愛車はターボ?知っておきたい「インタークーラー」
マツダDISIターボエンジン用スポーツインタークーラー
インタークーラーは、過給器(ターボ)を持つ車に搭載されている冷却装置になります。現代のターボエンジンの性能を維持するためには不可欠な装置であり、設置されている場所やタイプが車種によって異なります。
ターボチャージャーで加圧された空気はエンジンに送られますが、温度が高くなってしまいます。空気をエンジンに入れる前に冷却しておかなければ、燃費効率やエンジンのパワーが低減し効率が悪くなります。
そこで吸気温度を下げるための仕組みである、インタークーラーが活躍するというわけです。コンプレッサーから入ってきた空気を冷やして、タービンに送るのがインタークーラーの構造の概要となります。
冷却水を冷やす役割を持つラジエーターとは、役目はもちろん構造も似通っています。また熱交換器という性質上、ターボだけでなく本体も熱を持ちやすいです。
常に効率良く空気を冷やせるよう、インタークーラーの本体を冷やすために走行風が当たりやすい場所に設置さえることが多くみられます。
■インタークーラーの役割とは?
ターボエンジンが作動した際、チャージャーに付随しているタービンがコンプレッサーを連動して作動させます。コンプレッサーが回転して空気を圧縮すると、圧縮された空気の温度が上昇します。
そのままの状況では温度の上昇した空気をダイレクトにエンジンへと送り込み、出力低下や燃費低減などの事態を招いてしまうという訳です。熱くなった空気を、エンジンに到達する前に冷やす必要があります。
インタークーラーが圧縮された空気の通り道とエンジンとの間に設置されているのは、圧縮により密度と温度が高まった空気を冷却することでエンジンの燃焼効率を高められるからです。
■インタークーラーはどこに取り付けられているのか?
先ほど走行風が当たりやすい場所に設置されることが多いとご紹介しましたが、インタークーラーの効率の良い作動を支えるために、多くの車ではフロントバンパーの開口部直後であったり、ボンネットにエアインテークを設けてエンジン上に設置したインタークーラーに直接風を当てるなどする例が多く見られます。
当然、インタークーラーを通り抜けた走行風は熱を帯びるので、ラジエーターやエアコン用のコンデンサーなどを塞いでしまう位置に取り付けられると、今度は水温が上昇傾向になります。そのため、純正品のインタークーラーでは、凝った位置に取り付けられている場合もあり、メーカーであっても冷却バランスに苦慮していることが伺えます。
インタークーラーとターボエンジンの関係
マツダDISIターボエンジン用スポーツインタークーラー
ターボとはエンジンの排気を利用し、エンジンにより多くの空気を取り入れることによって少ない排気量で大きなパワーを得るための装置になります。ちなみに、装置自体の正式名称はターボチャージャーと呼ばれています。
排気量は軽自動車の場合において上限は660ccとなっており、量が少ないほど税金が安くなるため出来る限り抑えたい箇所となります。そのためターボ機能を搭載して排気量を抑え込み、走行力を持った車種を開発することに関して大きなメリットがあります。
ただ、ターボによってより多く取り入れられた空気は、圧力が上がることで温度も上昇してしまうので、エンジン内で燃焼する効率が下がってしまいます。この温度上昇を改善する重要な役割を担うのがインタークーラーになります。
インタークーラーの種類は大きく2種類!
三菱 ランサーエボリューション III インタークーラー
インタークーラーは、大きく分けて空冷式と水冷式の2種類に分かれます。設置場所の制約や、車がどのような環境で使われるかに応じて、どちらを搭載するかが選択されます。
多くは走行中に得られる風を直接インタークーラーの本体に当てることにより、内部の空気を冷やしています。部品が少なくシンプルな構造であり、どちらかと言えば空冷式を搭載している車の方が多くみられます。
■1. 水冷式インタークーラー
空気に比べて熱容量の大きい水である、冷却水を用いて吸気の温度を下げるタイプになります。低速域でも吸気温を下げられたり、小さなシステムで高い冷却効果が得られるのが大きな特徴となっています。
ただ、部品点数が多くなるため、コストが高くなりがちという面もあります。また冷却水の温度以下に気温を下げることができないため、冷却水を冷やすための装置も別に用意しなければなりません。
近年では、より緻密な温度制御が可能であることや、コンパクトなので設置場所の自由度が高いことなどから、採用車種が増えてきています。
■2. 空冷式インタークーラー
ラジエーターの前などの外気が直接当たる場所に設置し、走行中に車が受ける風を利用して吸気温を下げる仕組みが空冷式となります。水冷式と比べて構造がシンプルでありコストが抑えられます。
加えて、高速になるほど効果を発揮するため、レーシングカーやチューニングカーにも適しているシステムとなります。
インタークーラーのコア部分に風を当てなければならないため、設置場所が限られるなどのデメリットもあります。
水冷式インタークーラー | 冷却水を用いて吸気温度を下げる。 | |
---|---|---|
空冷式インタークーラー | 走行中に車が受ける風を利用して吸気温度を下げる。 |
■インタークーラーに水鉄砲?!「ウォータースプレー」装着車も
一般的な走行状況だけでなく、サーキットやラリーなどスポーツ用途の走行も見込まれるようなスポーツタイプの車種などでは、インタークーラー本体に水を噴射する「ウォータースプレー」を装備していることもあります。
そのような車種では、メンテナンスや修理時の容易さを重視して空冷式インタークーラーを採用する例がポピュラーなので、必然的にウォータースプレーも空冷式インタークーラーとの組み合わせが一般的でしょう。
最近デビューした車では、トヨタが作った本格ラリーウェポン、GRヤリスのトップグレード、RZ“ハイパフォーマンス”のみ限定で、インタークーラーが「冷却スプレー機能付」にアップグレードされています。
何故ターボ装着車が増えているのか?
日本車での初のターボ車が登場したのは、1979年のことです。当時は排気量と自動車税の関係から、小さな排気量で大きなパワーが得られるターボ車が重宝されました。
それ以降80年代はスポーツモデル、すなわちハイパワー車の需要が拡大し続け、燃費がそれほど重要視されなかった時代背景もあわせて1990年代初頭にはピークを迎えます。
しかし、2000年代に突入するとパワーよりも燃費が求められ、排気量の上限が660ccである軽乗用車を除いてはターボ車の需要が大きく減ってしまいました。ターボ装着車が再び増え始めたきっかけは、直噴エンジンが一般的な存在へと格上げされたことにあります。
通常のポート噴射に比べて、直噴エンジンは燃焼室の温度を下げやすく、高圧縮化と直接燃料を吹くことによる燃焼室の温度冷却の効率化といった特色が、ターボの弱点を克服するのに役立ちました。
ターボと相性の良いエンジンが普及した上に、変速スピードが良くレスポンスが優れた多段ATが登場したことも、ターボ車増加の大きな要素となっています。ターボラグが少なく、NAエンジンのように容易に運転できるターボ車が増えました。
また、小さな排気量でパワーを得られるためエンジンを小型化することができ、小型化したことでエンジンの重量を軽くすることができます。それにより燃費が良くなるのも最近ターボ車が増えた1つの要因となります。
メンテ必須のインタークーラー、内部が汚れると効率ダウン
日常点検から本格的整備までこなすKTCツールセット
エンジンへと送り込まれる空気の通り道という性質上、インタークーラーは常に汚れた空気であるブローバイガスによって徐々に汚れていきます。ブローバイガスにはオイルをはじめとした不純物が含まれており、そういった異物がインタークーラー内で詰まってしまうと冷却効率が下がります。
汚染や詰まりが悪化すると、ノッキングなど燃焼不良によるエンジン不調を招きかねません。ハードな乗り方をしている場合は特に、定期的なメンテナンスが必要となります。
インタークーラーの内部を洗浄する際にやることは、ブローバイガスが通ったことで溜まった汚れを溶かすことです。これにより汚れが落ちますが、水を流し込むと錆の原因となるので絶対にやめてください。
なお、ホースや高圧洗浄機に至っては、フィンを潰す事態に繋がるためこちらも水で洗ってはいけません。インタークーラーを洗浄する際は、パーツ洗浄剤やホワイトガソリンを流し込むのが一般的となります。
汚れがきれいに落ちますが、こういった液体は揮発性が高く引火しやすいため火気には十分注意しましょう。洗い落とした液体の色に、汚れが見られず綺麗になってきたら十分に乾燥させて作業は完了となります。
洗浄後の注意点としては、万全の状態になってから装着することが挙げられます。エンジンに空気を送り込む装置であるため、中にゴミや液体が残っているとエンジンを壊してしまうかもしれません。
インタークーラーの内部・外部を問わず、洗浄する際はフィンを潰さないように注意してください。またインタークーラーを取り外す際は、ゴミの混入を防ぐために車体のパイプをテープなどで防ぐのをおススメします。
まとめ
ニスモの『スカイラインGT-R』用インタークーラー
インタークーラーをはじめとした冷却装置は、エンジンなどと比べてあまり目立つ存在ではないものの、ターボの本来のパワーを発揮するために欠かせない存在となります。今後、ダウンサイジングターボの搭載車が増えていくと同時に、インタークーラーの重要度も向上していくことでしょう。
燃費効率の向上においても有効であるばかりか、エンジンを壊さないためにも非常に大事なパーツであるため、定期的に状態を確認することが大切なポイントになります。
よくある質問
■インタークーラーって全部の車に付いてるの?
インタークーラーはターボチャージャーなどの過給機によって圧縮された空気の温度を下げる働きの部品です。そのため、過給機がついていない車には装備されないほか、過給機付きの車でも、ターボ容量が小さいものなどではインタークーラーを省略しているものもあります。
■インタークーラーはどこに付いてるの?
車種にもよるものの、基本的にインタークーラーは、空気の流れがしっかり当たる部分に取り付けられる必要があるので、フロントバンパーの開口部直後であったり、ボンネットにエア取り入れ口を設けた車ならエンジン真上などに装着されている場合が多いです。
■インタークーラーの後付けってできる?
過給機付きエンジンの車でインタークーラーが取り付けられていない場合や、すでについているインタークーラーよりも大容量のものに取り替えたい場合などなら、社外品のインタークーラーを活用することで対応ができます。