際にリサイクル券の提示は必要ありません」となっています。リサイクル券の提示が必要かどうかは、車検を受けるディーラーや自動車工場によって異なる可能性がありますので、車検前に直接確認された方がよいかもしれません。
車検にかかる費用
《写真提供:photoAC》車検には費用が結構かかることが悩み
車検にかかる費用は、大きくわけると以下の3つになります。
・法定費用:車検でかかる税金
・車検基本料金:各業者が自由に設定する基本料金
・整備費:クルマの状態に応じて必要とされる整備の料金
■法定費用
車検時に必要となる法定費用は、
・自動車重量税
・自賠責保険
・印紙代・証紙代
です。
「自動車重量税」は、1年ごとにかかる税金ですが、新規登録あるいは車検のときに、車検証の有効期間にあわせてまとめて支払います。自家用の普通自動車は車両の重さ0.5トンごとに税額が変わり、軽自動車は定額です。ただし、エコカー減税適用車であるか、新車登録からの経過年数が何年か、などによって金額が変わります。
「自賠責保険」は、車種・保険期間・地域で、保険料が決められています。2021年4月1日から適用される「本土(北海道・本州・四国・九州)」用の自賠責保険金額は、
■24か月の場合
・自家用乗用自動車:20,010円
・軽自動車:19,730円
■25か月の場合
・自家用乗用自動車:20,610円
・軽自動車:20,310円
です。2020年4月1日以降より、1,000円ほど安くなりました。ちなみに「沖縄本島」の場合、保険料は「本土」の約半分の金額です。
「印紙代・証紙代」は、車検適合証の発行に関わる手数料です。自動車検査登録印紙を「印紙」、自動車審査証紙を「証紙」と表しています。どうして2種類あるのかというと、支払先が2つあるから。印紙は国に手数料や税金を納めるときに用いるもので、証紙は支払先が地方公共団体の場合に用います。なお、車検にかかる印紙・証紙代は、車検を受ける工場が「指定工場」か「認定工場」か、また軽自動車、3ナンバー車、5ナンバー車といったことで変わります。
こうした「法定費用」は、「印紙代・証紙代」が指定工場か認定工場で数百円程度の金額差はあるものの、同一地域であれば基本的にどの業者でも、同じ料金がかかります。一方、「車検基本料金」と「整備費」は、業者が自由に決められる費用なので、依頼する業者によって金額が異なります。「ディーラーでの車検は高い」とか、「車検専門店は比較的安く済む」とか言われたりするのは、この「車検基本料金」と「整備費」の金額差ということになります。
車検はどこで受けられるの?
車検はディーラーで受けるもの、と思っておられる方も多いかもしれませんが、車検を受けるお店は自由に決められます。代表例をいくつか取り上げ、メリットとデメリットを解説します。
■ディーラー
ディーラー車検
自分のクルマを取り扱う自動車メーカー系列のディーラーで車検を受ける最大のメリットは、「安心して任せられる」こと。自社ブランドのクルマですから、整備や修理に関する情報や経験が豊富で、信頼がおけます。また、営業担当者が決まっていれば、細かな部分でもサポートを期待できます。
デメリットは、なんといっても費用が割高になるところです。「車検基本料金」が他の業者と比べて割高ですが、加えて過剰整備を思われる内容が提示されたり、交換する部品代や技術料も割高であることが多いようです。
■自動車整備工場
自動車整備工場
自動車整備工場で車検を受ける場合、通常はディーラーと比較して、価格が安く抑えられます。その整備工場が「指定工場」であれば、技術力も高い傾向にあり、安心感もあるでしょう。というのも、指定工場であるためには、国が定めた厳しい認定基準をパスする必要があり、車検検査用の設備やスペース、国家資格取得者がいることなど、一定の水準が保証されるからです。
デメリットは、業者によって設備や品質に、ばらつきがあることがあげられます。知り合いの業者さんなどがいれば問題ないかもしれませんが、評判を確かめてから車検を依頼しないと、期待したほどの整備がおこなわれていなかった、ということもありえます。
■車検専門店
車検専門店
メリットは、簡単かつスピーディーで、低価格なところ。車検に特化しているため、効率的で、一定水準のサービスを実現しています。多くの場合、インターネット予約や、「1日車検」などに対応しており、ディーラーで車検を受けるよりも安く済むようです。
デメリットは、業者による技術格差が大きく、整備や修理に不安が残るところです。点検が細かな個別オプションになっている場合、項目を増やしていくと結果的にはディーラーよりも割高になってしまうケースもあります。
■大手カー用品店
カー用品店
メリットは、ドレスアップしたクルマ、社外装備をつけたクルマに強いところ。車検に適合するパーツを使って、車検に対応するノウハウを持っています。費用面でもかなり抑えられるでしょう。
デメリットは、ディーラーや車検専門店などと比べて、経験値は低めで、検査設備や整備能力に不安が残るところ。代車などにも対応していない場合が多いようです。
■ガソリンスタンド
ガソリンスタンド
最近では、国家資格を有した整備士を配置するなど、ガソリンスタンドでも車検を受けられるところが増えてきました。ガソリンスタンドはクルマ関連の業者の中で最も身近な存在ですから、気軽に車検を申し込めるメリットがあります。ガソリンの給油ついでに、車検の申し込みをおこなえて、手間がかかりません。
デメリットは、品質にばらつきがあるところ。まして、そのガソリンスタンドが提携先に依頼して車検をおこなっている場合、整備士の技術レベルが分かりにくく、不安が残ります。
■自分で車検に出す、ユーザー車検
ユーザー車検
最低限の費用で車検を済ませたいのであれば、ユーザー車検という方法もあります。クルマの知識がある程度あって、整備やパーツ交換も自分でできるなら、代行費用などがかからないため、もっとも安く済みます。
デメリットは、陸運支局や軽自動車協会が平日日中に限られるので、時間の確保が難しいこと。加えて、車検前は不適合箇所がないよう自分で対応しなければなりませんし、自分では対処できないような故障部分を発見してしまった場合は、別途修理工場などで修理してもらうなどして、結局その費用がかかってしまうことです。
車検と違うの?「法定24か月点検」の違い
車検と法定24か月点検は、通常一緒におこなわれます。費用も同時に請求されますし、納品請求書でも「検査+定期点検整備」といった形でひと項目にまとめられていたりします。そのため、車検代と思って支払っている費用の中に、法定24か月点検の費用が含まれていても、気がつかない方は少なくないかもしれません。これらは別々のもので、それぞれ違う目的でおこなわれている検査と点検です。
車検は、「クルマが公道を走るために、国が定めた安全面や環境面の基準を満たしているか」を検査します。自動車の構造・装置などが保安基準に適合しているか、排気ガスの濃度・音量などの環境面では規定数値内におさまっているか、といったことを検査します。法律的に、クルマが公道を走っていい状態であるかを検査するもので、点検ではありません。
一方、法定24か月点検は、「クルマを正常な状態に保ち、故障や事故を未然に防ぐ」ためにおこなわれます。つまり、より安全で快適に走れるように点検することが目的です。では、車検が通れば、点検は受けなくてもいいのかというと、そうではありません。「法定」という名前の通り、道路運送車両第48条(定期点検整備)で規定されている義務です。24か月法定点検では、エンジンやブレーキなどの決められた56項目を点検します。もしかしたら、「車検は受けているけど、法定24か月点検なんて受けていたかな?」という方もいらっしゃるかもしれませんが、心配はいりません。車検をディーラーや整備工場に依頼している場合、法定24か月点検は同時に受けているはずです。
■万が一、車検期間を過ぎてしまったら?注意が必要です!
車検切れで、公道を走ったらたいへん!
先に言うと、車検切れ自体に問題はありません。当然ですね。たとえば、中古車販売店では車検切れのクルマが豊富にあります。うっかり車検が切れてしまっても、焦る必要はありません。しかし万が一、車検切れのクルマで公道を走行してしまうと、違法になります。「道路運送車両法第58条」に抵触し、「無車検運行」は、
・交通違反点数:6点
・罰則と罰金:6か月以下の懲役、または30万円以下の罰金
・行政処分:免許停止
という非常に重いペナルティの対象です。しかし、話はこれだけでは終わりません。通常、車検の切れているクルマは、イコール自賠責保険も切れています。その場合、今度は「自動車損害賠償保障法第5条」の違反となり、「無保険運行」で、
・交通違反点数:6点
・罰則と罰金:1年以下の懲役、または50万円以下の罰金
・行政処分:免許停止
というペナルティがあります。
悪意はなくても、車検切れ・自賠責保険切れのクルマで公道を走ると、安全性が担保されていないというだけではなく、自賠責保険も使えず、刑事罰まで適用されてしまう可能性があると考えると、まさにリスクしかありません。
実は車検切れのクルマは結構多い!「うっかり」を防ぐには?
2014年、名古屋市で軽自動車に対しておこなわれた調査によれば、1万3815台の軽自動車に対して、106台もの車両が無保険車でした。割合にして、0.76%です。つまり、約130台に1台は無保険車(=車検切れ)という計算です。
そう考えると、車検切れは滅多におきないことではなく、起きてもおかしくないことだと分かるでしょう。では、うっかり車検切れとなってしまうことを、どうしたら防げるでしょうか?
■ディーラーや自動車販売店からの郵便物をチェックする
《写真提供:photoAC》郵便物をチェックしてうっかりを防止
車検が近いことを自治体などが教えてくれることはありません。しかし、クルマを購入したディーラーや自動車販売店、前回車検でお世話になった業者さんは、車検が近づくとお知らせしてくれます。
もちろん、それは商売目的のダイレクトメールですが、車検が近いことを気づかせてくれます。ぜひ個人宛に来ているハガキや封筒は、ちょっとだけでも目を通しておくと、アラートとして働いてくれるでしょう。なお、ネットオークションなどの個人間取引でクルマを購入した場合や、引っ越しで郵便物が届かないといった状況では、この方法が使えませんのでご注意ください。
■スマートフォンなどのカレンダーアプリを活用する
スマートフォンなどのカレンダーアプリは、数年先の予定を簡単に入力できて、そのときが来たらお知らせしてくれます。そこでおすすめなのが、クラウド型のカレンダーアプリ。これなら、たとえスマートフォンを機種変更しても情報を引き継いでくれますし、パソコンなどでも確認できるため、気がつきやすいでしょう。
■車検ステッカーを活用する
車検ステッカー
車内には、車検の期限が分かるステッカー、つまり検査標章を貼ることが義務づけられています。2017年1月よりデザインとサイズが変わり、裏面には「自動車検査証の有効期間の満了する日」として、年月日が表示されています。車内を掃除するときなどに、確認する習慣をつけておくとよいでしょう。
■余裕をもって、車検の予約をする
クルマの購入時期の関係で、年末や年度末が車検時期という方は少なくありません。しかしそれらの時期は、世間的にもあわただしい時期。余裕をもって車検予約しておかないと、気がついたときには過ぎてしまっていた、なんてことになったら大変です。車検自体は30日前からしか受けられませんが、予約はそれよりずっと前から可能です。余裕をもって予約して、車検切れを防ぎましょう。
■もし、うっかり車検切れになってしまったら?
《写真提供:response》仮ナンバーを取得すれば、車検切れでも走れる
前述の通り、車検切れのクルマは、そのままでは自力走行できません。ですから、役所で仮ナンバーを取得して走るか、積載車で運んでもらうことになるでしょう。
仮ナンバーを取得して走る際に注意しなければならないのは、自賠責保険の加入を忘れないことです。通常、インターネットで入る形の自動車保険会社(ダイレクト型自動車保険)では、自賠責保険を取り扱っていないので、代理店型の損害保険会社に問い合わせるとよいでしょう。
まとめ
車検のついてのあれこれをまとめました。クルマに乗っていれば、一定期間ごとに必ず受けなければならないものです。そのときには、どうぞ今回の記事をお役立てください。