歴代三菱ミニバンのあゆみ

デリカスペースギア
三菱自動車の歴代ミニバンと言えば、「シャリオ」・「ディオン」・「デリカスペースギア」(現行「デリカD:5」の前身)の3車種が該当することになります。
以下では、それぞれの車種ごとに歩みを振り返ってみることにしましょう。
■シャリオ
ミニバンの先駆け的存在とも言えるクルマで、1983年2月にデビュー。
古代ギリシャの戦闘用馬車Chariotが車名の由来になっており、そこには「古代戦士のように誇り高く、行動力あふれる車」という意味が込められています。
シャリオは、キャプオーバーワゴンのスペース性とセダンの操縦性を兼ね備えたクルマで、広くて使い勝手のいい車内やハイレベルな走行性能により好評を博しました。1991年のフルモデルチェンジでは、車内空間がより広くなるとともにさらなる装備の充実も図られています。
1997年に行われた2度目のフルモデルチェンジでは、GDIエンジンが搭載されるとともに、車体が3ナンバーサイズとなって名称も「シャリオグランディス」に変更されました。
その後、2003年のフルモデルチェンジでは、車名から「シャリオ」が外れて「グランディス」となり、個性的な印象でファンの人気を集めましたが、2009年に国内向けの販売が終わり、2011年には海外向けも含めてすべて生産が終了することとなりました。
■ディオン

三菱 ディオン
2000年1月、三菱が提案する次世代RV「SUW(スポーツ・ユーティリティ・ワゴン)」の第2弾としてデビュー。
5ナンバーサイズの車体に7人乗り3列シートで、シャリオグランディスの3ナンバーサイズ化で空白となった5ナンバーサイズミニバンの座を埋める位置づけとなっています。
最も安いグレードでは160万円弱というロープライス戦略ながらも充実した装備が売りで、使い勝手のいい車であったディオンですが、2006年には販売が終了することとなってしまいました。
■デリカスペースギア

デリカスペースギア
三菱の「デリカ」そのものの歴史は、1968年に発売が開始された商用トラックの「デリカ」までさかのぼることになりますが、ミニバンとしてのデリカはその翌年1969年に発売された「コーチ」からスタートしています。
その後、1994年に「デリカスペースギア」として、スタイルを一新させて登場しました。ちなみに、「スペースギア」という言葉には、「身近なギア(道具)感覚で愛着を持ってほしい」という気持ちがこめられているそうです。
デリカスペースギアでは、それまでの歴代デリカで採用されていたキャプオーバー式(エンジンの上に運転席)に代わりセダンタイプのようなフロントエンジン式を採用。前面衝突への安全性を大きく向上させるとともに、フラットフロア化によるウォークスルーやバラエティに富んだシートアレンジを可能にしました。
また、4WD車にはパジェロと同様のスーパーセレクト4WDが採用され、抜群のオフロード性能を実現しています。このような魅力的な性能により多くのユーザーから支持を集めたデリカスペースギアは、ロングセラー車となり2007年に販売終了となりました。
なお、現在、三菱のミニバンとしては国内で唯一販売されているデリカD:5は、このデリカスペースギアの後継車となります。
以下では、このデリカD:5を中心に紹介していきましょう。
三菱デリカD:5の特徴は?

デリカD:5
デリカスペースギアの後継車として2007年に販売が開始されたデリカD:5。
長らくの間、大きな変更が加えられることはありませんでしたが、デビューからおよそ12年が経った2019年2月に大規模なマイナーチェンジがなされました。
その目玉と言えるのは「ダイナミックシールド」の採用です。
■ダイナミックシールドとは?
ダイナミックシールドとは、近年の三菱車に共通して採用されているフロントフェイスデザインのことで、そのコンセプトは「力強いパフォーマンスとプロテクションの安心感」。
今回のデリカD:5のマイナーチェンジでは、このダイナミックシールドに加えて縦型のマルチLEDヘッドライトを採用し、迫力ある顔付きとなっています。
このようなフロントフェイスデザインの大きな変更に至った背景としては、デリカD:5と比較されやすいトヨタのアルファードとヴェルファイアの好調な売れ行きが影響しているかもしれません。ユーザに対して、アルファード・ヴェルファイアよりも強い印象を与え、注目を集める必要があったと考えられるからです。
また、登場から10年以上が経ち陳腐化しつつある見た目を、フルモデルチェンジ並みに一新したいという思いもあったのでしょう。
■エンジンと安全面でもさらなる進化
続いて、大規模なマイナーチェンジがなされたデリカD:5の、ダイナミックシールド以外の特徴をご紹介します。
まず、エンジン面では2.2リッタークリーンディーゼルターボエンジンと新たに開発された8速スポーツモードATが組み合わされ、もともとの強みであった圧倒的な走破性がさらに強められました。
加えて、最大トルクも20Nmのアップが行われ、走りが「パワフルかつ静かで滑らかな」ものへと進化しています。
また、安全面においても、それまでのデリカD:5では採用されていなかったe-Assist(衝突被害軽減ブレーキ・車線逸脱警報システム・レーダークルーズコントロールシステム・オートマチックハイビーム)が標準装備となりました。
なお、今回のマイナーチェンジは、デリカD:5の新車販売比率の9割超を占めるクリーンディーゼルターボエンジン車のみで、ガソリン車に関しては小規模な変更にとどまっています。
現行のデリカD:5一覧

デリカD:5
ビックマイナーチェンジが行われたデリカD:5には基本性能をほぼ同じとする通常モデルとURBAN GEARの2モデルとガソリン仕様モデルが用意されています。
■デリカD:5

デリカD:5
ダイナミックシールドと縦型LEDヘッドライトの採用でワイルドさが増した顔つきになっているのが通常モデルです。ただし、ワイルドな顔つきとは裏腹にインテリアには木目が取り入れられシックな装いとなっています。
グレードは「P」、「G-PowerPackage」、「G」、「M」の4つがあり、Mにかぎりタイヤが16インチで8人乗りしか選べません。その他のグレードは、18インチタイヤで7人乗りと8人乗りを選ぶことができます。
ワイルドなボディーとシックなインテリアを併せ持っているので、キャンプにスキーとアクティブに遊びたい大人な男性向けの1台といったところでしょう。特にウィンタースポーツを楽しみたい方にはPとG-PowerPackageがオススメです。
これらのグレードには運転席と助手席にシートヒーターが標準装備されているのでウィンタースポーツが趣味の方にはありがたい仕様になっています。
また、最上級グレードのPにはマルチアラウンドモニターも標準装備です。

デリカD:5 内装

デリカD:5 内装
■デリカD:5 URBAN GEAR

デリカD:5 URBAN GEAR
「通常モデルではワイルド過ぎるかなぁ〜」と思う方は、URBAN GEARを選んでみてはいかがでしょう?
いわゆるカスタムモデルに当たるのですが、ワイルドさは抑えられ「URBAN」の名に相応しい都会的で洗練された姿となっています。これはインテリアにおいても同じで木目が使われている通常モデルよりも若年層向けの仕上がりと言えます。
そして、グレードは「P Edition」、「G-PowerPackage」、「G」が用意され、P Editionのみ7人乗りとなっています。他は通常モデルと同様、7人乗りと8人乗りが選べます。
こちらもP Editionにはマルチアラウンドモニターが付いてきます。
また、P EditionとG-PowerPackageにはエレクトリックテールゲートが備え付けられ、荷物の出し入れがお手軽です。これは、通常モデルのPとG-PowerPackageにも付いてます。
見た目の違いを出すことで通常モデルよりも地上高は低くなっていますが、デリカの走破性が損なわれることはありません。

デリカD:5 URBAN GEAR
■デリカD:5 ガソリン仕様
デリカユーザーの需要に答えて主力となっている通常モデルとURBAN GEARは、クリーンディーゼル搭載車で、これ以外の理由もあるにせよ前モデルよりも高額になっています。そのため、なかなか手を出せない人もいるはずです。
三菱は、そのような人たちの存在も見込んでか、ガソリン仕様車も用意しています。
ただ、主力ではないので見た目は前モデルのままといった感じになり、スペック・装備なども劣る部分があります。それでも手に届く価格でデリカの力強い走りを体感できる作りになっています。
まとめ

デリカD:5
アウトドアにも街乗りにもといろんなシーンに馴染むのがデリカD:5。購入を考えるならG-PowerPackageとGを基準にするのがベスト。これらのグレードなら一通り必要な装備が付いているので失敗することはないでしょう。
また、三菱はデリカの兄弟分と呼べるような車種を日本発売は未定ですが、新興国向けに販売しています。
その名も「エクスパンダー」。
2017年に販売が開始されたSUVミニバンで人気を博しています。2019年にはそのクロスオーバー版「エクスパンダークロス」が登場し、販売されています。
売れることしか感じさせない仕上がりになっているので日本での販売が期待されます。